「アンラーニング」
この言葉をご存知ですか?
簡潔に説明すると、今自分が蓄えている知識や価値観を見直し、新しい知識や価値観を取り込む手法をアンラーニングと呼びます。
現代の社会は目まぐるしく変化を続けており、柔軟に見る目が必要です。
そこで今回、近年注目されているアンラーニングが、企業へどのような影響を与えるのか。
また、メリットやデメリットを踏まえた実践方法などを紹介していきます。
アンラーニングとは?似た言葉との違いも解説
アンラーニングとはどういった意味なのか理解できていますか?
ここでは、アンラーニングの意味や、よく似た言葉との違いを解説していきます。
もし、「『アンラーニング』って聞いたことがあるけどよくわからない」という方はぜひこの章を読んで「アンラーニング」の正しい意味や使い方を知りましょう。
アンラーニングとは知識の断捨離のこと
「アンラーニング(unlearning)」とは、これまでに学んだ知識や価値観を見直しつつ必要か不要かを選択し、新しい知識や価値観を取り入れることです。
「学習棄却」や「学びほぐし」とも呼ばれ、激しく変化する現代の環境へ対応するためには、必要不可欠とされています。
しかし、なぜこれまでに得た知識や価値観を、改めて見直す必要があるのでしょう。
理由としては時代が進むにつれて新しい見方などが設立し、実はこれまでの考え方自体が誤っていた可能性もあるからです。
例えば過去に培った知識が有効であるか、について考えたとき、必ずしも過去の知識や価値観だけが有効であるとは限りません。
また、従来の方法では作業の効率が悪い、などの気付きも得られます。
こうしてアンラーニングをした結果、過去の知識や価値観に囚われた時代遅れな行動を一旦停止させ、新しく得られるものは何か?を考えられるように変わるのです。
つまりアンラーニングとは、個人あるいは企業全体が成長するために必要な「知識の断捨離」であり、これからの社会へ対応できる人材育成に役立つといっても過言ではありません。
アンラーニングとリスキング・リカレントは何が違うか
アンラーニングと近い意味で使われる「学び直し」や「リカレント」、「リスキング」という言葉がありますが、それぞれの特徴が異なります。
学び直しやリカレントは、生涯的に学び続けること。
リスキングは、環境の変化へ対応するための再教育や再開発のこと。
要するにリカレントやリスキングはインプットであり、これまでの学習を意図的に捨てるアンラーニングとは、意味合いが異なると言えるでしょう。
アンラーニングによる個人や企業へのメリットとは
社会や経済が急激な速さで変化をし続ける現代においては、個人や企業の成長のためにアンラーニングが重要です。
そこで、アンラーニングの具体的なメリット
- 従業員の成長につながる
- 従業員の意識改革ができる
- 業務効率の改善に役立つ
- 変化に対応できる組織がつくられる
以上4点を解説します。
従業員の成長につながる
新たな学習は、従業員の成長につながります。
今までに成功を収めた方法や過去に得た知識は陳腐化しやすく、またスキルを高めたベテランほど新しいものへの懸念を表しやすいでしょう。
しかしアンラーニングを行なうことで、それらを一旦捨てて新しく学習する必要があるため、伸び悩む従業員やベテランたちが成長するきっかけとなるのです。
従業員の意識改革ができる
これまでの習慣を変えると、従業員の意識改革ができます。
どうしても既存の方法や過去の経験に囚われてしまうと、物事を容易に決めつける傾向が出てくるものです。
そこでアンラーニングに取り組み、成功パターンや特定の分野へこだわらず、新たな価値観によるサービスの提供が可能となります。
業務効率の改善に役立つ
無駄や思い込みを減らすことで、業務効率の改善に役立つでしょう。
今までのルールや思い込みにより、長い間無駄だとは思うものの捨てきれなかった作業がある場合、アンラーニングは必要です。
これまでの価値観や、無駄を捨てるといった業務の見直しを徹底化すれば、既存の方法とは大きく異なる新たな発想を得られ、結果、業務の効率化が進みます。
変化に対応できる組織がつくられる
アンラーニングの推進により、組織は時代の変化へ対応できます。
過去に固執し続けるのは、個人にとっても企業にとっても伸び悩みの原因となりますので、取捨選択が必要です。
従来のやり方を見直し、今求められる新しい学びを得られる基盤が整えば、急激な変化を遂げる社会に取り残されることはありません。
マネジメント力が強化される
時代の流れや変化に対応できる、マネジメント力が強化されます。
アンラーニングは過去の知識や価値観を捨て、新たに必要なものを取り入れて成り立ちます。
つまり、新規事業に乗り出すか否か、ビジネスモデルを転向させるかどうかなど、アンラーニングの機能によって、今までにない経営方針を考えられるのです。
アンラーニングのデメリットや注意点とは
企業の今後の発展に役立つアンラーニングですが、活用するにあたって注意点やデメリットが存在します。
アンラーニングのデメリットとして、
- モチベーションの低下が起こり得る
- 振り返りと反省が混同しやすくなる
- 学習を否定してしまう
以上、3点の解説をします。
モチベーションの低下が起こり得る
アンラーニング導入で注意すべきは、モチベーションの低下です。
長年慣れ親しんだ仕事の方法や考え方へ変化をつけるのは、多少なりとも心理的抵抗感があるでしょう。
また、これまでの自分すらも否定されていると感じることも起こり得ます。
そのため、アンラーニングが自己否定ではなく、成長に必要なやり方であると伝え続けるのが大切なのです。
振り返りと反省が混同しやすくなる
知識や価値観の取捨選択をしていくと、「時代遅れの知識や価値観を捨てる」点で自分が遅れている事実を反省する人が出てきます。
しかし、アンラーニングはあくまでも客観的に自分を見つめ直すのが目的であって、反省や後悔をするために行なうものではありません。
自分を責める必要はなく、新しく学んだ知識や価値観を吸収する。
それがアンラーニングだと理解しましょう。
学習を否定してしまう
時代に合わせて知識や価値観を選ぶことばかりに目を向けると、知識を取り入れる学習(learning)に対して疑問を抱きやすくなります。
けれども、学習自体に意味があるのか?と考えたくなる気持ちはこらえ、学習して実際に行動を起こしてください。
そしてまたアンラーニングを行い、自身を成長させていきましょう。
アンラーニングの実践で重要なこと
ここまでに解説したメリット・デメリットを踏まえ、アンラーニングを実践する上で重要な
- 認知と内省
- 知識や経験の取捨選択の意識
- 他部署や異業種との交流
- チーム全体での取り組み
以上、4点を紹介します。
認知と内省
アンラーニングにおいて重要なのは、日々の中で起こった成功・失敗した出来事、その理由などの内省。
それから、「時代に合わないやり方ではないか」「これは今後も価値があるか」などの認知です。
上記を自問自答する癖を身につけ、また手帳や日記などに書き出す習慣を作れば、知識や価値観などの整理がしやすくなるでしょう。
知識や経験の取捨選択の意識
内省によって認知できた自分の知識や価値観を、今後は何がより重要になっていくのだろうか?と意識した結果、更に学習するか、捨てるかを選択できます。
それが個人だけでなく、他者と照らし合わせて取捨選択を繰り返していけば、アンラーニングの後にはラーニングの実践へと繋げられるようになります。
他部署や異業種との交流
他部署や異業種との交流や、幅広い年代の人との交流する場面を増やすのも、アンラーニングを実践するにあたって必要です。
知識や価値観の取捨選択において、他者からの意見は非常に参考となり、また大きな刺激となりますので、積極的に他者と対話して自己を見つめ直しましょう。
チーム全体での取り組み
アンラーニングは個人で実践せず、チーム全体で取り組むのをおすすめします。
なぜなら、個人だけが仕事のやり方を変えてみたり、考え方を改めてみたりしたところで、チームや部署全体の意識が改革されるわけではないからです。
必ずチーム単位で取り組みましょう。
特に、意思決定権を担う層などが率先し、積極的に挑戦することでアンラーニングの必要性を全体に浸透させられます。
まとめ
留まることなく絶えず変化する社会の潮流へ対応するために、アンラーニングがいかに重要であるか参考になりましたか?
アンラーニングは上手く取り入れられれば、企業として大きな武器となりますが、組織単位で実践するのは非常に難しいとも言われています。
しかし、難しいからと諦める必要はありません。
困難だからこそ、まずは経営者であるトップの方々が実践することで、部下や後輩への柔軟な対応を可能にするのが理想なのです。
組織全体が成長する未来を見越して、ぜひアンラーニングを実践してみてはいかがでしょうか。