ビジネスとは、すなわち仕事をして、お金を動かすことです。
お金が、巡ることによって、新たな製品やサービスが生まれたり、製品やサービスの情報が広く世の中に広まったりもします。
お金を動かすことには、購入、つまり製品や原料といったものの仕入れだけではなく、投下資本、つまり投資もあります。
投資をするということは当然、その投資に見合うだけの効果が得られることを期待するために投資するわけですが、その中で重要な考え方が、「ROI」という言葉です。
この記事では、ROIとはどのようなものであるのか、ROIという概念をどのようにビジネスの現場で活かしていくのかということについて解説します。
ROIとは
ROIとは「Return On Investment」を略したものをいい、投資した資本に対して、得ることが出来る利益の割合のことをいいます。
「コストパフォーマンス」という言葉や「費用対効果」という言葉に、言い換えることができます。
しかしながら、一般的な意味での費用対効果という言葉が、必ずしも「投資に対する効果」という意味とは限らず、消耗品や耐久消費財などを購入したときの費用対効果という意味で使用されることもある点には、注意が必要です。
ROIという言葉は、様々な業種の企業において利用される用語ではありますが、何か投資を行うことで、自社の利益・収益力の向上、つまり投下資本の運用効率を指す言葉です。
そのため「投資したものによる利益」を明確に計算できる場面において利用されることが、多い言葉であるといえます。
ROIの計算方法
ROIを意識する、つまり、投下資本に対しての利益(効果)を測定するためには、ROIの求め方を知っておくことでスムーズに導き出すことができます。
ROIは「(売上ー売上原価ー投資額)÷投資額×100(パーセント)」によって、求めることができます。
よりシンプルな計算方法としては、(売上ー売上原価ー投資額)の部分を簡略化する方法があります。
この部分の計算式とは、売上全体から原価と投資額を引いた金額となるので、この部分は会計や経理の概念では「利益」となります。
この利益を投資額で割り、パーセンテージとするため100をかけるのです。
この計算を行った結果、利益が投資額よりも大きいという場合には、ROIは100%以上になり、投資額以上の効果を示していることが分かります。
一方で、投資額よりも利益が少ない場合には、ROIは100を下回ります。
結果的に、その投資は利益率から見ると「赤字」となっているという判断になるのです。
一般的にROIが100を下回っているという状況は、投資によって想定した利益を出せていない状況となるため、ROIが100を下回らないように意識していくことが、重要になります。
しかしながら、資本を投下してすぐに利益に結びつかないという投資のパターンは、決して珍しいことではありません。
そのため、投資の性質や効果、そして効果があらわれる時期などをさらに厳密に企画しておくことによって、ROIの数値の見方は変わってきます。
ROIをパーセンテージで計算する理由
企業がなんらかの投資を行い、それによって利益を得るという場合、まずは「どれだけ利益が伸びたのか」という、金額の部分にフォーカスするのが自然であるかのように感じるかもしれません。
実際のところ、企業にとっては自己資本を増やすことになる利益額は、無視できない要素であり、ROIにおけるパーセンテージよりもそちらのほうが、数字としてインパクトのある指標となる場合もあります。
しかしながら、ROIにおいて着目するポイントは「利益率」であり、これは金額ではなく、投資がいかに効果的に作用したのかという「影響」をはかるものです。
そのため、金額ではなくパーセンテージについて求める計算式となっているのです。
同じ100万円の投資で200万円の利益を生み出した企業と、10万円で20万円の利益を生み出した企業とでは、金額では大きな開きがあります。
どちらも同じ「200パーセント」という数値となることは、ROIが企業規模や予算規模にかかわらず用いることのできる指標であることを意味しています。
ROIと「ROAS」の違いとは
マーケティングを行う企業や部門、コンサルタント、広告業などに従事した経験のある人であれば、「ROI」よりも「ROAS」という言葉のほうに聞き覚えがあるかもしれません。
この「ROAS」は「Return On Advertising Spend」を略した言葉です。
意味としては、「広告費用の回収率」という訳になります。
つまり、広告にかけた費用と、売上との関係を求めます。
これは、ROIと同じ理念における計算であり、本質的にROIとROASは似たような概念であることを示していますが、資本を投下する対象が何らかの製品やサービスといったものであるのか、それとも「広告費用」であるのかの違いがあります。
例えば、広告配信を行うプラットフォームや広告の内容の見直し、広告を新たに発注したことによって、どの程度自社の売上に効果が出たのかというような判断をする上での材料となります。
このように、ROIとROASはよく似ていますが、一点重要な違いがあるとすれば、「ROI」は「投資による効果」に着目する指標であり、「ROAS」は、「投資による売上がどれだけ伸びたのか」ということに着目する点です。
広告を用いる事業においては、ROIとROASの両者を用いて効果と売上の測定を行うことが望ましいといえるでしょう。
ROIを扱ううえでの注意点
広告に限らず、投資の中にはすぐに効果が出ないものも数多くあります。
先に、ROIやROASの計算方法を解説し、100%を下回る場合には投資に対して効果が下がっているという旨を解説しました。
しかしながら、特に広告などの分野では、実は宣伝や広告を発表してすぐに効果が現れることは珍しく、広告が様々な人に広く浸透してから効果が出てくるというケースが数多くあります。
ROIやROASという計算が容易な指標であるがゆえに、広告などの施策を行ったすぐ後に効果測定をしたくなる、という管理職の方も多くいますが、これは性急すぎるといえるでしょう。
広告や資本投下を行う際に、どの程度の期間をもって効果測定を行うのか、広告効果が出てくるのがいつごろになるのかといったことを、慎重に検討しておくことで、このような拙速な判断を避けることができます。
時間をかけて広告を行っていれば、より多くの機会を得られたというもったいない結果にならないためにも、資本投下前の慎重な検討は欠かすことのできない要素なのです。
まとめ
企業の予算を動かす立場としては、自社の資金を使って事業に役立てるという決断を思い切ってしなければならない場面もあります。
しかしながら、重要なポイントは「投資した資金で、どの程度の効果が得られるのか」「どの程度の効果が見込めるのか」という目算です。
ROIは、投資したものがどの程度の利益を生み出しているのかという非常にわかりやすい指標となります。
広告という分野であるにせよ、それ以外の場面での投資であるにせよ、企業の予算を使って資金を投資するという場面では、ROIやROASの意義、そして計算方法を知っていれば、自社の事業にとって有益となるような、適切な投資や資本投下ができるようになるでしょう。