現代のビジネスでは、様々な業種の企業がそれぞれに業務を行っています。
一般消費者を、顧客としてビジネスを行う企業もあれば、一見目立たない場所で大きなビジネスの中継を担っている場合もあります。
こうした各業界の現代ビジネスのバックボーンとして、「ベンダー」は欠かせない存在となっています。
この記事では、「ベンダー」という言葉の意味と、各業界におけるベンダーの役割や違いについて解説します。
ベンダーとは
ベンダーとは、英語の「vender」を語源とする言葉で、元々は「販売業者」という意味を持つ言葉ですが、現代使われている「ベンダー」という用語は、必ずしも販売業者だけを指すものではありません。
ベンダーの中には、販売だけではなく、企画や開発、運用保守を行うSIベンダーや、部品のメーカーなどを指すような場合もあります。
現代では、部品や原材料を自社で一貫して、生産するというような企業は、逆に珍しくなっており、多くの企業でベンダーとの関係の中で、業務を進めているという現状があります。
各業界におけるベンダーのはたらき
ベンダーは、様々な業界において活動しています。
しかしながら、それぞれの業界におけるベンダーは微妙に立ち位置が異なり、担っている業務も異なります。
具体的には、IT業界におけるベンダーは、多くの場合、システムやソフトウェアなどを販売する会社のことを指します。
また、ソフトウェアではなくPC・OA機器などを、リースしたり販売を行ったりするハードウェアベンダー、システムの企画・開発から運用・保守までを一貫して行うSIベンダー、クラウド環境の構築を担当するクラウドベンダーなど、様々な種類のベンダーがいます。
食品業界においてベンダーと呼称するときは、小売店に対して商品を収める業者のことを指す場合と、問屋などをベンダーと呼ぶ場合とがあります。
加えて、食品の中でも弁当など製造・加工を伴う業者、飲料業者などをベンダーと呼ぶ場合もあります。
ちなみに、飲料業界に限っては自動販売機のことを「ベンダー」と呼称している場合もあります。
自動車業界においては、車の製造部品・パーツなどのメーカーのことをベンダーと呼びます。
同じ「ベンダー」という言葉でも、業界によって様々な意味合いが含まれますが、どの業界においても「ベンダー」はビジネスの継続に必須となる企業であることは共通しているといえるでしょう。
適切なベンダーを探すためのポイント
どのような業界であれ、ベンダーを選定する際には、適切な相手企業に依頼することが重要です。
この評価基準は、ある意味で外注・委託先を選定する際のポイントに似ています。
適切なベンダーを見つけるためのチェックポイントのうち、まずは一般論として、「コストパフォーマンス」「クオリティ」「スキル」「リソース」の4つのポイントが挙げられます。
コストパフォーマンス
まず「コストパフォーマンス」のポイントとしては、提供されるサービスの内容と価格とのバランスが取れているかという点が挙げられます。
非常に低価格でサービスを提供されていたとしても、自社の求める業務をカバーしていなかったり、自社との連携や情報共有などに継続的な時間・手間がかかるような場合には、適切なベンダーとは言い難いでしょう。
クオリティ
次に「クオリティ」、つまり「品質」のポイントとしては、自社の求める品質のものを納品、あるいは提供ができるかという点です。
例えば、部品のメーカー、OA機器のリース・レンタル・販売、ソフトウェア・システムの販売などを、想定するとイメージしやすいでしょう。
成果物の品質が、自社の求める水準に達していなければ、ベンダーと契約する理由そのものがなくなってしまいます。
コストパフォーマンスの項目においても、当然品質は検討されるべきですが「クオリティ」は、それひとつでベンダー選定の際のポイントのひとつとなる可能性があります。
スキル
「スキル」は「クオリティ」と類似する概念ですが、この場合は微妙に意味が異なります。
この場合の「スキル」は、「得意な分野や技術方面」という意味です。
IT・システム業界での、システム開発ベンダー選定を、想定するとわかりやすいのですが、企業ごとに得意な言語やシステム構成があります。
ベンダーとして選定する場合には、ベンダー候補となる企業の得意な分野を、しっかりと見極めてからベンダーとしての依頼ができるかを検討します。
そして、「リソース」については、人員や流通、在庫確保の確実性が該当します。
いくら優れた人材やスキルを揃えている企業であったとしても、ベンダーとしての業務に耐えることが出来る人員の確保や、流通・生産体制を整えられない企業では、ベンダーとしては不適当です。
依頼して終わりではない、ベンダーマネジメントとは
ベンダーへの依頼に限らず、一般的な請負や業務委託の場合にも当てはまりますが、依頼を行う企業にとっての業務は「ベンダーへ依頼して終わり」というものではありません。
ベンダーとの契約を行った後に、業務の滞りがないかといった、監視や適切な進捗管理といった管理業務が生じます。
これが、ベンダーマネジメントと呼ばれる業務です。
具体的には、ITベンダーへシステム開発を依頼するようなベンダー契約の場合には、発注後にスケジュール通り開発が進んでいるか、開発進行していく中でトラブルや問題が発生していないかなどといった部分を管理する必要があります。
加えて、必要に応じて、ベンダーとの納期設定の見直しや契約条件の変更・修正などの調整業務もベンダーマネジメントの業務のひとつとして発生する場合があります。
こうした適切な管理業務を行わず、当初の契約と最終納期だけを設定するようなやり方で業務を進行しようとすると、いわゆる「丸投げ」の状態となります。
成果物に対して期待外れの結果となったり、ベンダー企業との間での良好な関係が築けないなど、双方にとってデメリットとなる事態が予想されます。
ベンダー選定の際に重要となる「RFP(提案依頼書)」とは
ベンダーへ業務を発注し、業務の一部を依頼する場合には、一般的に「RFP」「RFI」と呼ばれる資料に基づいて発注がなされます。
RFPとは「提案依頼書」と呼ばれる資料で、発注する業務にかかわる必要要件などが、記載されます。
RFIは「情報提供依頼書」と呼ばれる資料であり、これは会社情報や実績、提供可能なサービス情報などの提示を求める資料です。
発注側企業は、RFP・RFIの双方の資料をもとに、発注しようとしている業務との適合性、ベンダー候補企業の信頼性・資質・実現性などを検討します。
一般的に、RFPやRFIは、受託しようとしている企業が発注企業に提出してくる資料であるため、どの企業においても、該当業務について「実現できる」という趣旨で作成されているものです。
つまり、RFP・RFIだけを鵜呑みにするのではなく、RFP・RFIの内容をもとに発注企業側でも真実性・信頼性を調査・検討したうえでベンダー企業を選定することが、リスク回避には重要となるのです。
まとめ
現代の企業活動において、自社で提供するサービスの工程において、すべての工程を自社で完結しているという企業は稀です。
多かれ少なかれ、業務の一部を外部に委託したり、外部企業から調達するといったことが、行われています。
しかしながら、適切にベンダーを選定し、必要な調整や管理を行わなければ、せっかく外部に発注した業務も期待外れの結果となるケースがあります。
自社が外部の企業とベンダー契約を締結する場合には、発注側となるにしろ、受注側となるにしろ、ベンダーとしての必要条件をしっかりと見極めて契約行為・管理行為を行うことが、双方にとってメリットを享受するための必須事項といえるでしょう。