クリエイティブ業界や転職業界では、「ポートフォリオ」という言葉がよく使われます。
正しく「ポートフォリオ」を理解していない場合、「ポートフォリオには自分の制作したものを載せておけば良い」「制作した作品はすべてポートフォリオに記載しておけば間違いない」といった誤解をしている人も少なくありません。
しかしながら、本来のポートフォリオの意味や、ポートフォリオがどのように利用されるものであるのかを理解すれば、より効率的・効果的にポートフォリオを活用することができます。
この記事では、ポートフォリオの本来の意味と、利用シーンにおけるポートフォリオの微妙な違い、そしてポートフォリオをいかに効果的に活用するのかについても解説します。
ポートフォリオとは
「ポートフォリオ」という言葉は、転職の場面や、クリエイティブ制作の場面で、「ポートフォリオを作る」「ポートフォリオを提出する必要がある」など、業務用語として定着しています。
「ポートフォリオ」という言葉は、イタリア語の「ポルタフォリオ(Portafoglio)」という言葉を語源としています。
「ポートフォリオ」とは、「書類ケース」や「紙挟み」などといった、「複数の書類をまとめて持ち歩くケース」の意味を持つ言葉です。
これを解説した意味は、「ポートフォリオ」は、「持っている書類すべてを入れるためのものではない」ということです。
紙挟み・書類ケースというのは、現代でもそうですが、必要なタイミングで必要な書類だけを入れて持ち歩くものです。
つまり、場面や状況に応じて、内容を差し替えながら持ち歩くものという意味を持っているのです。
現代で使われる「ポートフォリオ」という言葉にも、このニュアンスは残っています。
ポートフォリオの正しい活用方法
実際に「ポートフォリオ」を転職やクリエイティブ制作などの場面で活用したことがある方は、ポートフォリオのニュアンスについては理解しているでしょう。
これまでに制作した成果物、作品などをまとめたものを指します。
現代でのポートフォリオは、必ずしも紙という媒体ではなく、たとえばWebページであったり、データの形式でまとめられている場合も多くありますが、内容としては同じです。
「すべての自分の作品や成果物を収めておき、ポートフォリオの提示を求められたときにそのすべてを見せる」というのは、ポートフォリオの提示とは、本来異なる意味です。
相手が欲しがっている、見たがっている実績についてをシンプルに数点抜き出して提示をすることが、できるようにまとめたものを「ポートフォリオ」といいます。
例えば、写真撮影や映像制作を行っている会社へポートフォリオを提出する際に、相手先の会社が「人物・動物」などを撮影・制作している会社なのか、「風景・建造物」などを対象としている会社なのかによって、必要とされているポートフォリオが異なります。
このような場合であれば、ポートフォリオの中に対象となっていない成果物を含めることは望ましくないといえます。
自らの作品群・成果物群の中から、今回提示する相手に合わせて作品を抽出してポートフォリオを作り、それを提出するというのが、ポートフォリオの正しい活用方法なのです。
ポートフォリオが必要な理由
「ポートフォリオを提出してください」という指示を受けた際に、「これまでの作品のうちどれを提出したらよいのだろうか?」と悩むケースもあるかもしれません。
ポートフォリオは、作品や成果物の実績を相手に見てもらうためのものですが、考えようによっては、ポートフォリオそれ自体が「作品」の性質を持つ場合もあります。
例として、転職や、案件確保のための営業におけるポートフォリオの提示を考えてみましょう。
このようなケースでは、相手には「この人、または企業にこの案件を依頼して大丈夫だろうか?」「自分たちが求めているスキルを保有しているのだろうか?」という懸念があります。
それに応えるような、作品群を提示することが、転職や案件確保といった、目的達成のためのポートフォリオの活用シーンとなります。
ポートフォリオには、単に出来上がった作品だけを提示するのではなく、作品の背景や意図、目的などの情報を記載しておくと、なぜ作品がその形で納品されたのかという情報をも同時に与えることができます。
加えて、修正やリテイクが発生した案件が過去にあれば、リテイク前と後をあわせて記載しておくことも有効です。
このような情報は、これから契約や入職した際に「どの程度発注側の意向に応えて納品物に修正を加えられるのか、修正能力はどの程度あるのか」といった情報も相手に伝えることができます。
他にも、過去の納品物と現在に近い納品物を対比するなどの提示の方法もあります。
現在に至るまでにどのようなスキルアップや成長を遂げてきたのかという情報を与え、さらに今後どのように成長していくのかという期待感を持たせることが、可能になります。
ポートフォリオ作成時の注意点
ポートフォリオを作成するときに、注意するべき点は「ポートフォリオは単なる作品集ではない」「すべての成果物をただ羅列するのではなく、提出先に合わせて取捨選択する」「付帯情報を入れて相手に判断材料を与える」といった点です。
他にも、ポートフォリオを作成する際に、注意すべき点があります。
まずは、「最後まで見てもらえるような構成で作成する」ということが重要です。
ポートフォリオも、先に解説したような成果物と付帯情報などを記載していけば、それなりの長さ・情報量になります。
しかしながら、同じような成果物が並び、付帯情報ばかりが多いポートフォリオですと、相手も「最後まで読まなくてもある程度わかった」と、せっかく作成したポートフォリオが最後まで読まれない可能性が出てきます。
このような状況を避けるためには、ポートフォリオの注目してもらいたいポイントに「インパクト」を持たせるなどの方法を取る必要があります。
過度な装飾などは、もちろんご法度ですが、例えばインパクトの強い作品・成果物の中で、一番提出先に合致しているような作品を冒頭に持ってきたり、付帯情報の多い作品は見せ方を工夫したりして、最後まで読んでもらえるようなポートフォリオを意識します。
こうすることで、自分の強みをしっかりと提出先に伝えることができます。
また、「自分のポジションを明確にする」ことも重要です。
チームでの制作など複数人が関わったプロジェクトの成果物をポートフォリオに掲載する場合には、自分はチーム内で何を担当していたのか、その担当していた内容を、今後どのように活かせるのかなどの情報が、相手に伝わりやすい記載をすることが重要です。
こうすることで’、よりよいポートフォリオとなります。
まとめ
ポートフォリオは、クリエイティブ職にとっては、「会社案内」であり、「実績」であり、「履歴書」でもあります。
しかしながら、ただ自分の成果を羅列して記載したものでは、せっかくの経験が相手に正確に伝わらないケースも考えられます。
相手にアピールするべき成果物や実績は何か、自分は提出先に対して何を提供できるのかといった情報を、明確に相手に伝えることが、ポートフォリオの役割です。
このような意味で、冒頭に解説したとおり、「ポートフォリオ」は「単なる作品集」とはまったく異なる概念なのです。