ポータブルスキルという言葉を知っていますか?
聞いたことはあるけど、良く分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、
- ポータブルスキルとは
- ポータブルスキルの構成要素
- ポータブルスキルの活用方法
- 企業がポータブルスキルに着目するメリット
- ポータブスキルを伸ばす方法
について解説していきます。
ポータブルスキルとは
ポータブルスキルとは、業種や職種に関係なくどんな環境でも活用することのできるスキル(=持ち運び可能なスキル)のことを指します。
具体的には、
- 計画力
- 課題解決力
- 対応力
- コミュニケーション能力
といったスキルが当てはまります。
計画力
計画力は、現在の状況や課題点を把握した上で今後の業務の内容などを練る能力のことを指します。
「PDCAサイクル」という計画(plan)・実行(do)・評価(check)・改善(action)といった4つのサイクルを繰り返すことによって的確な計画をたてることが可能です。
業務を行なう上では、2つ以上のタスクを同時に行なわければならなかったり、長期的な業務を期限までに終わらせなければならなかったりなど計画性が求められる場面が多くあります。
このように、着実に業務を行なうためには高い計画力が必要不可欠になるため取得しておきましょう。
課題解決力
課題解決力は、自身が取り組むべき課題を発見し課題解決を行なっていく力を言います。
課題を的確に見極めることは、現状の改善を行ないより良いサービスを提供することに繋がります。
課題を明確にすることで、行なうべき行動を最小限に抑えることができるだけでなく、効率的に物事をすすめやすくなり、その後の業務内容を計画しやすくなるため必然的にスムーズな行動ができるようになるのです。
適応力
適応力は、業務を行なう上での様々なシチュエーションに対応する際に発揮される力のことを言います。
適応力は主に、想定していなかったトラブルが起きてしまった場面で発揮されます。
高い対応力を身に付けていることによって、素早く対応を考えることが可能になり、もっとも良い対処が可能になります。
この対応力は、常に広い視野をもって業務を行なうことで伸ばすことができます。
現在行なっている業務一つ一つにおいて、それぞれ考えられるトラブルを考えながら業務を行うなど、幅広い可能性を想定しておくことによって想定していなかった事態が起きてしまったとしても、スムーズに対応することができるようになるのです。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、ビジネスにおいて必要不可欠な能力です。
どんな内容の業務であっても、様々な人とコミュニケーションをとることは避けられません。
コミュニケーション能力を持っていることで、スムーズに信頼関係を築くことが可能です。
信頼関係があれば、円滑にやり取りを行なうことができるだけでなく、営業の成功確率の向上などの仕事のパフォーマンスであったり成果にも繋がっていきます。
それだけでなく、組織内でコミュニケーションをしっかり取ることによって、企業内での士気が上がったり、個人のモチベーションも上がっていきます。
ポータブルスキルは、厚生労働省から「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルのこと」と定義されており、35〜55歳のミドル層人材の有効活用のために、期待されています。
終身雇用が当たり前だった時代から、誰もが気軽に転職ができるようになった時代の中で高いポータブルスキルを持っていることは、さらなるキャリアアップを目指すことができます。
加えて、ポータブルスキルは転職活動時以外にも社内での異動などの環境の変化があった際にも活用することができるため、なるべく早い若いうちに身につけることを意識することが重要です。
ポータブルスキルの構成要素
厚生労働省「“ポータブルスキル”活用研修」において、ポータブルスキルの構成要素は、
- 専門技術や知識
- 仕事への取り組み方
- 人との関わり方
の3つだと提唱されています。
それぞれ解説していきます。
専門技術・専門知識
「テクニカルスキル」とも呼ばれるこのスキルは、特定の業務を遂行するために必要な知識や技術のことを指します。
これらのスキルは、活用できる場面は限られており、従来の労働市場では最も重要視されていました。
現代においても、35〜55歳の即戦力が期待されているミドル層において、これらの専門技術や専門知識は重要視されています。
仕事への取り組み方
仕事への取り組み方は、以下の3つに分類することができ、どれも業務において高いクオリティでパフォーマンスをするために重要な要素です。
- 課題を明確にする
- 課題に対しての計画をたてる
- 計画を実行する
①課題を明確にする
課題を明確にするスキルは大きく分けて「現状を把握するスキル」と「課題を設定するスキル」に分けることができます。
課題を明確にするためには、まず現状を十分に把握する必要があるため最初は情報収集から行うと良いでしょう。
その後、集めた情報を分析して評価することで、新しく発見できた課題が会社全体の課題なのかもしくは各部署における課題なのかを明確にすることが可能になります。
課題を明確にするには多くの情報収集が必要になるため、課題設定のスキルとともに他部署の人から聞き取りを行うコミュニケーションスキルなども必要になるでしょう。
現状を冷静に把握して分析した結果「より良くするためには何が課題なのか」を明確にするスキルは、環境に関係なく重要なスキルと言えます。
②課題に対しての計画をたてる
課題を明確化することができたら、次は課題解決に向けて計画を立てましょう。
計画を立てる際には「いつまでに課題を解決するのか」「解決するためには何が必要か」「過去に似たような内容を取り扱った事例はないのか」などを調査することが重要です。
目的達成のために、逆算して計画をたてることができるスキルというのは、仕事のみならず多くの場面で活躍するスキルと言えます。
③計画を実行する
課題に対して立てた計画を実行するためには、納期というプレッシャーを感じながらも柔軟に対応することができるスキルを身につける必要があります。
それだけなく、計スケジュール管理力やマネジメントスキルを同時に身に付けることも大切です。
立てた計画に対して予定通り遂行するスキルは、職場や部署に関係なく活かすことができるようになります。
人との関わり方
立てた計画をしっかり行うためには、対話が必要不可欠になります。
そこで、重要になるのが「人との関わり方」です。
人との関わり方とは、社内の上司や経営層などの組織の上部との関わりはもちろん、部下や後輩といった下へのアプローチやマネジメントを行なう上で重要になる力です。
加えて、人と関わる力は社外の人とコミュニケーションをとる上でも重要になっていきます。
具体的には、お客様(顧客)やステークホルダーとの調整であったり交渉を行なう際に構築されていきます。
ポータブルスキルの活用方法
場所を選ばずに活かすことができるポータブルスキルですが、具体的にどのような場面で活用できるのでしょうか。
具体的には、
- 採用シーンでのポータブルスキル
- 人材育成シーンでのポータブルスキル
の2つが挙げられます。
具体的な活用事例を、ここからはご紹介していきます。
採用シーンでのポータブルスキル
新しい従業員を採用する際、ポータブルスキルを基準に採用を行うことで、入社後に即戦力になる人材を見つけることが可能になります。
例えば、専門的な知識や技術を持っている人材を採用したとしても、対人力が乏しく社内でコミュニケーションを上手く取れないのであれば、スキルを十分に活かすことはできません。
それだけではなく、コミュニケーション不足によって社内の雰囲気が悪くなり、従業員の生産性が下がる恐れも考えられます。
一方で、ポータブルスキルを基準にして採用活動を行うことであらかじめその人の「対人力」や「課題解決力」などのレベルを把握することができます。
その結果、入社後に他の従業員とコミュニケーションを取り円滑に業務に取り組むことができるでしょう。
人材育成シーンでのポータブルスキル
人材育成を行う上でも、ポータブルスキルは重要な役割です。
まずは、今の職場において必要なポータブルスキルは何なのかを洗い出すことから始めましょう。
必要なスキルを洗い出した上で、従業員のスキル習得状況を理解することができたら、それぞれに足りていない教育や研修を実施することができます。
それぞれに足りていないポータブルスキルを習得させることで、従業員のキャリア形成をサポートすることができるのと同時に、企業の成長に繋がる可能性もあります。
企業がポータブルスキルに着目するメリット
ポータブルスキルを持つメリットとして挙げられるのが、
- 質の高い採用
- 効率的な人材育成・スキルの向上
- 適材適所の人員配置
の3つが挙げられます。
質の高い採用
メリットの1つに質の高い採用をすることができるというものがあります。
採用活動を行うにあたって1つの指標になるのが、ポータブルスキルであると考えられています。
ポータブルスキルに着目して採用活動を行うことで、より質の高い採用をすることができるようになります。
専門的な知識や技術はもちろん重要ですが、コミュニケーション能力であったり課題設定能力、計画力などのポータブルスキルが備わっているかどうかを念頭において採用活動を行うことによって、様々な環境で活躍できる人材を獲得することが可能です。
知識や技術が豊富であったとしても、ポータブルスキルが欠けてしまっていたら、新しい環境に適応することができないだけでなく、持っているスキルを十分に発揮することができないリスクが高まります。
学歴や知識量から採用を行うのではなく、ポータブルスキルの有無を採用基準に組み入れることによって、ハイレベルかつ柔軟な思考を持つ人材を採用することができます。
効率的な人材育成・スキルの向上
メリットの2つ目に効率的な人材育成・スキルの向上が挙げられます。
ポータブルスキルに着目することにより、一層効率的に人材育成やスキルの向上を目指すことができます。
社員一人一人が持つポータブルスキルを把握することによって、個人個人にあった方法でレベルアップをすることができます。
加えて、社員も自身のポータブルスキルを意識することができ、能力の向上を自主的に行えるようにもなります。
適材適所の人員配置
メリットの3つ目が適材適所の人員配置を行うことができるというのが挙げられます。
人員配置をする上で、もっとも重要なのは業務上の成果であると考えられる方も多いと思いますが、ポータブルスキルも考慮することによって、数値化することができない個人の能力を知ることができます。
それだけでなく、ポータブルスキルは業種や職種を選ばないため、人事異動の際にも使える基準です。
多角的な判断基準を設けることによって、一人一人にあった人員配置をすることができるようになります。
ポータブルスキルを伸ばす方法
ポータブルスキルを伸ばすためには、
- 現状把握をする
- 伸ばすスキルを決めて効率的に鍛える
の2点がポイントになります。
現状を把握する
まずは、今の自分にどのスキルが足りていないのかを把握することから始めましょう。
数多くあるポータブルスキルを5段階評価し、評価によって今の自分は何ができていて、何ができていないのかを把握することが重要です。
可能であれば、身近な人に評価してもらい、もっと正確に現状把握を行うようにしましょう。
現状把握をすることで、今後どのようなスキルを伸ばしていくのかを決めることができます。
伸ばすスキルを決めて効率的に鍛える
現状把握が終わったら、次は伸ばすスキルを決めていきましょう。
ポータブルスキルは数十種類あり、全てを伸ばそうとするのは効率的ではありません。
今の自分に足りていないスキルの中から、優先順位を決めてから鍛えることで効率的に鍛えることができます。
優先度を決める際には「自分の強みを伸ばす」「仕事で成果を上げるために伸ばす」の2つのポイントを抑えて決めると良いでしょう。
効率よくスキルを伸ばすためには、優先度を決めてひとつずつ習得していくようにすることが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ポータブルスキルは、資格の勉強などとは違い、自分で意識することで習慣になり、習得することができるスキルがほとんどです。
どこに行っても、活躍することができる人材になるためにも、若いうちからポータブルスキルを身につけることを意識しましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。