CAGRとは?基準と注意点を併せて解説!

企業にとっては、毎年あるいは毎年度、事業によって成果を残し続け、成長を続けなければなりません。

しかしながら、「成長」とはいっても、それは個人のスキルや実績といったような、曖昧な基準によってではなく、企業における成長というものは、明確な数字で示すことが社会的に求められています。

世間的に公表することができる成長率には計算方法があり、この計算方法を「年平均成長率(CAGR)」と呼びます。

この記事では、企業における成長率や売上増加率を求める際に利用される「CAGR(年平均成長率)」について解説します。

CAGRとは

CAGRとは、日本語では、「年平均成長率」と訳される言葉で、「Compound Average Growth Rate」を省略した言葉です。

より正確には「一定期間における売上高や営業利益の各年成長率」のことを指します。

このCAGRを求めるためには、次のような計算式を用います。

まず、初年度の数値と、求めたい年度の数値を定めます。

初年度の数値をx、求めたい年度をyと仮定した場合、(y÷x)^{1÷(y-1)}-1という式で求めることができます。

この式において、「^」(ハット・キャレット)は、べき乗(累乗)を示します。

この計算式のy(求めたい年度)の数字を変えていくことで、複数の機関にまたがる増加率を、単位期間あたりの増加率で示すことができます。

1年あたりでの増加率・成長率を示す計算式であるために、基本的には複数年度わたる期間の事業や企業における、売上増加率・成長率の計算において使用する計算となります。

会計分野のほか、経営戦略を立てる部門・役職者にとっては、とりわけCAGRを意識して戦略を立てていくケースが多いため、重要な指標となっていきます。

CAGRの特徴は福利が基準、その理由は?

一般的に、売上高の成長率・成長性を考えるという場合、対前年比で考えればわかりやすいように感じます。

つまり、前年ではこれだけ売上が出ていたが、今年はこれだけ出ている、というように計算ができるためです。

しかしながら、このような対前年比の計算では正しく企業の成長性や成長率を計算することができない場合があります。

その理由は、単年度ごとの推移では売上高のバラつきを生みやすいためです。

前年比で大きなプラスを生み出していたとしても、数年間にわたる期間で見ると成長性が、損なわれていたり、減収があった年度があったとしても、数年間の推移で見ると増収が加算されるなど、企業の売上高は単年度ごとに見るケースが少ないためです。

ちなみに、企業の成長率を計算するCAGRでは、一般的に売上高だけを切り取って計算式に当てはめて計算することが一般的です。

これは、企業の「売上における」純粋な成長率を抽出するためという理由があるためです。

しかしながら、必要に応じて経常利益や総資本などを、取り入れて計算をすることができます。

同業他社との比較や、業界全体での平均との対比を行うなど、シーンに応じて必要な数字を取り入れて計算をしてくことで、有効な経営戦略に役立てることができます。

加えて、CAGRは基本的に年平均での成長率を計算しますが、類似した指標として「CMGR」と呼ばれる指標があります。

これは「Compound Monthly Growth Rate」の略語であり、「Monthly」という言葉が示すとおり、これは月平均成長率となっています。

月平均での、成長性や成長率もあわせて検討する場合には、CAGRとあわせてCMGRを用いる可能性もあります。

CAGRにおける成長率の注意点

このように、企業における売上高の成長性・成長率が一目瞭然となるCAGRですが、この指標を用いる際に、留意しておくべきポイントもあります。

まず、CAGRはあくまで過去の数値です。

つまり、過去数年間のうち決まった期間を、切り出してどの程度の成長を示しているかということを計算するものです。

このため、「あくまでも過去の分析結果にすぎない」ということは、留意するべきポイントでしょう。

つまり、過去数年間でどれだけの成長率を示していたとしても、それだけをもってこれからも同様や近い水準の成長を続ける保証は、どこにもありません。

加えて、もう一点注意が必要なのは、算出する際の年数で数値が変わるということです。

これは、相場の変動などにも、言えるポイントですが、例えば、2年度で見れば現象しているが、5年で見ると緩やかな成長に見えてしまうケースのように、抽出期間を変えることで直近の傾向とはかけ離れた結論となってしまうような資料の切り出し方もできます。

直近の傾向を見るのではなく、あくまで任意の一定期間で計算した結果であるため、本来示すべき指標を正しく示しているかどうかという点については、指標を見る側の人間がしっかりとチェックをしなければならないポイントであるのです。

どのようなシーンでCAGRを使うのか?

CAGRを利用するシーンとしては、もちろん企業分析の際に利用します。

最もイメージしやすいCAGRの利用シーンとしては、投資家が投資先企業に対する企業分析の場面で、利用するというシーンです。

投資家は、投資候補となる企業の経営状況や売上の状況、成長率などを加味して投資先を決定しますが、その際の資料のひとつとしてCAGRを用いる投資家もいます。

CAGRは、投資家向け情報として構成されているケースがあるため、先に解説したように、投資家は、このCAGRで示されている情報が、本当に自分の求めている情報であるのかを冷静に吟味したうえで投資判断、経営状況の判断をする必要が出てくるでしょう。

また、投資家と同じ理屈で、金融機関・銀行などへの経営状況説明に使われるケースもあります。

一部企業では、財務部・経理部や役員が、CAGRを用いて経営状況の判断材料のひとつとするケースもあるでしょう。

CAGRの計算は、かつて紙と電卓を使って行っていた時代には、計算方法を知っている経理部や財務部などの社員にしか分からないというケースもあったというのが実情です。

しかしながら、現代では、ExcelのPRI関数やPOWER関数などを活用して、数字さえ出ていれば誰でも計算することが可能となっています。

欧米などでは、自社の経営状況に対して、厳しくチェックするMBAホルダーの社員も数多く存在する傾向にあります。

まとめ

かつて、企業に勤務する従業員としては、経営状況などには関心を持たず、目の前の自分の担当範囲だけを、一生懸命に取り組んでいればよいという空気がありました。

経営陣の側からしても、現場に近い社員が経営に口を出してくるよりも、目の前の担当業務をしっかりやってほしいという趣旨で、むしろそのような空気が美徳とされていた時代もあります。

しかしながら、現代では、計算はPCや表計算ソフトがあれば比較的簡単にでき、知識と資料としての数字さえあれば、誰でも経営状況を認識することができます。

経営に無関心な社員というのは、むしろ現代においては決して歓迎すべき人材と言い切ることは、できないでしょう。

自身が、投資をするからという理由だけでなく、自社の経営状況を自分と密接に関係することとして認識し、CAGRなどの手段を用いてでも状況把握に用いている社員は、企業にとっても希少な人材であるといえるかもしれません。

経営陣や経営者としては、CAGRがどのようなものであるか、どのようにCAGRを求め、活用していくかということは当然把握しておくべきものであるといえるでしょう。

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