現代では、消費者自身がその企業のことを知ろうとすれば、様々な方法でその企業の情報へアクセスすることができます。
情報というのは、その企業の決算公告や企業概要といった一般的な情報にとどまりません。
企業理念や業界全体、あるいは社会に対するその企業の考え方、向き合い方といった情報を企業自身が発信している場合すらあります。
こうしたときに活用されるのが「オウンドメディア」です。
この記事では、オウンドメディアとは何か、そしてオウンドメディアの持つ価値やオウンドメディアの活用事例について解説します。
オウンドメディアとは何か
オウンドメディアとは、「企業が自社で発行する、消費者向けの発信媒体」のことを指します。
企業自身が、情報発信をする手段が限られていた時代においては、一般消費者が企業の主張や考え方を見るには、主にマスメディアの力に頼るしかありませんでした。
しかしながら、後に企業自身が自社発行の広報誌やパンフレットをはじめ、インターネット上でのウェブサイト・ブログや、SNSなどの情報発信手段、そしてメーリングリスト・メルマガなど、ダイレクトに消費者に対して情報発信ができるようになりました。
こうした、会社自身が運営するチャネルで情報を伝達するメディアのことを、「オウンドメディア」と呼ぶようになったのです。
実際には、オウンドメディアは企業のマーケティングのために使われるケースが多いのですが、このようなマーケティングに利用されるメディアには大きく分けて3種類があります。
一つ目は、この項目で解説した「オウンドメディア」二つ目は、顧客・ジャーナリストなどによって生成された企業・ブランドに関連するメディアで「アーンドメディア」三つ目は、企業が費用を支払って広告を掲載する「ペイドメディア」です。
この三つのメディアを活用してマーケティング・コミュニケーションをはかるということを「トリプルメディア・フレームワーク」と呼びます。
なぜオウンドメディアが重視されるのか
先に解説した「トリプルメディア・フレームワーク」において、もっとも容易に活用できるのが「ペイドメディア」でした。
インターネットが、一般消費者の間でも限られた人々しか利用していなかった時代から、すでにディスプレイ・バナー広告や、検索広告、電子メール広告などは利用されてきました。
しかしながら、こうしたペイドメディアによるマーケティングには、当然広告費用が必要となります。
近年ではFacebook・TwitterなどのSNSに対しての広告掲載や、自動でWeb広告を配信する広告システムなどが開発されましたが、企業が費用を払って広告を掲載するという枠組みに変化はありません。
一方で、オウンドメディア・アーンドメディアは、企業からの費用の支払いや依頼なく作成されるものであることから、ペイドメディアのように費用は必要ありません。
しかしながら、アーンドメディアについては、いわば業界に造詣の深い個人のブログや、ポータルサイトなどでの掲載が基本となります。
こうしたものについては、他のメディア・チャネルでの話題性が高まった際に掲載される傾向にあるため、企業側からそれらのアーンドメディアに情報の掲載を働きかけることは、基本的にできません。
そのため、企業が大きく告知をしたいタイミングで、都合よく利用することができるわけではないのです。
上記二つのメディアと比較し、オウンドメディアはその性質上、費用対効果・タイミングの面で、優れています。
自社が、配信したいタイミングでサイトやブログ、SNSへの投稿を行うことができ、その掲載には広告費用などの余分な支出がないためです。
オウンドメディアの具体例
サイボウズ式
オウンドメディアを活用している例は、現代では枚挙に暇がありません。
しかしながら、その中でもわかりやすい事例としては、サイボウズ株式会社が運営するオウンドメディアである「サイボウズ式」が挙げられます。
グループウェア・チームウェアやコミュニケーションツールを統合した企業向け製品・サービスを展開するサイボウズが運営するサイボウズ式では、組織運営に関する記事や働き方、ワークライフバランス、ビジネスマインドなどのジャンルの記事を配信していきます。
記事を配信していくことで、自社のブランド化とマーケティングを実現しています。
このメディアの特徴は、最終的に自社の製品の機能を紹介するという記事ではなく、製品がどのような価値を生み出すか、多様な問題点に対応するためのツールとして、自社の製品がどのような体験を与えるかといったことに焦点を当てているということにあります。
サイボウズ式には、製品や社名を広く知らしめるという目的以外に、自社の企業理念への共感を得たいというコンセプトがあり、そのコンセプトに則ったメディアの運営が行われているのです。
Money Forward Bizpedia
法人のバックオフィス業務に関する、クラウドシステムを提供している「株式会社マネーフォワード」が運営する「Money Forward Bizpedia」も、オウンドメディアの好例であるといえます。
「Money Forward Bizpedia」は、バックオフィス業務で欠かすことができない専門家の知見を、税理士や公認会計士といった専門家が監修することで担保させています。
加えて、「Money Forward Bizpedia」に掲載されている記事としては、同社が提供している製品・サービスに関わるバックオフィス業務のうち、税務・法律・会計・経理・人事といった幅広いジャンルの知識を受け取ることができる記事が掲載されています。
自社の製品との関わりが強い分野での記事を掲載すること、そしてその記事に専門家の監修を加えることは、オウンドメディアとしての専門性や有益性を担保するうえで有効な方法です。
オウンドメディアを掲載する際の注意点
オウンドメディアには、いくつかの実現手段があり、上記に挙げた事例のように、ウェブサイトでの運営がケースとしては多いといえます。
もちろん、SNSを活用してオウンドメディアと位置づけたり、メールマガジンやメーリングリストなどを運営するのもよいでしょう。
しかしながら、オウンドメディアを運営しようとしたときに「とにかく運営すれば良い」という考え方では、オウンドメディアの効果を発揮することはできません。
オウンドメディアは、確かに企業が運営する、自社の製品やサービス、業界の情報や自社の考え・理念を配信する場ではありますが、それが「読み物」として優れたものでなければ、読者は引き付けられません。
そのため、オウンドメディア運営は片手間に行うのではなく、専任の担当を設けるなどして、企業が配信する情報としてハイクオリティな情報を配信することを心がけなければなりません。
これが、オウンドメディアを運営しようとする際の注意点であるといえます。
まとめ
現代では、企業自らが、企業の情報を一般消費者に届けるにあたって、ウェブサイトやブログ、SNSなどで、情報発信をする手段が確保されているため、必ずしもマスメディアが介在する必要はなくなりました。
こうした手段のひとつである「オウンドメディア」は、現代では広く企業が利用するべき、メリットのあるマーケティングツールとなる可能性が高いものです。
SNSやブログを「個人が趣味の範囲でやるもの」と位置づけるのは、いささか時代遅れの認識と言わざるを得ません。
自社での情報発信のチャネルをより大きく、様々な層の消費者に届ける方法を検討している企業においては、オウンドメディアの活用を検討してみるのもよい選択肢でしょう。