似たようなクオリティを持つ商品があふれるようになり、モノは作れば売れる時代から、どのようにして売るか、消費者に届けるかということが重要視されるようになっています。
そのため、どの業界や業種においてもマーケティング戦略が欠かせません。
しかし、実際にマーケティング戦略を立案しようと思っても方法がわからなかったり、具体的な内容を問われると答えられないということはありませんか?
マーケティング戦略を成功させるためには、ただ施策を立案するだけではなく、市場・競合他社の分析や、ターゲットの分析、顧客像の明確化など、さまざまな要素を分析していく必要があります。
しかし、ただ集めた情報を並べただけでは整理できず分析が難しいと感じる人もいるでしょう。
そのような方には、マーケティング戦略のフレームワークを活用することをおすすめします。
フレームワークを活用すれば、わかりやすく簡単に情報を整理し、効果的な施策を作ることにつながります。
本記事では、マーケティング戦略の立案の流れはもちろん、重要な理由や役立つフレームワークまでを解説するので、マーケ担当者の方や経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
- マーケティング戦略とは
- マーケティング戦略が重要な理由
- マーケティング戦略立案の流れとポイント
- マーケティング戦略のフレームワーク
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、商品やサービスが売れる仕組みをより具体的にして「誰に」「どのような価値を与えて」「どれくらいの価格で」「どんな販売方法で」商品を提供するのかを決定することです。
似たような商品やサービスが増えている昨今では、競合との差別化を図らなければ、市場で生き残れません。
そのため、自社が他社と比べてどんな価値があるのか、その価値をどんな方法で顧客に提供するかを考えていく必要があります。
そして、新規顧客の獲得だけではなく、リピート客の獲得も目指していきます。
マーケティング戦略は、新規事業成功のためにも、既存の事業を継続させるためにも必要なものなのです。
マーケティングとは?
まず、マーケティング戦略におけるマーケティングとはどのような意味を持つのでしょうか?
マーケティングとは一言で表すと、「売れるしくみ」のことです。
市場においてどのようなニーズがあるかを理解し、そのニーズに合う商品を作り、それをどのようにして消費者に届けて、購入してもらうかを考えます。
販売したい商品があっても、そもそも顧客が求めている商品でなければ売れませんし、適切に宣伝を行わなければ顧客にその商品を見つけてもらえませんよね。
そのため、「顧客が求めているものは何か」「どのように商品・サービスを宣伝していくか」ということを考える必要があります。
マーケティングは、商品やサービスを提供するにあたって欠かせない要素なのです。
マーケティング戦略が必要な理由
なぜ、マーケティング戦略を立てることは重要なのでしょうか?
今までの経験から、うちの会社ではマーケティング戦略はしなくても大丈夫かな。
- IT技術の発展による販売方法の多様化
- 経営資源を効率的に利用できる
- 説得力のある交渉ができる
IT技術の発展による販売方法の多様化
従来であればテレビなどのメディアを通して企業やメーカーは、不特定多数の消費者に商品を認知してもらい販売を促進していました。
そのため、メディア等で広告を流せば売れる時代でもありました。
しかし、近年のIT技術の発展に伴い販売方法が多様化され、企業やメーカーは特定の個人へ直接商品をアピールできるようになってきています。
加えて、便利になる半面、消費者の悩みが多様化してきているため、従来の販売方法では消費者の悩みを解決できなくなってきています。
その結果、企業によって届けたい消費者を明確にし、ターゲットにあった販売手法の確立が求められるようになってきたため、マーケティング戦略が重要視されるようになりました。
経営資源を効率的に利用できる
マーケティング戦略を行うことで、効率的に経営資源を利用できます。
日本商工会議が2022年に行ったアンケートによると、中小企業の65%が「人手が不足している」と回答したといいます。
このように人手不足の企業が多い中、ヒト・モノ・カネといったリソースは無駄にしたくありませんよね。
マーケティング戦略を行う際には、「市場のニーズ」、「市場の動向」、「自社の顧客」、「他社の顧客」など、業界や自社、他社について細かく分析を行います。
従来では、今までの経験やセンスなどの直感に任せていた企業も多かったと思います。
しかし、そのような直感に頼る方法では、効果的なマーケティング戦略が立てられず、無駄な手間やリソースを割く結果となってしまいます。
そのため、自社の顧客のニーズや市場のニーズに合った商品やサービスを提供し、効率的に経営資源を利用するためにも、マーケティング戦略を立てることが必要なのです。
説得力のある交渉ができる
マーケティング戦略を立てることで、説得力のある交渉ができます。
マーケティング戦略を立てる際には、自社、他社、業界、市場などについて細かく分析を行います。
分析を行うことで、他社や業界、市場についての理解が深まるだけでなく、業界や市場における自社特有の強みや、立ち位置もはっきりさせることができます。
そのため、顧客や消費者との交渉において、自社の強みや魅力について根拠のある話をすることができ、説得できる可能性が高まると言われています。
▼もっとマーケティング戦略を実践的に知るなら▼
マーケティング戦略立案の流れとポイント
実際にマーケティング戦略はどのようにして立案を行えばいいのでしょうか?
5つのステップに沿って解説します。
- 市場、社内の環境分析
- ターゲティング
- ポジショニング
- バリュープロポジション
- マーケティングミックス
市場、社内の環境分析
自社の商品が市場において、どのような立ち位置にいるのかを分析します。
市場において「消費者はどのようなニーズを掲げているのか」や市場のトレンドなどの状況をはじめとする外部要因、自社の商品にはどのような強みや弱みがあるのかなどの内部要因の分析を徹底して行うことが重要です。
環境分析では、3C分析やSWOT分析などのフレームワークを使用することで、効率よく分析を行えます。
それぞれのフレームワークについては後述します。
販売ターゲットの明確化(ターゲティング)
環境分析が完了したら、商品を届けるターゲットを明確にします。
これをターゲティングといいます。
ターゲティングを行うことで、顧客像を明確にして、その顧客に効果的な戦略を考えることができます。
そのため、ターゲティングにおいて、より詳しくターゲット設定を行うことは重要であり、マーケティング戦略の立案にとって非常に重要な項目なのです。
例えば、ダイエット商品を取り扱っている際にターゲットを「50代女性」とした場合と「50代専業主婦」とした場合では、戦略も売り上げの結果も異なります。
前者の場合は、50代の女性ということでターゲットの幅が広く、商品を不特定多数にアピールする必要があり、広報の手間と時間がかかります。
一方後者は、50代の女性という点は一緒ですが更に専業主婦という要素を加えてターゲットを明確にしています。
その結果、専業主婦が見る時間帯等や媒体で広報をするなど具体的な方法を検討が可能です。
ターゲティングをする際に用いることが多いのはSTP分析というフレームワークです。
商品やサービスのブランディングやマーケティング戦略を考える上で「ターゲティング」は重要な指標の1つと言われています。 なぜなら、狙ったターゲットに自社の製品やサービスが届かなければ、商品が売れないからです。 つまり、マーケティ[…]
他社と差別化ポイントの検討(ポジショニング)
ポジショニングとは、同様の商品を販売する企業が多い市場の中で自社がどのようなポジションについて戦略を展開していくべきかを考案し決定することです。
また、消費者からどのような企業として認知されたいかを考える必要があります。
ポジショニングの際には、「市場、社内の環境分析」で判明した自社の強みを生かすようなポジショニングを定めることが多いですが、自社の弱みをさらけ出してポジショニングを行う戦略も存在します。
ターゲティングと同様に、STP分析が使用されることが多いです。
自社の製品やサービスの「価値」や「オリジナリティ」を構築する際の戦略として「ポジショニングマップ」が挙げられます。 自社のビジネスを拡大していくためには、市場でどのようなポジショニングをするかが非常に重要です。 また、競合のポ[…]
消費者が受け取る価値を定める(バリュープロポジション)
ターゲティングとポジショニングが決まったら、消費者にどのような価値を提供するかを考案します。
これをバリュープロポジションといい、商品の品質、性能等が消費者にとってどのような価値をもたらすのかを認知してもらうためにとても重要です。
さらに重要なのが、「競合他社が提供していない価値」と「自社の強み」を組み合わせることです。
その領域を見つけることで、他社よりも優位になります。
戦略の決定(マーケティングミックス)
消費者に提供できる価値が決まったら、顧客のことを考え抜いてどのような手法で販売していくのかなど要素を組み合わせて、戦略を決定します。
ここで重要なのが、今まで考えてきた要素が矛盾しないようにすることです。
例えば、ダイエット商品を「50代専業主婦」をターゲットにして販売しようとしているのに、広報の方法を深夜にしたり、商品の値段が高額すぎるなどでは、売れるものも売れなくなります。
そのため、要素同士を組み合わせた際に矛盾が生まれないように注意してください。
マーケティングミックスでは、4P分析がよく使われます。
マーケティング戦略に役立つフレームワーク
マーケティング戦略をより効率的に行うためにフレームワークの活用は欠かせません。
ここでは、代表的なフレームワークを5つ紹介します。
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
- PEST分析
- STP分析
- 5フォース分析
- バリューチェーン分析
- PPM分析
- AISAS
デザイン新聞では、マーケティング戦略をわかりやすく理解するためのダウンロード資料を配布しています。
ダウンロード資料では、マーケティング戦略によく使われる
- 3C分析
- 4P分析
- 5フォース分析
- PEST分析
- AISAS
以上5つの分析方法のフレームワークをわかりやすく解説しています。
興味のある方はこちらからご請求ください!
3C分析
- 「Customer(市場環境)」
- 「Competitor(競合他社・商品)」
- 「Company(自社)」
の3要素から頭文字をとった言葉で、それぞれの視点から現状の分析を行うフレームワークです。
顧客が求めるニーズや、競合他社の立ち位置や対応状況、自社の強みや弱みを分析する際に役立ちます。
6C分析
自社の顧客が企業の場合、自社の業界の現状だけではなく、顧客の業界における市場環境・顧客の競合他社・顧客の自社環境についても合わせて分析する必要があります。
そのため、企業を顧客とするBtoBマーケティングでは、6C分析とも呼ばれています。
3C分析の例
自社が、飲食事業で新たにカフェチェーンを立ち上げるとします。
その場合、以下のような調査を行います。
市場環境(Customer)
- カフェの市場規模
- どんな店が求められているか
- どんな店が売れてどんな店が減少しているか
- 顧客がどんなことに不満を持っているか
- 顧客がどんなことに満足しているか など
競合他社・商品(Competitor)
- 競合他社の規模数や売上
- 競合他社の価格設定
- 競合他社の商品の種類や品数
- 競合他社の商品の品質
- 競合他社の運営方法 など
自社環境(Company)
- 自社のコンセプト
- 自社の価格設定
- 自社の商品の種類や品数
- 自社の運営方法
- 自社の強み
- 自社の弱み など
4P分析
- Product(商品・サービス)
- Price(価格)
- Place(場所)
- Promotion(宣伝)
の4つの視点で、「何を」「いくらで」「どこで」「どのようにして売るのか」を考えるためのフレームワークです。
4P分析の例
自社が、飲食事業で新たにカフェチェーンを立ち上げるとします。
その場合、4P分析では以下のような情報が必要になります。
商品・サービス(Product)
顧客のニーズに合った商品は何か?
- 商品の品質
- 商品の種類
- ブランドイメージ
- パッケージデザイン
など
価格(Price)
利益が残る価格設定はいくらか?
- 定価
- 割引の方法
- 支払い方法
など
場所(Place)
どのように販売するか?
- 店舗の場所
- テイクアウト
- 通販
など
宣伝(Promotion)
どのようにして認知度を上げて、自社のイメージを伝えるか?
- インターネット広告
- SNSの使用
- チラシ
- 販促商品
など
SWOT分析
自社の内部要因となる、
- 「Strength(強み)」
- 「Weakness(弱み)」
そして、外部要因となる、
- 「Opportunity(機会)」
- 「Threat(脅威)」
に分けて分析を行うフレームワークです。
それぞれの視点から自社の様々な要因を客観的に整理したいときに役立ちます。
SWOT分析の例
自社が、飲食事業でカフェチェーンを行っているとします。
その場合、SWOT分析をすると次のようになります。
強み(Strength)
内部環境におけるプラス要因は、
- 価格帯
- 立地
- 店舗数
- 商品開発力
などが挙げられます。
弱み(Weakness)
内部環境におけるマイナス要因は、
- 低品質なイメージがついている
- パッケージデザインが古い
- リピート率が低い
などが挙げられます。
機会(Opportunity)
外部環境におけるプラス要因は、
- 低価格志向
- 個食が一般化している
などが挙げられます。
脅威(Threat)
外部環境におけるマイナス要因は、
- 競合店の増加
- コンビニのコーヒーの品質
- 健康志向が高まっている
- 外食の機会の減少
などが挙げられます。
このようにSWOT分析で各要因を洗い出し、課題や現状を把握したら、クロス分析を行っていきます。
クロス分析では、各要因をかけ合わせ、それぞれがどのように影響し合うかを発見します。
PEST分析
外部要因となる
- 「Politics(政治的要因)」
- 「Economy(経済的要因)」
- 「Society(社会的要因)」
- 「Technology(技術的要因)」
の4つを分析して、自社に影響を及ぼす要因を予測するためのフレームワークです。
外部要因を洗い出すことで、リスク管理をしっかりと行い自社への影響を最小限に押さえるために役立ちます。
PEST分析の例
自社が、飲食事業でカフェチェーンを行っているとします。
その場合、PEST分析を行うと以下のようになります。
政治的要因(Politics)
- 新型コロナウイルス蔓延によって緊急事態宣言が発令された
→ 外出が減り、外食する機会が減った
経済的要因(Economy)
- 消費税増税
→安価なものが好まれる、テイクアウトの一般化
社会的要因(Society)
- SDGsが普及
→プラスチック容器を減らすなど、サステナブルな活動が好印象を与える
技術的要因(Technology)
- 認知ルートが多様化した
→SNSやアプリを活用している企業が多い
STP分析
- 「Segmentation(市場の細分化)」
- 「Targeting(ターゲットの設定)」
- 「Positioning(自社のポジションの明確化)」
の流れで行うフレームワークです。
市場を細分化して、自社が狙うべき立ち位置やまだ競合が参入していない市場を探して、競合他社との位置関係を明確にします。
重要なポイントは、企業視点ではなく消費者視点で分析を行うことです。
STP分析の例
自社が、飲食事業で新たにカフェチェーンを立ち上げるとします。
その場合、STP分析をすると次のようになります。
市場の細分化(Segmentation)
- 男女
- 20代〜30代
- 独身のOLやサラリーマン
ターゲットの設定(Targeting)
- 会社終わりに一人で買い物や外食をする人
自社のポジションの明確化(Positioning)
- 競合は大手カフェチェーンのタリーズ
- 価格とおひとり様向けの内装で差別化する
5フォース分析
- 市場における競合他社の脅威
- 新規参入者の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 代替品の脅威
という自社にとって脅威になる5つの要素の関係性を分析するフレームワークです。
この5つの要素の関係性と、それぞれの関係性が自社にとってどのくらいの脅威となるのかを考えます。
5フォース分析の例
自社が大手カフェチェーンだとすると、5フォース分析をした場合以下のようになります。
市場における競合他社
- スターバックス、タリーズ、サンマルク、ベローチェなど
→脅威は少し大きい
新規参入者
- カフェチェーンの売上は大手の何社かで占められている。
- これから新規参入するのは困難
→脅威は小さい
売り手の交渉力
- 他のカフェチェーンと比べて、低価格で高品質なものを使用している
- 食材の高騰や、国際情勢などの影響を受けやすい
→影響は少し大きい
買い手の交渉力
- 買い手は、自社に対して品質の高さや居心地の良さを求めている
- 他の大手カフェチェーンとの住み分けができている
→影響は小さい
代替品
- コンビニのコーヒーが低価格で高品質になっている
→影響が大きい
バリューチェーン分析
自社の製品が顧客に届くまで、どのように価値が繋がっていくのかということを分析します。
自社で行っている事業活動のうち、どの部分で顧客へ与える価値を発生させているかを考え、他社と差別化を図る強みを見つけることができます。
PPM分析
自社で行っている事業を
- 花形(Star)-市場成長率、市場占有率の高い事業
- 金のなる木(Cash Cow)-市場成長率は低いが、市場占有率の高い事業
- 問題児(Problem Child)-市場成長率は高いが、市場占有率の低い事業
- 負け犬(Dog)-市場成長率も市場占有率も低い事業
の4つに分類し、リソースをどこにどれだけ配分するかを考えるためのフレームワークです。
自社の投資配分だけでなく、他社の成長率との差も可視化することができます。
AISAS
- Attention(注意)-商品・サービスを知る
- Interest(関心)-商品・サービスに意味を見出し、興味を持つ
- Search(検索)-商品・サービスについて調べる
- Action(行動)-商品・サービスを購入する、申し込む
- Share(共有)-商品・サービスについての感想、体験を共有する
という5つに分け、顧客が商品・サービスを認知してから行動するまでの流れを整理したフレームワークです。
顧客がこの5つの行動に至るには、それぞれ自社でどのような活動を行ったらいいか、目標や具体的な施策を考えるのに役立ちます。
▼もっとマーケティング戦略を実践的に知るなら▼
まとめ
消費者のニーズが多様化してきている現代。
商品をより効率的に消費者に届けるためには、企業それぞれのマーケティング戦略が重要になって来ています。
やみくもに戦略を立案するのではなく、5ステップに沿って取り組むことで無駄のないマーケティング戦略の立案が可能です。
また、フレームワークを活用することで今までは考えつかなったような要因が発覚したり、消費者ニーズに気づく可能性もあります。
しっかりとしたマーケティング戦略を立案して、自社の成長を目指しましょう。