皆さんは「ABC分析」という言葉を知っていますか?
聞いたことはあるけど、詳しい内容が良くわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、
- ABC分析とは
- ABC分析の目的とメリット
- ABC分析の活用シーン
- ABC分析の手順
- ABC分析の注意点
- ネットショップにおけるABC分析
について解説します。
ABC分析とは
ABC分析とは、決められた指標のなかから重視する「評価軸」を決めて、分析したいデータ群の中にあるデータを重要度が高い順にABCのグループに分類して管理する方法です。
例えば、「在庫管理」におけるABC分析では、商品群を「売上」という評価軸をもとに分類し、売上貢献度が高い順にA⇒B⇒Cとランク付けを行います。
具体的には、Aグループは多くの利益をもたらす可能性が高く、販売の機会を逃して損失になることがないように多めに在庫を確保しておくことが基本的になるグループのことを言います。
Bグループは、Aグループほどではないけれど利益をもたらしてくれる可能性があるため在庫数の現状維持することが基本的になるグループ、Cグループになると利益をもたらす可能性が低い商品であるため、在庫を減らすか撤退するかが基本的なスタイルになるグループです。
このように、Aグループにランク付けされた商品が最も優先度が高い商品であり、常に在庫が切れないように管理する必要があります。
逆に、Cグループにランク付けされた商品は、在庫が切れてから発注する程の優先度になります。
ABC分析は「パレートの法則」を基にしている
ABC分析は「重点分析」とも呼ばれる分析方法のひとつであり、その手法は「パレートの法則」という統計モデルの考え方が基になっていると言われています。
パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(1848~1923)が提唱した「80:20の法則」が基になっており、その内容は「経済活動における数値のほとんどは全体を構成する要素の一部が生産している」ということを意味します。
先程の「売上」を評価軸にしたABC分析の場合、全体の売上の8割を生み出しているのは、売上上位であるAグループに分類される2割の商品であるという事例が該当します。
一方で、残りの2割の売上は、BグループとCグループに属する8割の商品が生み出しているということです。
ABC分析は応用範囲が広く、売上やコスト、在庫などの数値化できるデータであれば何でも分析可能であり、重要度が高い順にランクすることによって、自社の課題を可視化することができ、客観的な分析が可能になります。
加えて、その分析結果をもとに、業務の改善や効率を見直して、適切な対処をすることができます。
ABC分析の目的
ABC分析の目的はさまざまですが主に以下の2点になります。
- 店舗の実態に合った経営戦略をたてる
- 商品やサービスのデータを分析することで、現状を可視化して、優先的に解決するべき課題を発見し、その課題をもとに事業の効率化を図り、経営力や競争力を高める
ABC分析を行うことで、優先度の高い商品や顧客層を把握して、それらに合った戦略を立てることができます。
具体的にいうと、優先度が高い商品を把握することで、その商品を多く売る戦略を立て売上げアップを狙うことが可能になります。
それだけでなく、ABC分析は商品の出入りが激しい事業との相性が非常に良いため、飲食店やオンラインショップでも活用することができます。
現在でも、こういった分析を行わずに、事業者の経験や勘で商品の仕入れや販売を行っている企業は少なくありませんが、しっかりと分析をして適切な戦略をたてることで、他社と差をつけることが可能になります。
ABC分析のメリット
ABC分析のメリットとして、
- サービスや製品の重要性を把握できる
- 在庫管理の指標となる
- ターゲット層を把握することができる
が挙げられます。
サービスや製品の重要性を把握できる
ABC分析の最大のポイントは、様々な項目で分析から比較までを行うことができるだけでなく、簡単で合理的に製品やサービスの重要性を把握することができる点です。
ABC分析を行い現状を可視化することで、販売に力を入れるべき製品をすぐに知ることができ増産のタイミングやコストをコントロールすることができます。
Aランクに分類される売れ筋商品であれば顧客の目に入る場所に商品を陳列したり、陳列する場所を拡大したりなどの工夫をすることができます。
反対にCランクに分類される商品であれば、陳列する場所の縮小などの行動を取ることができます。
Cランクの商品の売り上げが伸びないということであれば、新規の発注数や在庫数を減らしたり、別の商品に変更するという施策を実施することが可能です。
在庫管理の指標になる
ABC分析は、在庫管理を行うことにも活用することができます。
Aランクの商品の確保を最優先に考え、商品が欠品するような状況にならないようにする必要性があります。
CランクだけでなくBランクの商品の在庫数を減らし、浮いた予算をAランクの商品確保に使うといった方法を取ることが可能です。
ターゲット層を把握することができる
売れ筋の良い商品を明確にするだけではなく、商品を良く購入する年齢層も同時に知ることができます。
自社のサービスや商品を購入してくれるターゲット層を理解することによって、より効果的な広告や宣伝を行うことが可能になります。
ABC分析の活用シーン
ABC分析は、企業の現状を把握して可視化できるため、さまざまなシーンで活用することができます。
ここでは、2つの活用シーンをご紹介します。
活用例1 文房具店
Aグループ(シャーペン、ノート)
Bグループ(鉛筆、ボールペン、消しゴム)
Cグループ(のり、ハサミ)
売上やコスト等のさまざまなデータを基に商品のグループ分けを行うことで、Aグループの商品の欠品が起きないような在庫管理を行うと同時に、Cグループの過剰な仕入れを防ぐことができます。
活用例2 飲食店
売れ筋メニューを可視化するためにABC分析を実施して、各メニューの売上高と販売数を基に重要度が高い順にグループ分けを行います。
分析結果のAグループとBグループのメニューは商品の質と在庫管理を強化し、Cグループのメニューは割引やクーポン配布などによる売上の改善を図ります。
そして、「メインメニュー」「サイドメニュー」「ドリンク、デザートメニュー」などの種別ごとに分析を行うことでさらに細かく可視化することができます。
細かい分析を行ったことで以下のような対策をとることもできます。
- 広告強化、商品の増量、店内の目立つところに配置するといったマーケティング戦略の強化
- Aグループの商品は欠品が発生しないように、Cグループは過剰仕入れが発生しないような在庫管理の強化
- 人材とそれぞれの商品に費やす時間配分の改善
- ボリュームディスカウントのもちかけや取引先の変更などのコストの見直し
ABC分析において、重視する指標は、商品別の売上以外にも、顧客別売上や生産性コスト、販売コストでも応用することができます。
ABC分析の手順
では、実際にABC分析を行う場合、どのような手順で行うのでしょうか。
ここでは、実際にGoogleスプレッドシートを用いて具体的に解説します。
Googleスプレッドシートがない方は、Excelでも代用可能です。
手順1:ベースになるリストを作成する
スプレッドシートのA列に「商品名」B列に「販売価格」C列に「販売個数」D列に「売上高」E列に「累積売上高」F列に「売上構成比」G列に「ランク」という項目をそれぞれ作り、A列とB列にそれぞれ値を入力します。
この段階では、順番は気にせずに入力して大丈夫です。
手順2:自動計算するように数式を入力する
次に、売上などの金額を自動計算するように、数式を入力していきます。
まずは、商品に対しての「売上高」の項目から。下記の表であればD2のセルに、「=SUM(B2*C2)」と入力して列全体にコピー・ペーストします。
すると、販売個数を入力すれば「販売価格×販売個数」の値が売上高のセルに自動計算されます。
販売個数を、入力して売上高を算出したら売上高の列を「降順」にソートしておきましょう。
そうすることによって、売上高の高い順に並び替えることができます。
次は「累計売上高」です。
この部分には「=SUM(D2,E1)」と入力して、先程と同様に累積売上高の列全体に、コピー・ペーストします。
下に行くにつれて売上金額がプラスされていき、一番下になると売上金額の合計を算出できます。
最後に「売上構成比」です。
売上高の合計に対しての割合を算出していきます。
一番下になると100%になります。ここには「=E2/$E$6」と入力します。
このときに売上構成比の表示形式を「%」表示にすることを忘れないようにしてください。
上記の表の売上構成比をもとに、ABC分析を行っていきます。
今回はA、B、Cのランク分けの基準は、以下のように設定します。
Aランク ⇒ 売上高の売上構成比0%〜70%未満
Bランク ⇒ 売上高の構成比70%〜90%
Cランク ⇒ 売上高の売上構成比90%〜100%
以上がABC分析を行う手順です。
今回の例では「売上」を評価基準にして、ランク分けを行ったので、Aランクに該当する商品はさらに売上を伸ばす戦略を考え、逆にCランクに該当する商品は過剰仕入れに注意して在庫管理を行う対策ができるようになります。
ABC分析の注意点
さまざまな場面で応用できるABC分析ですが注意点もあります。
ここからは、ABC分析を行う際の注意点を解説します。
「一過性の商品」を考慮して分析結果をランク付けする
商品のラインナップには定番商品だけではなく、一定期間だけ売上が大きく伸びる「一過性の商品」も多くあります。
特に、テレビや雑誌で取り上げられたり、流行の商品は特定の期間だけ売上が急増することが見込まれます。
そのような一過性の商品は、全期間の分析では、下位ランクに該当するかもしれませんが、一時的に、Aグループに分類して在庫がなくならないように管理する必要があります。
ABC分析を行う際は、全体の分析結果と、一過性の商品の分析結果というように2回分析することがオススメです。
加えて、一過性の商品であっても、人気が安定することによって、定番商品になり得る可能性があることも忘れないようにしなければなりません。
見せ筋商品、季節商品、新商品は売上構成比が小さくても重要度が高い
一過性の商品と同様に「見せ筋商品」や「季節商品」そして「新商品」にも注意しなければなりません。
見せ筋商品
見せ筋商品とは、客寄せ効果を期待して取り扱う商品で、仮に単体の売上が低かったとしても存在価値があります。
季節商品
季節商品も、期間全体の売上構成比が小さかったとしても、短期間で大きな売上になるため重要度は高いです。
また、商品同士の関連性も考える必要があり、Cグループの商品であってもAグループとの関連性が高い場合は、重要度が上がります。
流行商品
プロモーションに力を入れている新商品も、今後期待されている売上をまだ達成していないだけの可能性があるため、その点も考慮しなければなりません。
仮に、現在の売上構成比が小さくても、新商品の重要度は高くなる可能性があります。
上記のような一時的に売れ行きが伸びている商品を、他の商品と同じ条件で評価して上位にランク付けしてしまうと余剰在庫に繋がる可能性があります。
例えば、夏の季節に売れ行きが良いからといってアイスを大量に仕入れたとしても、夏が過ぎたら売れ行きはもとに戻り在庫が余ってしまいますよね。
逆に、今後利益が出る可能性が高い新商品を売上構成比が小さいからと言って低いランクに分けてしまうと、その後の収益に繋がりにくくなります。
そのため、ABC分析を行う際のランク分けはさまざまな条件を考慮して分析をする必要があります。
ネットショップにおけるABC分析
ABC分析は、企業の経営課題を見つける手段として非常に便利な分析方法です。
しかし、近年ではABC分析で優先順位が低いCグループにランク付けされた商品に敢えて注力して、ニッチ路線で売上を伸ばす企業もあります。
例えば、ECショップの場合は、店頭に並ぶことの少ない商品を数多く揃えるロングテール理論を採用して強豪と差別化する企業もあります。
ネットショップの場合は、陳列スペースを気にする必要もなく、ニッチな商品であってもコンスタントに売れ続ければ、企業に貢献できるという点が、ポイントです。
したがって、ネットショップの場合には、Cグループに該当する商品全てが、悪いというわけではなく、どのように商品を売り出していくのかを、決めた上で商品のランクを判断する必要があります。
まとめ
ABC分析の目的や手順、注意点などを解説してきましたがいかがだったでしょうか。
ABC分析を用いて、商品やサービスのデータを分析することで、企業の現状を可視化することができ、優先的に解決すべき課題を発見し適切な戦略をたてることができます。
ABC分析を、行ったことがないという方も、導入してみてはいかがでしょうか。