「オフショア」とはどういう意味?メリット・デメリットを注意点も含め解説

現代社会は、コンピュータやネットワークの発達に加え、移動手段も高速化しており、人・モノ・お金のほかに「情報」も以前とは比較にならないほどに高速で行き来しています。

そして、移動が高速になったことによって、経済のグローバル化はますます進行しており、中小規模の事業者であっても、「海外進出」「海外取引」は決して珍しいことではなくなりました。

そのような現代のシステム開発において、すでに広く使われている手法である「オフショア開発」について、この記事では改めてその概要と、メリット・デメリットについて解説します。

オフショアとはどういう意味?概要を解説

まず、「『オフショア』とはどういう意味?」「聞いたことがあるけど意味をよく理解していない…」という方のために、概要を解説していきます。

「オフショア」とは?

オフショア開発、あるいはオフショアとは、一言で言えばシステム開発・システム保守や運用などを、人件費が自国よりも安い海外企業に委託したり、海外現地法人に発注したりすることを指します。

海外企業に委託する場合には、ビジネスにおけるいわゆるアウトソーシング化の一貫として考えることができます。

自社での開発・保守と比較してコストが下回る場合には、システム開発という業種においても選択肢となる開発手法です。

中には自社で海外に現地法人を設立して、同様に委託という形式を採用する企業もあります。

この場合であっても、自国内にあるいわゆる「本社」とは別会社という扱いとなるため、アウトソーシング化の一類型と見ることができます。

日本のオフショア開発

日本企業では、古くからシステム開発においてオフショアの手法が採用されてきました。

1980年代、未だ一般の家庭にはそれほどコンピュータやシステムといった概念が浸透していませんでした。

ITエンジニアの確保が国内では非常に困難であった時代には、中国やインド、ベトナムといった国でオフショア開発が行われてきました。

現代においては、それらの国の人件費が高騰したことを受け、オフショア開発先は変わってきており、フィリピンなどが注目されてきています。

また、シンガポール、ミャンマー、バングラデシュなども近年ではポピュラーなオフショア開発先です。

オフショアのメリット

オフショアにはメリットが存在します。

オフショア開発を行うメリットは以下の二つです。

オフショア開発を行うメリット

  • コスト削減
  • 人的リソースの確保

以下解説していきます。

オフショアのメリット「コスト削減」

アウトソーシングとオフショア開発に共通する概念としては、何よりもコスト削減が挙げられます。

日本国内で人材を雇用した場合に比べ、海外法人・海外現地法人での雇用のほうが人件費を低減しうる場合には、オフショアによる開発が選択肢に上ります。

オフショアのメリット「人的リソースの確保」

オフショアを行い、海外法人や海外現地法人にシステム開発・保守・運用を委託する目的は、先に解説したようにコスト削減がもっとも多い理由となります。

それと同時に着目されるオフショアのメリットは、「人的リソースの確保」があります。

このリソースとはつまり、自国内にある本社の人的リソースを指します。

システム開発・運用・保守にはITエンジニアが必要になりますが、同時に複数の開発を行う事業や、複数の運用・保守を継続して行わなければならない場合、自社から割ける人的リソースには限りがあります。

既存の運用・保守事業にITエンジニアを配置していて、新規の開発事業を遂行することができないという状況にあるのならば、明確に人的リソースの不足が自社の成長を阻害していると判断できます。

このような局面においても、自国内で人材を募集したところで、必ずしも求める人材が想定内のコストで採用できる保証はありません。

オフショアは、このような「人的リソース確保」というメリットも含んでいるのです。

オフショア開発のデメリット

オフショア開発には、先に解説したようなメリットが多数ある一方で、デメリットも存在します。

オフショア開発のデメリットは以下の二つです。

オフショア開発のデメリット

  • コミュニケーション齟齬
  • ノウハウが蓄積しない・流出する

以下解説していきます。

オフショア開発のデメリット 「コミュニケーション齟齬」

これは日本でオフショア開発が行われてきた古い時代から言われていることですが、最大のデメリットは「コミュニケーションの齟齬」です。

日本との言語の違い、開発に対するアプローチ方法、そして契約内容・文言に関する齟齬が起きやすく、それによってかえってコストが増大したり、契約が破棄となってもう一度一から国内で開発をし直すことになったというエピソードもまま見られます。

また、言語という意味だけではなく、契約や納品物の品質に対してどのような意識で開発を行っているかという点においても、日本と海外では大きく乖離がある場合もあります。

システム開発はコストばかりではなく、納品したシステムの安定性・信頼性、メンテナンス性を重んじるという言説は一般にシステム開発の場面でよく指摘されます。

しかしながら、オフショア開発先がシステムの信頼性や安定性を犠牲にしてでも、納品までのスピードやコストの低減を重視している場合、契約の場面でいかに品質の重要さを説明したところで、望んだ結果は得られないでしょう。

オフショア開発のデメリット 「ノウハウが蓄積しない・流出する」

そして、もう一つのデメリットは、システム開発におけるノウハウや技術が自社に蓄積しないという点です。

これは古くから識者の間で指摘されてきた問題です。

オフショアによって求めるシステムは手に入ったものの、肝心の開発能力が高まらないままに経営が続き、もはやシステム開発会社は「人材会社」のようになってしまったケース

また、これと関連する問題として、技術流出も挙げられます。

オフショア先に自社の開発手法や開発におけるノウハウを供与して、しばらくは契約関係が続いていたものの、自社のノウハウを取得した海外法人が契約から撤退されてしまい、技術だけが流出してしまったというケース

このような場合、吸収した技術・ノウハウをもとに現地でシステム会社としての地位を確立されてしまうこともありますが、経営のあり方としては自然なことです。

オフショアがシステム開発や運用における業種での用語として利用されていますが、同様の問題は類似の概念であるアウトソーシングや人材派遣といった業種でも起こり得ます。

オフショア開発を進める際の注意点

オフショアには、これまで解説してきたようにメリットもデメリットもあります。

デメリットを抑えつつ、メリットを享受するためには、やはり事前の対策が欠かせません。

事前の対策方法は以下になります。

オフショア開発で注意するべきこと

  • 適切なブリッジSEを採用する
  • ミーティングや打ち合わせを十分に行う

適切なブリッジSEを採用する

まず検討するべき課題は言語の問題です。

翻訳を行える人材の確保が必要なのですが、ただ単に現地の言語と日本語の両方がわかるというだけでは十分とはいえません。

なぜなら、システム開発という事業を行う上での翻訳が必要となるために、業界特有の言語、IT用語やシステム開発の流れなどが専門的にわかる人材である必要があるからです。

このような人材のことを「ブリッジSE」と呼びます。

適切なブリッジSEを採用することができれば、オフショアにおけるコミュニケーションの問題にはある程度対処することが可能となります。

ミーティングや打ち合わせを十分に行う

次に、十分な回数と内容のミーティングや打ち合わせを行うことです。

先に指摘したように、システム開発の手法や納品物の品質に対する意識のほうに齟齬がある場合もあります。

海外と日本ではどうしても物理的な距離があるため、進捗状況を意識的に管理していく必要があります。

そのため、十分な回数と内容のミーティングや打ち合わせ、マイルストーンの設定といったマネージメント部分にも留意が必要といえます。

おわりに

日本は比較的ITの分野では早い段階で、システム開発を海外に発注するなど先進的な進め方をしてきました。

しかし、現代の日本は紛れもなく高齢社会であり、若手の人材がどの業界でも不足しています。

その中でさらに、高度なシステム開発を行えるIT人材となると、その数はどうしても限られてきます。

このような情勢を考えると、やはりオフショアはシステム開発の場面において避けては通れない道といえます。

オフショアのメリットとデメリット、そしてオフショアでシステム開発を進めるうえでの注意点を把握したうえでオフショアを進めることではじめて、リスクを最小限にしつつオフショアのメリットを十分に享受することができるのです。

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