MECEという言葉を聞いたことがありますか?
ロジカルシンキングの元になる概念であり、ビジネスシーンで物事を論理的に考える際に、重要とされているMECEですが、どのような手法なのか、問題解決にどのように役立つのか詳しく知らない人も多いかもしれません。
今回は、MECEの重要性やフレームワークのポイントなどを、実際にビジネスシーンで活用する際の具体例も交えて解説していきます。
MECEとは
MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「ミーシー」もしくは「ミッシー」と読みます。
MECEは「漏れなく、重複なく」といった意味合いで使用されており、物事を考えるときに必要な要素を網羅しつつ、重複しないようにする考え方と定義付けることができます。
MECEは、ロジカルシンキングの基本であり、日常生活でも利用可能な考え方ではあります。
しかしながら、近年倫理的に問題解決する際に必要な手法として、ビジネスの現場で重要視され、戦略用語やマーケティング用語としてよく使われるようになりました。
MECEの2つのアプローチ
MECEで物事を考えていくには、2つのアプローチ方法があります。
それぞれのアプローチ方法の特徴を理解して、適切なアプローチを使うことが重要です。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、全体像をとらえたうえで徐々に詳細を考えていく方法で、事前に分類方法を想定しやすい場面などに適しています。
全体を体系的・俯瞰的に考えられる一方で、全体像があやふやだったり間違いがあったりすると、漏れやダブりの要因となるため注意が必要です。また、ゼロベースのスタート地点では使えないアプローチです。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチとは、要素を洗い出してグループ化することによって全体像をイメージする方法です。
全体像が見えていない、存在していない場合に適していますが、全体像が不明瞭なことによる漏れやダブりがおこりやすく、徹底した要素の洗い出しが重要です。
トップダウンアプローチとボトムアップアプローチは、それぞれの特徴をしっかりと把握したうえで、使い分けたり組み合わせたりすることが重要です。
どちらか一方が、優れているといったことはありませんので、両方のアプローチを上手く使い分けられるようにしておくとよいでしょう。
MECEの活用方法
それでは、ビジネスシーンにおけるMECEの活用方法は、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
MECEに考えるためには、どのような切り口を設定するかが重要です。具体的なMECE活用のポイントを4つご紹介していきます。
①対照的な概念で分解
ある対象の事柄に相反するものや対照的な概念を挙げて分解します。
例えば「メリット⇔デメリット」「質⇔量」など反対になる概念で分類するものです。
➁因数分解
分析対象を計算式に表し、それを要素に分解していく方法で、「掛け算型」とも呼ばれます。
具体的には、売上について分析する際に「顧客数×顧客単価」と分解していきます。
③要素分解
「足し算型」「積み上げ型」とも呼ばれる要素分解は、対象を全体から要素へと分解していく方法です。
分解した要素の合計が、全体集合として整理されていきます。
④時系列・ステップ分解
ステップ分解は、時系列や各段階で分解していく方法です。
業務手順で分解したり、プロジェクトの準備・実行・改善の各フェーズで分解しながら分析します。
代表的なMECEを利用したフレームワーク
実際に、MECEを活用する際のフレームワームを、いくつか解説していきます。
①SWOT分析
SWOT分析とは、強み(Strength)弱み(Weakness)機会(Opportunity)脅威(Threat)の視点から、各要素を『プラス要因』『マイナス要因』『内部環境』『外部環境』に分けて分析していく方法です。
ビジネスチャンスを見つける際に、外部環境や現状を分析するために活用されています。
➁3C分析
3C分析とは、市場・顧客(Customer) 競合(Competitor)自社(Company)の3つに分けて考える方法です。
自社にとどまらず、外部の環境も含めて分析するので漏れや重複することなく、市場を分析することができ、事業計画やマーケティング戦略などで多く活用されています。
③PDCA
PDCAとは、計画(Plan)実行(Do)評価(Check)改善(Act)というように、プロセスを1度で終わらせるのではなく、何度もサイクルを回すことによって活動のレベルを高めていく方法で、時系列・ステップ分けを行います。
④4P分析
マーケティングミックスとも呼ばれる4P分析とは、何をどのように売るのかといったマーケティング戦略を考えるフレームワークのことで、4つの要素に分解して考えていきます。
4PのPは、Place(流通)Price(価格)Product(製品)Promotion(販売促進)を指しています。
⑤7S分析
7S分析は、要素分解型(足し算型、積み上げ型)のフレームワークで、ソフトの4S=能力(Skills)人材(Staff)価値観(Shared Value)経営スタイル(Style)と、ハードの3S=仕組(Systems)、組織構造(Structure)、戦略(Strategy)に分けて分析する手法です。
組織の戦略を分析するもので、企業戦略での7つの要素の相互関係を示すものとされています。
MECEを活用する際の注意点
ビジネスシーンで活用することのメリットが多いMECEですが、注意しておくべき点もあります。
MECEの活用が、適切ではないシーンにおいてもMECEの考え方にこだわりすぎて、結果が得られなくなってしまうこともあるからです。
MECEは、明確にグループ化できない場合には効果的ではないため、分類できない事象がある時には活用できません。
加えて、MECEにこだわるあまりMECEとして考えること事態が目的となってしまうことがあります。
何のために分類するのか、なぜMECEで考えるのかといった目的を明確にしておくことが大切です。
MECEの習得方法
MECEを使いこなすためには、ある程度の練習が必要です。
まずは、ロジカルシンキングの実践からはじめ、実際にアウトプットを上司や同僚に見てもらいフィードバックをもらって反復練習することが効果的です。
また、MECEの考え方が身につくまではビジネスシーンだけでなく、日常の中でもMECEになるような考え方を取り入れてみることもよいでしょう。
小さなフレームワークでもよいので、日々の生活の中でMECEの考え方を取り入れて思考する習慣をつけていくと、早く自分のものとして習得できるようになります。
まとめ
MECEはビジネスシーンにおいて問題解決のプロセスとしてとても重要な考え方です。
MECEの概念やフレームワークについて解説してきましたが、MECEの効果を体感するには実際に利用していくことが重要といえるでしょう。
今回紹介した内容を参考にして活用方法や分類についてしっかりと理解し、効率的な課題解決のための手法として日常の業務でも役立ててみてください。