今や私たちの生活やビジネスは、急速なテクノロジーの進歩とともに変化し続けています。
その中でも、「スマートシティ(Smart City)」という言葉を耳にしたことはありますか?
街全体が最新の技術でつながり、持続可能な社会を実現するスマートシティは、世界中で注目を浴びています。
今回の記事では、
- スマートシティとは何か
- なぜ推進されているのか
- 実現に必要な技術
- スマートシティの取り組み事例
について解説します。
また、中小企業がスマートシティに取り組んだ事例も紹介しているのでぜひご覧ください。
スマートシティとは
スマートシティという言葉は、2000年頃から使用されており、国土交通省では、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義づけています。
スマートシティとは、IoTやICTなどの最新技術を用いて、エネルギーや交通網等のインフラの質を向上することで、生活やサービスをより良くした人間が住みやすい都市のことです。
行政や企業が収集したデータを分析し、それを活かすことにより人々の生活の質を向上させている都市はスマートシティと呼ぶことができます。
また、IoT技術等の最新技術を用いて地域のサービスを向上し、課題解決をしながら利便性を高め、新たな価値を生み出すことを目的とした取り組みを行うことを「スマートシティ化」と表します。
スマートシティが推進される理由
スマートシティは、日本だけではなく、世界各国で推進されている取り組みです。
その理由として、世界規模で懸念されている将来的な人口増加と、都市部への人口集中が挙げられます。
現在の世界人口は77億人であり、30年後の2050人には97億人に達すると言われています。
約20億人の人口増加が原因となり、必要なエネルギー量と交通量が増加し、環境悪化や交通渋滞の問題が発生することが、世界的に懸念されているのです。
日本においては、既に人口減少や高齢化社会、都市部への人口集中が長年の社会問題として取り上げられていますが、スマートシティは、それらの問題を解決することを期待されています。
スマートシティを実現するための技術
IoT技術の進化により、これまで別の機能として働いていた基礎インフラや生活インフラ・サービスが、センシング技術、通信技術、情報技術、アプリケーション技術と連携することによって、スマートシティとして動き出しています。
例えば、スマートシティを実現するための技術として、以下のような例が挙げられます。
- 5Gや無線環境などの、情報伝達の基盤となる通信技術
- ビッグデータを収集、分析し、災害などの予想や情報共有などに役立てるデータ活用技術
- 加速度センサーや温度センサーなどのセンシング技術
- 自動運転やドローンなどの新しい応用技術
都市部の情報通信技術を整備することによって、これまで活用できていなかった街のデータを収集し、役立てることがスマートシティでは行われています。
IoT(モノのインターネット)
IoTは、様々な物理デバイスやセンサーがインターネットを介して相互に通信し、データをやり取りする技術です。
スマートシティでは、センサーデバイスが建物、交通システム、公共施設などに組み込まれ、データを収集・分析することで、都市の機能や資源の効率化を図ります。
例えば、ゴミ箱の空き容量や交通量などの情報をリアルタイムで把握し、効率的な運営やサービスの提供が可能となります。
ビッグデータ分析
スマートシティでは、膨大なデータが生成されます。
ビッグデータ分析は、このデータから価値ある情報を抽出し、都市の運営やサービスの改善に活用する技術です。
例えば、交通データや気象データを分析することで、交通渋滞の予測や効率的なルート案内が可能となります。
また、エネルギー使用パターンを分析し、省エネルギーの提案や需要予測を行うことも可能です。
人工知能(AI)
AIは、機械学習やディープラーニングなどの技術を活用して、人間のような知識や判断力を持ったシステムを構築する技術です。
スマートシティでは、AIがデータの分析やパターンの把握、予測、自律的な意思決定を行うことが求められます。
例えば、AIを活用して交通制御やエネルギー管理システムを自動化することで、効率的な都市運営が実現されます。
ブロックチェーン
ブロックチェーンは、分散型のデータベース技術であり、データの透明性、信頼性、セキュリティを確保することができます。
スマートシティでは、ブロックチェーンを利用して、電力の取引やエネルギー供給の追跡、市民の個人情報の保護などを実現することが可能です。
ブロックチェーンにより、データの改ざんや不正アクセスを防ぎ、信頼性の高い取引や情報の共有が可能となります。
スーパーシティ構想とは
スマートシティと似たような言葉で、スーパーシティ構想というものがあります。
日本政府は、2020年にスーパーシティ法と呼ばれる「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」を立案しました。
スーパーシティ法は、「まるごと未来都市」をコンセプトに掲げており、具体的には以下の3つの条件を具体像として提唱しています。
- 以下のような領域を広くカバーし、生活全般にまたがる。(少なくとも5領域以上)
移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全引用:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/190418/pdf/shiryou3-3.pdf
- 2030年ごろに、実現される未来社会での生活を加速実現する。
- 住民が参画し、住民目線で、よりよい未来社会の実現がなされるようにネットワークを最大限に利用する。
スマートシティ構想では、各分野が課題解決のために個別で取り組んでいました。
スーパーシティー構想は、それぞれの分野のデータを連携することで都市の機能を最適化し、人々の暮らしをより良くすることが期待されています。
人々の生活をより良くすることが期待されているスーパーシティ構想ですが、一方で住民の個人情報を一元管理する必要があるため、プライバシーの問題なども課題です。
スマートシティ
スマートシティを実際に導入している国内の事例
次に、国内で進むスマートシティの取り組み事例についていくつか紹介します。
以下の例は、実際に進行中のプロジェクトや取り組みです。
札幌市:IoTを活用した交通システムの改善
札幌市では、IoT(Internet of Things)を活用して交通システムを改善する取り組みが進められています。
交通量データや駐車場の利用状況などをリアルタイムに収集し、ドライバーに最適な経路案内や駐車場の案内を提供するシステムが開発されました。
これにより、交通渋滞の緩和や駐車場の効率的な利用が可能になり、中小企業の物流や移動における課題の解決に役立っています。
参考URL: 札幌市 スマートモビリティ推進サイト
横浜市:再生可能エネルギーの活用
横浜市では、再生可能エネルギーの活用を通じてスマートシティの実現を目指しています。
例えば、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進められており、中小企業もこれらのエネルギー源を活用することで省エネルギー化やCO2削減に貢献しています。
また、エネルギーの効率的な利用や需要と供給のバランスを調整するためのスマートグリッドも導入されています。
参考URL: 横浜スマートシティプロジェクト
名古屋市:データ活用による都市施設の運営最適化
名古屋市では、データ活用を重視したスマートシティの取り組みが進められています。
例えば、公共施設や道路網などの運営情報をセンサーで収集し、AIやビッグデータ解析を活用して効率的な運営計画を策定しています。
これにより、中小企業が利用する都市施設の利便性向上やコスト削減が図られ、経営効率の向上に貢献しています。
参考URL: 名古屋スマートシティ構想
スマートシティを実際に導入している海外の事例
シンガポール:網羅的なスマートシティの実現
シンガポールは、スマートシティの先進国として知られています。
都市全体をカバーする広範なセンサーネットワークやIoTインフラストラクチャの構築が進められており、交通システムの効率化、エネルギー管理、廃棄物処理などさまざまな領域でデータ駆動の解決策が実現されています。
また、シンガポールではデジタルアイデンティティやデジタルペイメントシステムなど、市民の利便性を高めるためのテクノロジーも活用されています。
参考URL: シンガポール スマートネーション
バルセロナ:市民参画を重視したスマートシティ
バルセロナでは、市民の参画を重視したスマートシティの取り組みが進められています。
市民がスマートフォンアプリを通じて都市の情報をアクセスしたり、提案やフィードバックを行ったりすることができます。
さらに、公共交通や公園の利用状況などのデータをオープンにし、市民がより良い都市環境を創り上げるための情報を提供しています。
このような取り組みは、地域の中小企業やスタートアップ企業が新たなビジネスチャンスを見つけるきっかけとなっています。
参考URL: バルセロナ スマートシティ
シドニー:データ分析に基づく都市運営の最適化
シドニーでは、データ分析を活用した都市運営の最適化が進められています。
人口密度、交通パターン、エネルギー利用などのデータを収集し、AIや予測モデルを活用して都市の効率性を向上させています。
さらに、スマートライトやセンサーなどのインフラストラクチャを活用して、公共安全や交通渋滞の監視・管理を行っています。
これにより、中小企業は効率的な物流やサービス提供を実現し、競争力を向上させることができます。
参考URL: シドニー スマートシティ
スマートシティ導入における課題
スマートシティは世界で注目されている取り組みである一方で、実際に事業化できている都市は少ないというのが現実です。
その原因として、以下のような理由が考えられます。
- 住民との合意形成の難しさ
- 収益化
- プライバシー保護の整備
住民との合意形成の難しさ
既存の街を基にして新しいものを作る「ブラウンフィールド型」のスマートシティ化において、大きな課題となるのが、地域住民との合意形成です。
地域住民の理解と参画を得ることができなければ、プロジェクトを進めることが困難になります。
加えて、スマートシティ開発の中心にヒトが居る「スマートシティ2.0」では、プロジェクトを進行する際に、地域住民を含めたディスカッションが重要になります。
しかし、日本では公の場でのディスカッションに慣れていない人が多いので、そういった点が問題視されています。
収益化
スマートシティの導入は、多くの分野においてさまざまな最新技術を用いるため、プロジェクトに参画した企業は、多くの利益を得ることができると考えられることもあります。
しかしながら、導入コストはいくらかかるのか、サービス利用料をいくらにすればユーザーが離れていかないのか、利用料が安すぎるとユーザーは残るが利益が少ない等の金銭面での問題がまだ多く残っており、マネタイズすることは簡単ではないというのが現実です。
プライバシー保護の整備
地域住民との合意形成の難しさと同時に考えられるのが、プライバシー保護の整備です。
昨今、個人情報の漏洩などで大きな問題に発展することも少なくはありません。
しかしながら、ニーズに合わせたより良い暮らしを手に入れるためには、利用者の行動や思考を知るために、多くの個人情報が必要になることは避けられないことでもあります。
利用者に納得してもらうには、より強固なプライバシー保護を整備し、多くの人に納得してもらう必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日々進化する最新技術を最大限に活用することで、私たちの暮らしは今よりもはるかに便利で、多様的なスマートシティに変化します。
一方、私たち国民はただ傍観しているのではなく、主体的に参画することが求められるようにもなります。
そのためには、私たちには何が必要で、何を求めているのかを自分自身で理解することが重要です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。