とお悩みではありませんか?
そんな時に活用できるのが「アセスメント」です。
「聞いたことはあるけど、詳しくは知らない」という方は多いのではないでしょうか。
「アセスメント」は、業界によって使い方や意味が変わってきます。
企業においては、「アセスメント」を導入することでエビデンスに基づいた評価ができるため、経営目標の達成に効果的です。
そのため、客観的な人事評価や、効果的な人材配置を行いたいというのであれば「アセスメント」や「アセスメントツール」について、おさえておくべきでしょう。
そこで今回は、
- アセスメントの概要
- アセスメントの種類
- アセスメントを導入する上でのポイント
- アセスメントを活用するシーン
- アセスメントを行う上での注意点
についてご紹介します。
アセスメントとは
アセスメント(assessment)とは、日本では主に「客観的に評価・査定」するという意味で使用されています。
最近は、企業を取り巻くさまざまな環境変化の中で、人事制度の要となる昇進・昇格制度の運用も多様化しているのが現状です。
そのため、社員の評価に関して「客観的な評価(アセスメント)」を行う企業が増えてきています。
人事評価において、主観的な評価を避けるためにも、アセスメントが重要なのです。
具体的には、職場でトラブルが起こりやすい無意識の思い込みを意味する、アンコンシャス・バイアスというものが挙げられます。
アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込み(バイアス)、無意識の偏見を指す言葉です。
例えば「それは常識だよ」「普通〇〇だから」というように、「自分の常識=社会の常識」という風に当てはめてしまう大変危険な思い込みの一種でした。
そして、これが会社の人事評価や採用にまで影響してしまうと、人材採用や社員の昇進・昇格に不公平が生じてしまいます。
このような不公平が起きないためにも、面接希望者や社員の評価に関して「客観的な評価(アセスメント)」を取り入れる必要があるのです。
アンコンシャス・バイアスについてより詳しく知りたい方は、こちらから
突然ですが、皆さんの周りには「思い込み」が激しい人っていませんか? 例えば、 ・女性は30歳までに結婚するべきだ。 ・男なら結婚してマイホームを買うのが当然だ。 ・今までこのやり方でやってきたんだから貴方も同じやり[…]
アセスメントの種類
ここまで、企業で行う組織のアセスメントやそのツールを紹介してきましたが、本来アセスメントは、ある対象物を「客観的に評価・査定」するという特性があるため、汎用性が高く様々なシーンで活用されています。
アセスメントの種類には、
- 看護・介護のアセスメント
- 環境アセスメント
- リスクアセスメント
- 政策アセスメント
- テクノロジーアセスメント
- 人材アセスメント
- 組織アセスメント
の7つが挙げられます。
【1】看護・介護のアセスメント
看護・介護の世界でもアセスメント(客観的な評価)は活用されています。
患者の情報には、体温や血圧などの「データ情報」と、患者が実際に感じている痛みや不安などの「主観的な事実」があります。
看護の現場では、「データ情報」「主観的な事実」という両方の情報を基に、患者の状態に合ったケアプランを作成します。
介護の現場でも同様に、介護を行う対象者やその家族と面談を行い、まずは本人の状態や日常生活の状況をヒアリングし、それがケアプラン作成の判断材料です。
【2】環境アセスメント
「環境アセスメント」とは、大規模な事業開発等が環境にどのような影響を与えるのかを予測し、その対策を事前に検討しておくことを指します。
例えば、リゾート開発やホテル事業、大規模な土地開発などの事業において自然環境に大きな影響を及ぼしていきます。
加えて、自動車やバス、トラックの製造では、排出ガスが大きく環境問題にも影響を与えます。
これらが、環境にどれほどのダメージを与えるのかを事前に予測し、予防策を考えておくのが環境アセスメントです。
環境アセスメントに似た言葉に「ライフサイクルアセスメント」というものがあります。
ライフサイクルアセスメントとは、LCA(Life Cycle Assessment)とも呼ばれており、サービス・商品の原料の調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体の環境への負荷を評価するためのアセスメントです。
ライフアセスメントを行うことによって、全体的な環境への負荷を評価し、さらに環境に配慮した商品やサービスを検討、作り出すことが可能になります。
ライフアセスメントについて、より詳しく知りたい方はこちらから
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【3】リスクアセスメント
リスクアセスメントは、製造業や建設業など、工業の現場でよく使われます。
「リスクアセスメント」とは、事故や災害などのリスクを事前に洗い出し評価することを指す言葉です。
例えば、建設現場では「落下事故」「火災」「一酸化炭素中毒」といった危険性が考えられるでしょう。
そういった労働災害に対する低減措置や防止策をリスクアセスメントを用いて、講じておくことで、リスク回避に繋げるといったことができるようになります。
【4】政策アセスメント
政策アセスメントとは、新規に導入(拡充)しようとする施策の企画立案等について、国土交通省の設定目標に照らして評価するものです。
新たに導入(拡充)しようとしている施策の必要性や効率性、有効性といった観点から評価を行います。
対象は「新たに導入しようとする施策」や「既存の施策等のうち、その改正、廃止、緩和、延長等を図ろうとするもの」などが含まれます。
詳しくは、国土交通省のページを参照ください。
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。…
【5】テクノロジーアセスメント
1970年代に衰退したものの、近年再び注目されているものに、科学技術が自然環境や社会に与える影響を事前に予測・評価する「テクノロジーアセスメント」があります。
近年注目を取り戻しつつある背景には、
- ヨーロッパ欧州議会でのテクノロジーアセスメントの設立
- 遺伝子組み換え技術やナノテクノロジーなどの発展
という2つの理由が挙げられます。
この2つの理由から、安全性や倫理面での懸念を持つテクノロジーが発達し、改めて技術面での事前予測・評価が必要となってきたことが考えられます。
【6】人材アセスメント
人材アセスメントとは、企業内とは別に、企業の外にある機関によって、人材一人一人の資質から行動特性などの、個人が持つ能力やスキルを正しく把握・評価を行うための評価ツールのことをいいます。
人材アセスメントを行うときには、まず最初に目的を決定します。
「管理職に置く人材を選定したい」「個人の能力にあった配属を行いたい」など、様々な目的が挙げられるでしょう。
外部の機関で評価の訓練を受けた人材に評価を行ってもらうことで、客観的な自社の社員の評価を得ることが可能になるのです。
客観的な評価を得ることが出来るということは、社内外の人からの評価に繋げることが出来るため、有効な方法です。
【7】組織アセスメント
組織アシスタントとは、企業や一部署といった特定の組織の現状を把握しながら、より、組織を改善・強化していくために用いられるツールのことを指します。
組織アセスメントの目的は、主に組織から出た問題点から改善策を考え、改善していくことで、組織の業績を向上・安定させることです。
具体的には、ある企業に所属する社員や従業員を、客観的な基準や数値から評価を行っていきます。
客観的な基準や数値を用いて評価を行うことで、どのような能力やスキルを持つ社員・従業員が多いのかを明らかにすることが可能です。
加えて、組織アセスメントは人材アセスメントと同時に行うことで、なお一層効果を出すことが出来ます。
まず、組織アセスメントを用いて、各部署にどのような能力やスキルを持つ社員・従業員がいるのかを明らかにしていきます。
その後、人材アセスメントを用いて得ることが出来た客観的な評価をもとに、適切な部署やポジションに社員・従業員を配属させるという方法です。
アセスメント導入のポイント
アセスメントを導入する際のポイントは、 「測定したい基準」に 応じて適切な手法で評価・測定を 行うこと、目的に応じて複数の手法を活用することが重要です。
最近では、以下のアセスメントツールが主流となっています。
- 多面観察評価(360度評価)
- 適性検査
- アセスメント研修
これらのツールは、業種や業態、企業規模、目的によっても使い分ける必要があるため、自社にあったツールを選ぶ必要があります。
【1】多面観察評価(360度評価)
リクルートマネジメントソリューションズがリリースしている、360度評価システム「MOA(Multi-Observer-Assessment)」をご存じでしょうか。
360度評価システム「MOA(Multi-Observer-Assessment)」を用いることで、人材を客観的に把握することができます。
加えて、多角的な評価による360度評価を行うことで、複数の評価社から評価を得ることが可能です。
複数の評価社からの評価は、客観性を高めることができるだけでなく、多種多様な視点から見ることができる貴重なものです。
そのため、多面的で複民的な人材の把握を行うことができるようになります。
360度評価の結果は「得点(数値)」で表示されるため、自己評価と他者評価の一致度やギャップに基づいて効果的な能力開発につなげることが可能です。
【2】適性検査
「適性検査」では、採用面接希望者(評価対象者)の能力・性格などをテストにより把握し、雇用するかどうかの一つの判断基準として採用しています。
ひと昔前の採用活動は、資格や学歴などを判断基準として、現在の能力やスキル、経歴を見ることが主流でした。
しかしながら、最近では雇用する側と働き手の「ミスマッチ」を減らすために、採用の際は「職種の適正」を能力だけで見ることは少なくなっています。
「自ら主体的に業務を遂行できるか」「ビジョンはあるか?」「仕事にやりがいを感じられるか?」など、性格や考え方、働く姿勢を見る必要があると考えられるようになりました。
これらの、性格・考え方・働く姿勢を見るために導入されたのが「適性検査」です。
【3】アセスメント研修
マネージャー職やリーダー職のための「アセスメント研修」と呼ばれる講座があります。
この講座を受けることで、客観的なアセスメント評価を得ることができます。
研修中、一貫して「理想的なリーダー像」に照らして自らの行動を省みることで、自らの行動や能力の特徴を 把握し、未来のキャリアプランの構築に役立てられます。
続いて、アセスメントの具体的な活用方法について説明していきます。
アセスメントの活用シーン
アセスメントは、
- 従業員の昇進・昇格を検討する
- 部署やプロジェクトのリーダーを決める
などの場面で、組織内で活用することができます。
活用例①|従業員の昇進・昇格を検討する
従業員の評価において活用することができます。
評価基準は、現在、目に見えてはっきりしている能力や経験だけではありません。
潜在的な能力や性格が次のポジションで求められる要件や能力・資質を満たすものであるか、あるいはその潜在的な能力が今後発揮できる可能性が高いかという判断に活用できます。
自社内の評価だけでなく、第三の目線で評価を行うことで、より適した人材配置を行うことができるようになります。
加えて、第三の目線での評価を行うということは、自社内だけで行う評価よりも信憑性の高い評価になり、取引先の方々からもより多くの信頼を得ることに繋がっていくでしょう。
活用例②|部署やプロジェクトのリーダーを決める
部署やプロジェクトで次のリーダーを決める必要がある場合、客観的な診断結果に基づき潜在的な人材発掘が可能です。
従来は、その部門のスキルがないというだけで除外されていた人材を、アセスメントを行うことで抜擢することができるようになります。
社員・従業員のスキルや能力にあった、配置を行うことができるため、すれ違いが起こるリスクを最小限に減らしつつ、誰もが納得する人材配置を行うことができるのです。
このように、アセスメントは、従業員の人事選抜に加え、配置転換やその後の能力開発に活用できます。
アセスメントを行う上での注意点
アセスメントは、採用業務や人事異動などで、すれ違いを起こさないことを目的としていると先述しましたが、注意点ももちろんあります。
アセスメントを行う上での注意点として、
- 評価の対象は「適性」であるということを明確にする
- アセスメントを行った後にはフィードバックをきちんと行う
- 継続的に学習と効果がどれだけ出ているのかを図る
の3点が挙げられます。
評価の対象は「適性」であることを明確にする
アセスメントを行うことで評価や分析することが出来るのは、あくまでも対象者一人一人の適性を客観的に見るものです。
アセスメントは、能力ではなく適性を評価・分析することを目的としています。
そのため、「評価や分析対象が能力ではないこと」を評価する側がしっかりと理解した上で、それを対象者に知らせていく必要性があります。
もし、「アセスメントは能力やスキルを評価するものだ」と考えられてしまうと、評価される側は必要以上に緊張をしてしまうリスクが高まります。
緊張してしまうと、自身のスキルを発揮することが出来なくなってしまう可能性もあるのです。
加えて、必要以上に緊張してしまうと、小さなミスを起こしやすくなってしまい、企業側にもメリットはありません。
そのため、対象者それぞれが持つ人間性・総合的なスキルを全て見ているわけではないということを、評価される側だけでなく評価する側もしっかり知っておくことが大切です。
アセスメントでの評価項目は、企業側がその都度求める適性に応じて定められているため、一時的で限定的なものであることを忘れてはいけません。
アセスメントを行った後には、フィードバックをきちんと行う
アセスメントを行うために、対象者はそれぞれ多忙な業務時間を使って協力してくれています。
そのため、アセスメントの結果は対象者にしっかりとフィードバックを行っていきましょう。
このフィードバックは、アセスメントの結果を伝達することを目的としているだけではありません。
その結果を聞いた対象者が、自分自身の課題・改善点を明確にする手段にするという目的も含まれています。
課題や改善点に気がつくと、新たな目標設定をすることができ、次に活かすことに繋げることが可能になります。
フィードバックを行うときには、可能な限り上司が対象者一人一人と個人面談を行い、十分な時間を取り、結果を伝えることが理想的な形です。
加えて、フィードバックを行う際には「良い」「悪い」と言う言い方はしないように注意しましょう。
「良い点」は、対象者のプラスになることもありますが、「悪い点」は、対象者のプラスになることは、ほとんどありません。
「良し悪し」で評価結果を伝えてしまうと、客観的な評価とは言えなくなってしまうと同時に、受け取る側に異なる意味合いで伝わってしまうケースもあります。
「アセスメントを受け取っても、自分の適性について良く分からなかった」ということが起きてしまうことがないように、伝え方には注意しましょう。
継続的に学習と効果がどれだけ出ているのかを図る
一度行っただけでは、期待した通りのアセスメントの効果を得ることは、不可能です。
結果を予測してから正式な結果を見ることによって、今まで気が付かなかった組織の課題を知ることができます。
アセスメントの結果が出る前に、自社で結果を予測し、正式に出た結果と予測した結果を照らし合わせ、違っていた箇所を検証し、課題や改善点を明確にしていきましょう。
加えて、アセスメントを何度も行うことで、施策の効果を知ることができ、企業の業績の向上や社員・従業員それぞれの成長に繋げていくことが可能になります。
アセスメントとは、企業や従業員、社員それぞれが成長・改善するための手段であり、目的そのものではありません。
そのため、継続的に施策や測定を意識していくことが重要になります。
その他のアセスメントの活用例については「人材を可視化するには?タレントマネジメントシステムとスキルマップを紹介」という記事をご参照ください。
最近、組織のパフォーマンスを向上させたいと考えている企業が増えてきました。従業員の高齢化やテレワークの普及などによる社会…
まとめ
企業が経営目標を達成するためには、組織内外の人材の能力・スキル・ポテンシャルを的確にかつ戦略的に評価するための指標が必要です。
昨今、「働き方改革」や「新型コロナウイルス」の影響なども相まって多様な働き方、多様なライフスタイルを認める動きが加速しています。
そんな多様化する現代において、偏りのある評価基準のままでは時代に取り残されてしまいます。
企業が成長する上でもアセスメント(客観的な評価)をいち早く取り入れ、自社に適した手法でアセスメントを行い、エビデンスに基づく効果的な人員配置や人材育成を実現していくことが急務となっています。