みなさん、「BPR」という言葉をご存じですか?
BPRとは業務の進め方を再設計することを言います。
BPRを行うことで業務改善や、顧客満足度と従業員の満足度の向上などさまざまなメリットが見込まれます。
しかし、BPRを行う際には何点か注意するべきポイントもあるのです。
今回は「BPR」とは何か?ということについて、現在これが注目されている理由と共にわかりやすくご説明します。
BPRとは何か?
「BPR」とは、「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」を略した言葉です。
「ビジネス・プロセス」とは、「業務(ビジネス)」の「進め方(プロセス)」、「リエンジニアリング」とは「再設計」することを指します。
具体的には、今の業務の進め方を振り返り、作業を進める順番や、作業の担い手などを含めて業務のあり方全体を見直します。
そして、そこから得られる利益の最大化をめざそう、という考え方です。
長年同じ手順で業務を進めていると、それを続けているうちに、その時々に応じた部分的な見直しや、その時点で必要な手順の追加等が生じます。
全体として見るとその手順がスマートな形ではなく、所々いびつな形になっていることが多いものです。
また業務を取り巻く環境の変化によって、今後の業務のあり方を考えた場合にそれを抜本的に見直す必要に迫られる、ということも少なくないのではないでしょうか。
BPRというのは、そういった場合に課題の解決のための答えを教えてくれる考え方であり、活動なのです。
BPRと業務改善との違い
一方で「業務改善」という言葉があります。
業務改善とは、言ってみれば業務の進め方の中で良くないところを見直し、より良い方法に改めることを指します。
つまり、BPRと業務改善の違いは、基本的な業務の進め方は従来通りというところにあります。
業務改善は、従来通りの業務の進め方のうち、見直しが必要な部分について改善のために手を加えるという活動を言うのです。
それに対してBPRというのは、先ほど述べた通り、業務の進め方を根本から見直します。
そして、製品やサービスの提供方法やそのための担い手、およびその担い手となる社員等の人事評価などを含めた、すべてのプロセス(進め方)を作り直す活動を言います。
BPRが必要な理由次に、なぜ今の時代にBPRが必要なのか、ということについて説明していきましょう。
そもそもBPRという言葉がはじめて使われるようになったのは、1990年代初頭のアメリカにおいてです。
当時発表された著書「リエンジニアリング革命」で世の中に広く知られるようになりました。
当時の日本においても、バブル崩壊後の経営立て直しのための手段として注目されました。
BPRは、いわゆる「リストラ」の手段として見られる傾向にありました。
当時はそのメリットよりもデメリットのほうが強調された結果、ブームは一時的なものに終わってしまいました。
ところが近年において、俄然注目を浴びるようになったのです。
その理由となるものは以下の通りです。
- 国内生産年齢人口の減少により、各業界で将来の人手不足が明らかになってきたこと
- 働き方改革などの世論の盛り上がりにより、既存の業務プロセスの維持が難しくなってきていること
- 近年のコロナ禍を背景として、ワーキングスタイルの大変革の波が押し寄せていること
以上のような理由により、企業でも自治体でも、既存の業務の進め方を見直さざるをえない状況になっているのです。
BPRのメリット・デメリット
それではBPRのメリットやデメリットは具体的にどのような内容なのか、ということについて見ていきましょう。
BPRのメリット
BPRの推進により期待できるメリットは以下の通りです。
①業務フローの全体像の把握により、業務全体の最適化が図れる
BPRの実施により、現状の業務フロー(流れ)の全体像が「見える化」されます。
見える化されると、これまで気が付かなかった作業の重複や、作業のムダ、あるいは作業の非効率な部分が明らかになってきます。
このようにして明らかになった課題となる部分をあるべき進め方に見直すことによって、業務の進め方が最適化されていきます。
②業務の効率化と意思決定のスピードアップ
全社的な業務の最適化が進むと、それに伴って業務の効率化が進んでいきます。
最適化によってムダな業務などが削減されていますので、時間やコストも削減され、業務全体のスリム化とともに、業務に必要な意思決定もスピードアップすることができます。
③顧客満足度や従業員満足度の向上
業務の最適化や効率化によって業務の進め方がスピーディーになれば、業務の生産性が高まります。
さらに、それによって顧客への対応力や製品・サービスの提供力も高まる結果、顧客満足度の向上につながるのです。。
また、業務の生産性が高まることの成果を、報酬や休暇、労働時間の削減などの形で従業員に還元することにより、従業員の満足度向上も期待できるでしょう。。
BPRを進める上でこのようなメリットを従業員に説明することにより、BPRを進めやすくなるということです。。
BPRのデメリット
BPRには上記のようなメリットがある一方、デメリットには以下のものが考えられます。
①労力や時間、コストがかかる
BPRは全社レベルでの業務の全面的な見直しを行うということですので、多大な労力と時間がかかります。
見直しの結果として、システムの更改や修正などにもコストがかかってきます。
かといって途中で止めてしまうと、何の結果も得られません。
それどころか、却って業務の混乱を招いたりしてしまうことになります。
つまり、BPRを行うにあたって、やると決めた以上は最後までやり遂げる覚悟が必要です。
②社員との摩擦や抵抗
BPRでは業務の全面的な見直しを行うため、現場の従業員にとっても大きな負担となる可能性があります。
あまりにも大きな見直しによって、従業員の抵抗も大きくなる恐れがあります。
自分達のこれまでやってきた作業の進め方が変わることになるので、当然のことではありますが、こういった抵抗とも戦っていくことになります。
こういった抵抗や摩擦をできる限り小さくしていくには、BPRの意義を前もって従業員に説明する必要があります。
従業員にとってもメリットがあることを理解してもらった上で進めるということが重要なのです。
BPRの進め方
BPRの進め方の大枠としては以下の通りです。
業種によって違いのある部分はありますが、今回は基本的な部分としてご説明します。
①基本検討
- BPRの目的・目標を設定する
- BPRの対象とする業務範囲を設定する
②分析
- 業務内容や業務フロー、組織運営の分析を行う
③設計
- BPRの方針の策定・実施方法の検討
- 新ビジネスプロセスの設計(業務フローや業務上のルール、業務運営組織など)
④変更の実施
- システムの更改・修正
- 新業務への移行
⑤モニタリング・評価
- 業務のモニタリング(方針通りに運営できているか、などの確認)
- 効果の測定や達成度の評価
まとめ
いかがでしたでしょうか。
BPRとは何か、ということについてその必要理由やメリット・デメリットを含めて解説してきました。
BPRの実施によって、企業は生産性の向上やそれによる顧客満足度や従業員満足度の向上を図ることができます。
しかし一方で、業務全体の抜本的な見直しを行うことから、相当の覚悟でやり切らないと目的は達成できない、というデメリットもあることがおわかりいただけたことと思います。
最近「DX(Digital Transformation)」という言葉も盛んに叫ばれています。
DXも業務の抜本的な見直しを伴うものですが、こちらはITを駆使して業務のあり方そのものを変革しようとするものですので、BPRとは少し内容は異なります。
とは言っても業務の見直しという点においては同じですので、業務の抜本的な見直しということは、現代の企業にとって避けては通れない道ではないかと思います。