ニアショアとは
ニアショア(Near shore)とは「近くの海岸」を指す単語です。
ニアショアとは、通常、業務を人件費の安い国内の他の地方や地域にある企業に、外注することをいいます。
特に、ソフトウェアやシステムなどの、IT開発でニアショアを活用することを、ニアショア開発といいます。
主に、発展途上国を中心とした海外の企業に、業務を外注するオフショアと同様に、コストやリソースを削減できるといったメリットがあります。
近年ではリモートワークが盛んになり、ニアショア開発する企業も増えています。
それでは、詳しく解説していきます。
ニアショアとオフショアの違い
まずは、ニアショアとオフショアの違いについて解説します。
オフショアは、インドや中国、フィリピンなどといった海外の企業に業務を外注する形態であるのに対して、ニアショアは国内の地方の企業に、業務を外注する形態です。
オフショアは、海外の企業に業務を外注するため、人材や高い技術といったリソースは豊富にありますが、言語や文化、法律など多くの壁が存在し、コミュニケーションコストが、大きくなる可能性があります。
一方で、ニアショアであれば、リソースコストの削減という面では、オフショアに劣るものの、国内の企業に業務を外注することになるため、言語や文化、法律の壁を感じることは少なくなるでしょう。
ニアショアのメリット
それでは、ニアショアにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ニアショアのメリットは、
・開発コストの削減
・コミュニケーションコストの削減
・災害時のリスク回避
・現地訪問が容易
という4点が挙げられます。
詳しく解説していきます。
開発コストの削減
ニアショア開発では、都市部より人件費の安い地方の人材を確保できるため、エンジニアやプログラマーといった開発者採用にかかる費用を、削減することができます。
開発コストの削減幅は、オフショア開発には劣りますが、開発の全てを都市部で一極化させるのに比べて、費用を抑えることが可能です。
発注元と発注先の地域により差はありますが、およそ10〜30%の開発コストを削減できるといわれています。
コミュニケーションコストの削減
ニアショア開発によって、採用する人材は国内の方になるので、海外に業務を外注するときに、壁になりやすい言語や文化、法律などの壁がありません。
オフショアを活用して海外に業務を委託した場合は、開発コストそのものは大きく抑えられるものの、そもそもの言語による対話が困難であったり、勤務時間や納期に対してルーズだったりといったコミュニケーションの難しさがデメリットとして挙げられます。
ニアショアを活用して国内の人材を起用するのであれば、オフショア開発で感じるような大きなデメリットを解消することができます。
災害時などのリスク回避
日本は、地震や台風などの災害が多い国です。
システムを、一箇所にまとめると大きな災害に見舞われた際に、全ての機能がダウンして顧客への被害が大きくなる恐れがあります。
そこで、ニアショアを用いて地方に、開発拠点のひとつを作って、システムを分散させることで、いざというときに事業やシステムが停止するリスクを回避できます。
発注元と発注先の地域が近い場合には、同じ災害に被災することも考えられるため、ニアショアの恩恵が、受けにくくなるという点には注意が必要です。
また、海外でデモやクーデターが起きた場合に業務が滞ったり、国際情勢が悪化して為替相場の変動があった場合などに、予期せぬコスト増加に見舞われたりすることもありません。
現地訪問が容易
外注するのが国内の企業であれば、トラブルがあった場合や打ち合わせをしたい場合の現地訪問が容易にできます。
加えて、本社から責任者を派遣したい場合も、国内であれば海外に派遣する場合に比べてスムーズに行うことができます。
オフショア開発の場合は、現地訪問するにも時間も費用もかかるので、移動コストが非常にネックになります。
移動コストが小さく済むのもニアショアのメリットといえます。
ニアショアのデメリット
ニアショアにはメリットだけでなく、デメリットもあります。
デメリットは以下のようになっています。
・開発コストの削減幅が小さい
・優秀な人材の確保が困難
詳しく解説していきます。
開発コストの削減幅が小さい
ニアショア開発では、オフショア開発に比べてコミュニケーションコストは低く済みますが、開発コストそのものの削減幅は、オフショア開発よりも小さくなります。
海外に業務を外注する場合は、日本よりも貨幣価値の小さい国の企業に、外注することになるからです。
国内でも、地域によって物価や最低賃金が違うとはいえ、オフショア開発ほどの開発コストの削減は期待できません。
大きな規模の開発に対しコストをできる限り削減したい場合は、ニアショアよりもオフショアのほうが向いているといえます。
優秀な人材の確保が困難
地方は人口が少ないため、その中から優秀な人材を確保することが、困難というデメリットが挙げられます。
近年では、海外にIT人材が流出しているケースも多いため、ニアショアでは高い技術を持ったエンジニアやプログラマーを、見つけ出しにくいという欠点があります。
また、人材確保に関連して外注する企業が、探しづらいというデメリットもあります。
ニアショアによる仕事を引き受けることを、主としている人気の企業は、既に他の企業からの案件を受注しておりスケジュールが合わない可能性があります。
そのため、ニアショア開発をしたい場合は複数の地域や企業を候補として挙げておくとよいでしょう。
ニアショアを活用して地域活性化へ
ニアショア開発で、地方の人材を登用することで、その地域の活性化にも繋がります。
地方の企業に、業務を外注することでその企業の雇用を促進し、また高い技術を持つエンジニアやプログラマーを、育成することに繋がります。
ニアショアが、活発になれば都市部にある企業が発足させたプロジェクトが、円滑に進むだけでなく、地方の人材雇用・人材育成も活発になるため、都市部と地方でwin-winの関係が築けます。
地域によっては、補助金を出したり固定資産税を免除したりすることで、経済活動や産業の活性化を図っている場所もあります。
そういった地域には、IT系を始めとした企業も多く集まっていることがあるため、ニアショアを活用したい時には、そういった情報を集めるのもひとつの手といえます。
まとめ
ニアショアでは、開発コストの削減、オフショアと比べた時のコミュニケーションコストの削減、災害時などのリスクの回避、現地訪問が容易といったメリットが挙げられます。
一方で、オフショアほど開発コストの削減幅が得られなかったり、優秀な人材が確保しづらかったりといったデメリットも挙げられます。
小さな規模の開発であれば、コミュニケーションコストが小さくすむニアショアが、オススメです。
ニアショアは、地域活性化にも繋がる取り組みであり、ニアショアを推奨している地域もあります。
コスト削減とリスク回避のバランスから、ニアショア開発をするかオフショア開発をするか考えてみましょう。