みなさんは「デザイン」と聞くと何を思い浮かべますか?
最近は企業がYouTubeやTikTokなどの動画クリエイターを起用して、ブランドのプロモーションや広告を行うことが増えてきました。
2018年に経済産業省・特許庁が発表した「デザイン経営宣言」では経営にデザインを取り入れることの重要性が発表され注目を集めています。
デザイン経営宣言/経済産業省・特許庁
今後は動画のみならずデザインを取り入れたブランディングや経営戦略がますます浸透していくと推察されます。
そこで今回は「デザイン経営」の基本的な考え方と、企業の取り組み事例をご紹介します。
デザイン経営とは?
デザイン経営とは、企業が大切にしている価値や理念に「デザイン」を取り入れることで、ブランド構築やイノベーション創出を実現していく経営手法の一つとして考えられています。
デザイン経営は導入することで顧客のニーズを掘り起こすことができ、
「このブランドはどんな人の人生を変えたいのか?」
「このブランドを使うことでどんな未来が待っているのか?」
といった原点に立ち返ることで、既存事業や固定概念に縛られない事業を構成することが可能となる、新たな経営手法として昨今注目を集めています。
それでは具体的な背景について説明していきます。
デザイン経営が注目されている背景
デザイン経営が注目されている背景には消費者ニーズの変化と、そのニーズを捉えきれていない日本企業が多いという点があります。
ひと昔前の日本は「技術革新」こそがイノベーションだと捉えてきました。
しかし本来イノベーションとは「技術革新」といった発明そのものでなく、社会的なニーズや顧客視点を捉えた上で、新しい価値に結びつけていくこと、すなわち「デザイン」が介在してはじめてイノベーションが実現すると言われています。
特に日本は大量消費が前提の製品開発のため、製品やブランドが飽和状態です。
そのため、最近の消費者は「心の充実」を求めて製品やブランドを選ぶ傾向にあります。
しかし、日本の多くの企業は現代の顧客ニーズを捉えきれていないのが実情です。
すでにAppleやGoogleなどグローバル企業の中では「デザイン経営」という考え方は主流ですが、日本ではまだまだ「デザイン」と聞いてピンとこない経営者やビジネスパーソンは多いです。
このような背景から、2020年3月には特許庁はデザイン経営に疎い経営者やビジネスパーソンに向けて、「デザイン経営ハンドブック」と「デザイン経営の課題と解決事例」を発表しました。
こちらの資料では、現状日本企業がデザイン経営を進められていない原因を踏まえて、デザイン経営を推進する入口として取組事例を交えて解説しています。
デザイン経営ハンドブック
デザイン経営の課題と解決事例
デザイン経営の具体的な取り組み方
ではそのようにデザイン経営に取り組んで行けば良いのか説明していきます。
先程の「デザイン経営宣言」では以下の2点が必要条件として掲げられています。
【1】経営メンバーにデザイン責任者をおくこと。
【2】事業の戦略構築の最上流から「デザイン」が関与すること。
この2点を必要条件として以下の取り組み方が推奨されています。
①経営メンバーにデザイン責任者をおき、企業戦略の中核に「デザイン」を関連付ける。
②企画立案や事業戦略、製品開発の段階からデザイナーが計画に参加する。
③事業組織の重要な位置に「デザイン部門」を設け、社内を横断させデザインを浸透させていく。
④デザインを取り入れたことで発掘された顧客ニーズを収集していく。
⑤PDCAを回しながら質とスピードを重視していく。
⑥デザインの考え方や理念に共感してくれる人材を確保していく。
⑦KPIの明確化と設計を工夫する。
デザイン経営に取り組む企業の成功事例
デザイン経営に取り組む企業がまず行なっているのが「働き方改革」です。
デザイン経営を行う上で経営者は自社の理念やビジョンを明確にし社内に浸透させていく必要があります。
そして、その理念やビジョンを共有することで仕事に対する意欲やコミニュケーションの活性化、業務効率化が期待できます。
そのほかにもデザイン経営は事業の収益拡大にも繋げることが出来るため、いくつか「デザイン経営」に取り組んでいる企業の成功事例をご紹介させて頂きます。
成功事例①|モリタ株式会社
北海道札幌市に拠点をおくモリタ株式会社は、梱包、雑貨、食品、ギフトなどのパッケージ(箱)を取り扱っている紙箱メーカーです。
モリタ株式会社の社長は当初「デザイン経営」の重要性を肌に感じ、自ら専門学校で「デザイン」を学び、既存事業のノウハウと「デザイン」を組み合わせ「エゾマツクラフト」などのオリジナルブランドを展開しました。
今ではこのオリジナルブランドが事業の柱となり、国内外の企業から多くの反響を呼び、「デザイン経営」導入後の新規顧客が半数を占めるほど事業を広げることができました。
これもデザイン経営を取り入れることで新たなイノベーションの創出が可能となった結果だと考えられます。
成功事例②|株式会社ソーキ
計測機器のレンタルやメンテナンスを行なっている株式会社ソーキは、自社の強みや理念を働く社員が自覚し自ら発信できる社内風土を構築したいと考え、「デザイン経営」を取り入れました。
そこで、全社員が共通の認識を持てるよう、ロゴデザインを一新し、働く社員の声を尊重し以下のミッションを掲げました。
あらゆる「はかる」の実現を通して、様々なお客様の想像の起点となり、未来の社会環境づくりに貢献する。
参照プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000054980.html
「デザイン経営」の取り組みを通して、自社の理念や強みを再定義したことで、社員がお客様に提案する際もこの理念を伝えながら提案を行えるようになり、社員の提案力が高まったという効果も出ています。
このような社内と外部のクライアントに企業の理念や価値を浸透させていく取り組みは「デザイン経営」を成功させるために必要な要素であると認識させてくれる成功事例と言えるのではないでしょうか。
株式会社ソーキ
成功事例③|ヤマモ味噌醤油醸造元
秋田県湯沢市で江戸時代末期から続く老舗の蔵元「ヤマモ味噌醤油醸造元」は、老舗としての歴史をベースにデザイン経営を取り入れ、ブランディングを再構築し自社のホームページやパッケージデザインを一新。2013年にはグッドデザイン賞を受賞しました。
「デザイン」と聞くと、目新しさや革新的なものを想像しがちですが、「ヤマモ味噌醤油醸造元」は自社の老舗としての歴史や伝統に価値を見出しブランドを再構築しました。
現在は、以下の事業や取り組みを展開しています。
・ギャラリー併設のカフェ。
・アーティストや建築家とのコラボレーション。
・一流シェフとのコラボレーション。
・自社のホームページでは英語翻訳で自社の歴史や伝統を発信。
このように「デザイン経営」は、老舗だから難しいというものではなく、デザインとの向き合い方次第では老舗であったとしても十分に成果を出すことは可能です。
ヤマモ味噌醤油醸造元
まとめ|デザイン経営は中小企業こそ取り組むべき経営手法!
今回はデザイン経営の基本的な考え方や成功事例を紹介しました。
デザイン経営は、顧客視点でデザインを取り入れながら企業のブランド力強化やイノベーション創出、事業拡大が期待できる、今の日本企業にとって最も必要な経営手法であると言えます。
特に新規事業のスタートアップが図りやすく、社内浸透がスムーズな中小企業に向いている経営手法とも言えます。
今まで大手企業と差別化が出来ずに諦めていた事業も新たな突破口が発掘できる場合もあります。
まずは「デザイン経営宣言」や「デザイン経営ハンドブック」などを活用しながら、まずは自社の課題や理念を明確にし「デザイン経営」に取り組んでみてはいかがでしょうか。