取引先相手や、社内でのコミュニケーションにおいて、コミュニケーションが上手くいかず問題の解決に至らなかったという経験がある方は少なくないでしょう。
そういったことは、筋道が立てられず根拠のない理論ばかり飛び交ってしまうことが原因で起こります。
論理的思考(ロジカルシンキング)は、根拠に基づいて、物事を筋道立てて考える思考法です。
論理的思考は、問題解決力やコミュニケーション力のアップに役立つと言われています。
ですので、論理的思考を身につけることができれば、社内外での問題解決や、取引先とのコミュニケーションやプレゼンテーションにおいても大いに役立つことでしょう。
しかし、論理的思考をどうやって身につけたらいいかわからない方も多いかと思います。
この記事では、論理的思考の概要に加えて、論理的思考の鍛え方や、論理的思考を活用したフレームワークについても解説します。
ぜひ参考にしてください。
論理的思考(ロジカルシンキング)とは
組織でよく使われる「論理的思考」や「ロジカルシンキング」は、「伝えたい事を、根拠に基づき、筋道立てながら考えること」を指す言葉です。
自分の伝えたい事を感情のまま伝えるのでなく、まずは自分の中で整理し、矛盾や脚色のない筋道を立てる思考法です。
例えば、組織のメンバーが同じ目的のために行動をしていても、自分が思っている事と、他のメンバーが思っていることが異なるケースが多いです。
特に最近はリモートワークで意思疎通が図りづらい状況下のため、組織のメンバーひとりひとりの考え方がズレることなく目的を達成するためにも、論理的思考(ロジカルシンキング)は必要不可欠と言えます。
論理的思考の基本となる考え方
論理的思考は、
- 演繹(えんえき)法
- 帰納法
の二つの考え方が土台となっています。
論理的思考を身につけたいと考えている方は、この二つについてもしっかり理解しておくと良いでしょう。
演繹(えんえき)法
演繹法は、いわゆる三段論法のようなものです。
前提となる複数の事実を足して、新しい結論を生み出すという方法になります。
言葉で説明されても少し難しいかもしれません。
例を出して説明しましょう。
- マーケティング活動を適切に行うことで、知名度が向上し、顧客の興味を引く。
- 質の高い製品やサービスを提供すると、顧客の満足度が高まり、リピート購入率が向上する。
という二つの事実があります。
この二つの事実から、
という結論を引き出します。
おわかりいただけたでしょうか?
この例では、一般的な原理として「マーケティング活動を適切に行うと知名度が向上し、顧客の興味を引く」と「質の高い製品やサービスを提供すると顧客の満足度が高まり、リピート購入率が向上する」という前提があります。
演繹法により、これらの前提を元にして、自社の売上と顧客ロイヤルティが向上するという結論を導くことができます。
帰納法
帰納法は、複数の事例から共通点、原理や法則を導き出す手法です。
こちらも例を使って説明しましょう。
- 過去3年間、夏季セールの期間中に割引価格で販売した商品が多くの顧客に好評だった。
- 過去2回のニュープロダクト発表イベントは成功し、メディアの注目を集めた。
- 社内の従業員が顧客対応に積極的に取り組むことで、評判が良くなっている。
という3つの事例があります。
この事例から、
という法則を導き出します。
この例では、過去に「セールの期間中の割引販売や新商品の発表イベントが成功し、顧客の関心を引く」と「従業員の積極的な顧客対応が評判向上に寄与している」という具体的な事例があります。
帰納法により、これらの観察事実を元にして、「顧客満足度と評判を向上させるためにはセールやイベントの開催、従業員の顧客対応の改善が重
論理的思考(ロジカルシンキング)の必要性
論理的思考力(ロジカルシンキング)は、ビジネスに必要なスキルとされています。ここでは2つの必要性を解説します。
1.問題解決に役立てられる
ビジネスの多くは「問題解決」が軸となります。
例えば、お客様の悩みごとを解決することは「問題解決」にあたります。
また、社内でトラブルが発生した際にその原因を特定し、対策を考えていくことも「問題解決」です。
社内外問わず、問題解決を行なっていくためには「これは本当に問題として捉えるべきか」「問題が発生した原因は何か」「本質的な解決策は何か」といったように筋道立てて考えることが大切です。
一方で、筋道立てながら考えることを怠ると、その場しのぎの表面的な解決策となってしまい、本質的な解決にはなりません。
その結果、目的が達成できず業績が上がらないということになってしまいます。
例えば、ある社員Aさんが仕事をしていてあるミスをしたとします。
それに対し、上司が「ミスをするな」とだけ言いました。
Aさんはその言葉を受けて、ミスをしないように意識するようになるでしょう。
しかし、意識しているだけでAさんのミスは完全になくなることがあるでしょうか?
「そのミスの何が問題なのか?」「そのミスは何が原因で起こったのか?」「同じミスをしないためにはどのような解決策があるか?」ということを考えなければ、きっとAさんはまた同じミスを繰り返してしまうでしょう。
そして、この例で論理的思考を用いないと、Aさんは、上司の厳しい指導がないとミスをしてしまう、という論理になってしまいますね。
問題を解決するためには、問題が起こる原因やプロセスを突き止めて、問題が起こらないように具体的な解決策を考える必要があります。
そこで論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけることで、本質的な問題解決を行えると同時に、仕事でも成果を上げることが期待できると言われているのです。
2.コミニュケーションが上手く取れるようになる
ビジネスは一人では完結することはできません。特に組織で働く以上、メンバーの協力が必要不可欠です。
例えば、社内でプレゼンテーションを行う際や仕事の指示を出す時に、組織のメンバーが理解できるように根拠に基づき、筋道立てながら説明を行うことは組織のメンバーとコミニュケーションを図る上で大切です。
このときに、論理的思考(ロジカルシンキング)を使わず曖昧な説明になってしまうと、指示を受ける側は「これは、自分がやらなければいけない仕事なのだろうか…」と感じてしまいます。その結果、話が進まず、組織の協力が得られないといった事態に陥ってしまいます。
また、自分が指示を受ける側の場合でも、同じ事が起こります。
指示を受ける側も、論理的思考(ロジカルシンキング)を使えていないと、組織のメンバーからの提案や新しいアイデアを理解することができません。
その結果、「そのアイデアは面倒臭そう」と感覚的な判断をしてしまい、せっかくの新しいアイデアを拒絶してしまうことにもなります。
年齢も性格も多種多様な人たちが集まる組織の中で、適切なコミュニケーションを図り問題解決を実行していくためにも、論理的思考(ロジカルシンキング)はより一層求められるようになってきています。
論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけるメリット
論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけると以下のメリットを得ることが出来ます。
1.問題解決スキルの向上
前章の通り、目の前の問題を体系的に整理し、正しく状況を把握する論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけることができれば、問題解決のスキルが飛躍的に向上します。
2. 文章作成が上手くなる
論理的思考(ロジカルシンキング)は、道筋を立てて説明するといったスキルが身につくため、文章の組み立て方や文章表現が豊かになります。
また、物事を的確に伝えられるようになるため、コミニュケーションがより円滑に進むようになります。
3.プレゼン力や提案力の向上
論理的思考を身につけることは、プレゼン力や提案力の向上にもつながります。
論理的思考が身についていると、筋道の通った根拠のある提案の仕方ができるようになるためです。
そのため、商談相手に対して根拠を示しながら納得感のある提案ができるようになります。
また、筋道を立てながら提案を行うことで相手にも伝わりやすくなるため、あなたの提案が採用される確率も上がるでしょう。
4.情報の取捨選択が上手くなる
最近はインターネットやSNSなどで検索すれば多くの情報があります。
そこで論理的思考(ロジカルシンキング)を養うことで、膨大な情報の中から自分に必要な情報を選ぶことで、正しい結論を導き出すことができます。
つまり、無駄な情報に振り回されたり、誤った判断をせずに済みます。
5.コミュニケーションスキルの向上
コミュニケーションスキルは、聴く力・伝える力が必要になります。
聴く力は相手の価値観や考え方を正確に理解する力で、伝える力は自分の価値観や考え方を正確に理解してもらうことが出来る力です。
論理的思考(ロジカルシンキング)を養うことで、この両方の能力が高まります。
論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛える方法
論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えるためにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは代表的な4つの方法をご紹介させて頂きます。
1.抽象的な言葉を具体化していく
まずは、普段の何気ない会話で使っている「抽象的な言葉」を具体的に話す習慣を身につけていきましょう。
例えば、以下の通りです。
例1:「業績達成に向けて頑張ります!」→具体的にどう頑張るかを明確にする。
例2:「なるべく早めに提出します!」→具体的な提出時間を伝える。
抽象的な言葉は、自分の気持ちが相手に正確に伝わっていないことがあります。
あなたの発言が全ての人にイメージできるように伝えるためには、より具体的な言葉に変換していく必要があります。
具体的な目標や行動があることで、根拠が生まれ、周りの人はあなたの気持ちに納得することができるのです。
2.クリティカルシンキング(批判的思考)を併用する
論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えるためには、自分の「考え方の癖」を把握しておく事も大切です。
また、考え方の癖の改善には、「クリティカルシンキング(批判的思考)」と呼ばれる、意図的に自分の考え方を批判してみるといった思考法もお薦めです。
クリティカルシンキングを養う事で、自分の偏った考え方や固定概念に捕らわれずに物事を見る力が身につきます。
3.本質的な課題を押さえる
論理的思考(ロジカルシンキング)で考えるためには、「本質的な課題」を押さえる事も重要です。
例えば、「仕事だからシステムの改修を行なっている」といった働き方と、「このシステムが改善されればユーザビリティが上がりコンバージョン率も高まる」といった目的が明確になっている働き方では雲泥の差があります。
前者の仕事はただの「作業」です。
後者のような「今、目の前で行なっている業務は、具体的にどのような課題を解決できるものなのか」ということを常に考えて仕事を行いましょう。
そうすることで、仕事のモチベーションアップにも繋がるでしょう。
4.根拠と主張を組み立てながら話す
上記の「本質的な課題」を押さえることができたら、次は自分なりの主張を行なっていきましょう。
伝え方のコツは、自分の主張に「なぜそうなのか?」といった根拠をセットにして話すようにしましょう。
そうすることで、あなたの提案の説得力がぐんと上がります。
論理的思考(ロジカルシンキング)を活用したフレームワーク
論理的思考(ロジカルシンキング)に活用できる「ロジックツリー」と呼ばれるフレームワークをご紹介します。
ロジックツリーは、今抱えている課題を見える化で把握し、原因の特定を行い、問題解決のアクションプランを決めていくために作るフレームワークです。
ロジックツリーには以下の種類があります。
- 原因研究型
- 問題解決型
それぞれのロジックツリーについて、例を用いながら解説していきます。
▼原因研究型
原因研究型は、問題が発生した背後にある原因を特定し、問題を解決する手法です。
問題が生じた結果を一つの根の要因として捉え、その要因をより詳細な原因に分解していくことで、問題の根本原因を特定します。
例えば、根の要因が「サイトのCV率が低い」だとして、原因研究型のロジックツリーを実践してみましょう。
次に、CV率が低い原因を洗い出します。
CV率が低い原因には、「トラフィックの質が低い」「魅力的なコンテンツが作れていない」「ページの読み込み速度が遅い」「フォームやチェックアウトプロセスが複雑」などといった下位要因が出されるでしょう。
これらの下位要因をさらに細分化していきます。
まず、トラフィックの質が低いのには、主にターゲティングが確立されていなかったり、ターゲットにあったキーワードが選定されていなかったり、ターゲットに合わせた広告が作られていないといったことが原因として挙げられます。
- ターゲティングが確立されていない:ターゲットと合わないアクセス者が多く、本来のターゲットユーザーが訪れていない可能性がある。
- キーワード選定が適切でない:使用しているキーワードが適切でなく、サイトに訪れるユーザーのニーズと合致していない可能性がある。
- 広告が適切でない:広告の内容やデザインが、本来のターゲットユーザーの興味を引かない可能性がある。
次に、コンテンツが魅力的でない原因は、コンテンツ内の情報が不十分であること、CTAのデザインや配置が良くないこと、ユーザーが求めているコンテンツが提供されていないことなどが挙げられるでしょう。
- 情報が不十分:提供されている情報が不足しており、ユーザーが求める情報を得られない可能性がある。
- CTAのデザインや配置が適切でない:サイト上のCTA(アクションを促す呼びかけ)が不十分であり、ユーザーが次のステップを踏みにくい可能性がある。
- コンテンツがユーザーのニーズに合っていない:ターゲットユーザーのニーズや興味に合致したコンテンツを提供していない可能性がある。
ページの読み込み速度が遅いのは、サイトが最適化されていないこと、画像・動画サイズが大きすぎることが原因になります。
ページの読み込みが遅い原因
- サイトが最適化されていない:ページが過剰なリソースを含んでおり、読み込み速度が遅い可能性がある。
- 画像や動画のサイズが大きい:画像や動画のファイルサイズが大きく、それらの読み込みに時間がかかる可能性がある。
最後に、フォームやチェックアウトプロセスが複雑なのは、不要な入力項目があることや、デザインに凝りすぎてユーザーから見てわかりづらくなってしまうのが原因でしょう。
フォームやチェックアウトプロセスが複雑な原因
- フォームが複雑:サイト上のフォームが煩雑で、ユーザーが情報を入力するのに苦労する可能性がある。
- 不要な入力項目がある:必要のない情報を求める入力項目があり、ユーザーが入力を億劫に感じる可能性がある。
このように、原因研究型のロジックツリーを使うことで、「問題の根本的な原因」を発見することができます。
そして、原因研究型を問題解決型のロジックツリーにも応用することで、問題の解決につながるのです。
それでは、問題解決型のロジックツリーについて、例を用いながら解説します。
▼問題解決型
「問題解決型」ロジックツリーは、解決したい課題に対して、どのような改善策やアクションプランがあるのかを決めていく際に使います。
まず根の目標を決め、その目標を達成するためにはさらにどんな目標が必要かを考え、さらにそれらを達成するための具体的なアクションを決めるという流れです。
こちらでも、根の目標を「サイトのCV率の向上」とした例を用いて解説していきます。
次に、CV率を向上させるための目標を洗い出します。
ここで、原因研究型のロジックツリーを先に行っていれば、目標が立てやすくなるかと思います。
CV率を向上させるためには、トラフィックの質を向上させること、コンテンツを魅力的にすること、ページの読み込み速度を改善すること、フォームやチェックアウトプロセスを簡素化することなどの目標を作る必要があるかと思います。
根の目標:CV率の向上
下位目標:
- トラフィックの質を上げる
- コンテンツを魅力的にする
- ページの読み込み速度を改善する
- フォームやチェックアウトプロセスを簡素化する
これらの下位目標だけでは具体的な行動に移れないので、さらに具体的なアクションに分解していきます。
トラフィックの質を向上させるためには、まず、ターゲティングの見直し、キーワード選定の改善も必要です。
また、ターゲットオーディエンスに合わせた広告のを作成し、広告のコンテンツやデザインをターゲットオーディエンスの興味に合わせてカスタマイズすることも必要になります。
トラフィックの質を向上させるためのアクション
- ターゲティングの見直し:ターゲットと合わないアクセス者が少なくなるよう、広告やキーワードのターゲティングを見直す。
- キーワード選定の改善:ターゲットユーザーの検索意図に合ったキーワードを選定し、より的確なトラフィックを誘導する。
- ターゲットオーディエンスに合わせた広告の作成:広告のコンテンツやデザインをターゲットオーディエンスの興味に合わせてカスタマイズする。
コンテンツを魅力的にするためには、不足な情報を追加して情報を充実させ、ユーザーが求めるコンテンツを作ることやCTAをわかりやすくするなどの改善が必要です。
コンテンツを魅力的にするためのアクション
- CTAの改善:ユーザーに対して明確で魅力的なアクションを促すCTAを設置する。
- ユーザーのニーズに合わせたコンテンツの提供:ターゲットユーザーのニーズに合わせて、個別のコンテンツを提供する。
また、ページの読み込み速度の改善のためには、サイトの最適化や、キャッシュを活用して高速でページを表示させるようにするなどのアクションが必要になるでしょう。
ページの読み込み速度を改善するためのアクション
- サイトの最適化:ページの表示速度を向上させるために不要なリソースを削減し、コードの最適化を行う。
- キャッシュの活用:ユーザーが再度訪れた際にページを高速で表示するために、キャッシュ機能を活用する。
- 画像や動画の圧縮:ページの読み込み速度を向上させるために画像や動画を適切に圧縮する。
最後に、フォームやチェックアウトプロセスの簡素化のためには、フォームのシンプル化や、不要な入力項目を削減するといった方法で解決できます。
フォームやチェックアウトプロセスを簡素化するためのアクション
- フォームのシンプル化:必要最低限の情報のみを収集するフォームを設計し、ユーザーの入力負担を軽減する。
- 不要な入力項目の削減:ユーザーにとって必要のない入力項目を省略し、手間を削減する。
- チェックアウトプロセスの最適化:購入プロセスをシンプルでスムーズなものに改善し、途中での放棄を防止する。
このように、下位目標を達成するために、それぞれのアクションを担当するチームや担当者を指定し、具体的なスケジュールや予算を立て、実行していきます。
まとめ|論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えてビジネスで活かそう!
論理的思考(ロジカルシンキング)はビジネスシーンで活用できるため、社会人として身に着けておいた方が良い思考法です。
今回紹介した鍛え方やフレームワークを活用して、あなたの思考力のアップに繋がれば幸いです!
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