解決したい問題があり、頭を悩ませているものの、なかなか解決策が見えてこないというケースがあります。
もちろん課題自体が難しいこともあるのですが、「アイディアが不足している」という場面も多いのです。
アイディアが生まれてこない原因のひとつに、「思考が整理されていない」ということが挙げられます。
整理されていない思考は、同じことを何度も繰り返し検討しているだけで、堂々巡りに終始することがほとんどです。
この記事では、思考を明確に整理して視覚化し、課題解決のためのアイディア出しに非常に効果的な「マンダラチャート」という手法を解説します。
マンダラチャートとはなにか
マンダラチャートとは、一言で言えば「課題解決のための思考整理方法」です。
別の呼び方として、「マンダラート」や「曼荼羅シート」と呼ばれることがあります。
「曼荼羅(マンダラ)」は、仏教の曼荼羅模様を由来としており、中心から外側に向けて円状に図形を配置していくことで作られる模様です。
「マンダラチャート」は、中心のマス目に解決したい課題を配置して、課題を書いたマス目の周りに、課題に関連した語句を記入します。
この時点で、マス目は中心を含めて3×3の9マスとなります。
次に、この9マスのマス目のうち、中心以外のマス目をさらに外側に転記し、その転記したマス目を中心として新しいマンダラチャートを作ります。
これを繰り返すことで、ある課題に対して、その前提となっている課題の存在を分析できたり、様々な課題が入り混じっている状態を整理することが可能です。
マンダラチャートはどのようなときに活用できるか
何か解決したい課題がある際は、それに対しての解決策を列記していくという方法が、よく採用されます。
では、あえてマンダラチャートを使うのは、どのような状況でしょうか。
その答えは、「複数の要素や障害があり、自分の中で課題に対する解決策が整理しづらいとき」です。
マンダラチャートを活用したことが、世間的によく知られている著名人として、野球選手の大谷翔平氏が挙げられます。
大谷選手は、高校生時代に「今後、自分は将来的にどうなりたいのか」という大きな課題に対して、思考整理のためにマンダラチャートを活用しました。
「自分の将来のあるべき姿」という大きく、漠然とした課題には、複数の要素があり、それらの要素へのアプローチもまた多岐にわたります。
このような課題解決には、マンダラチャートの活用が効果的です。
新しいアイディアを出したいときにもマンダラチャートが有効
ある課題の解決方法を模索している状況で、課題に対する解決方法がいくつかはすぐに思いつくというケースもあります。
しかし、頭の中だけでアイディアを出していたとしても、ストックできるアイディアの数には限りがあります。
また、それぞれのアイディアに対して、裏付けやさらなる展開をしたい場合などには、やはり視覚的にも整理されているほうが分かりやすくなります。
さらに、頭の中だけで課題解決のアイディアを検討していると、既存のアイディアに執着してしまい、なかなか新しいアイディアが生まれにくいことがあります。
マンダラチャートに、実際に記載してみることで、目に入った文字からさらなる刺激を受けて、これまで思いつかなかった別のアイディアや解決策が発生することもあります。
このように、既存のアイディアを深掘りするだけではなく、新しいアイディアを生成する際にも、マンダラチャートは有効なのです。
アイディアをより精度の高いものにするときにもマンダラチャートが有効
マンダラチャートを活用する際には、課題とアイディアはそれぞれマス目に記入した語句によって表現されます。
ある課題を解決するために記入したマス目は、そのマス目自体を中心としてさらに新しいマンダラチャートを生成することができます。
このようなマンダラチャートの特徴は、既存のアイディアを、より精度の高いものにする、ブラッシュアップする際にも有効です。
多くの場合、アイディアは思いついた時点で、頭の中で固定されてしまい、一つ一つのアイディアに対する裏付けや、関連する要素への検討が不十分となってしまいます。
会議やプレゼンの場で、新しいアイディアを共有したときに、「そのアイディアの根拠は?」といった質問や、「関連する部署に確認はとったの?」という厳しい質問が寄せられることがあります。
社会人にとって、アイディアというものは、一人で実現できるものではありません。
部署やチーム全体、場合によっては、会社全体を挙げてそのアイディアに向かって活動をしていくことで、実現することができます。
思いついたアイディアを現実的なものとしてチームや部署に展開する際に、根拠や関連要素を整理する場面でも、マンダラチャートは非常に効果的なのです。
マンダラチャートを使ったアイディアの共有とコラボレーション効果
画期的なアイディアや独創的な取り組みを思いついた場合には、それを社内で共有するというシーンがあります。
そのようなシーンで、マンダラチャートが効果的に活用できることは、先の項目でも触れました。
では、マンダラチャートを使っている人物が、自分以外にも存在するとしたら、アイディアに対する検討には、どのような効果がもたらされるでしょうか。
マンダラチャートは、作成する人によってまったく異なる形が、出来上がることに意味があります。
それぞれの人の着眼点、重視しているポイントがそのままマンダラチャートに現れます。
加えて、その人自身の経験や、知識の深い領域もマンダラチャートを見れば、一目瞭然です。
組織で事業や企画を行う際には、それぞれの弱点を補い、強みを活かすことが重要となります。
それぞれが作成したマンダラチャートを見比べることで、「自分はこの領域についてはよく研究できているが、別の部分ではこの人のほうが深掘りできている」というケースもあります。
また、「この要素のマンダラチャートにおいては、数人の意見を集めてもうひとつマンダラチャートを作ってみよう」というように、チームによるマンダラチャートの作成を行うことで、よりよいコラボレーション効果を発揮できるケースもあります。
より手軽にマンダラチャートを活用するには
マンダラチャートを利用して、社内やチームのアイディアを整理しようとするとき、必ずしもマス目を用意する必要はありません。
マンダラチャートを作成する人物に、付箋をまとめて渡したり、ホワイトボードを使ってマンダラチャートを作ることも可能です。
ビジネスの場では、新しい分析手法や会議の場を仕切るようなことが敬遠されがちです。
このようなとき、「カジュアルな雰囲気」として付箋を活用することで、マンダラチャートという言葉の説明をしなくても、「とにかく思いつくことを次々と書いていってください」というだけで要素が出来上がります。
重要なのは「思いついたアイディアをとにかく書き出して図に当てはめてみる」こと、そして「それぞれの要素をあとから深掘りできる」ことです。
マンダラチャートを使うために大きな紙を用意する必要はありません。
付箋やホワイトボードを活用して、その場でマンダラチャートを作り、作成したマンダラチャートを写真などに撮って保存するというのもよい手段でしょう。
まとめ
思考の方法は人それぞれです。
課題解決のための思考や分析においても、やはりその人の「考え方のクセ」というものは無視できません。
アイディアをたくさん出そうとする人がもいれば、出てきたアイディアが実現可能かをすぐに考え却下してしまう人もいます。
また、アイディアとして表現する前に、アイディアを精査しないと、発言できなくなってしまう人もいます。
マンダラチャートは、「思考を視覚化する」ことと、「視覚化したものを分析する」際に大きな効果をもたらします。
自分ひとりで、作成するマンダラチャートにも、当然大きな効果がありますし、作成したマンダラチャートを使って議論をしたり、コラボレーションをすることで、さらなる展開が見えることもあります。
アイディア出しや会議が硬直してしまった際に、マンダラチャートを活用してみることで、よい結果につながるケースは多いといえます。
マンダラチャートの導入を検討してみてはいかがでしょうか。