行動心理学の中に、「ザイオンス効果」と呼ばれる現象があります。
例えば、初対面の時は苦手なタイプだったけど、会う回数が増えるに連れ「好印象になった」という経験はないでしょうか?
このように人は接触頻度が増えるほど相手に対して好意を抱くことがあります。そして、これは人間関係や仕事の部下と上司の関係、ビジネスの商談など幅広い分野で実証されています。
そこで今回はビジネスシーンでも活用できる「ザイオンス効果」について、その概要やメリット、注意点などをご紹介させて頂きます。
ザイオンス効果(単純接触効果)とは
ザイオンス効果(単純接触効果)とは、繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果です。
1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文 Zajonc (1968) にまとめ、知られるようになりました。
「ザイアンスの単純接触効果」「ザイアンスの法則」とも呼ばれることがあり、対人関係については熟知性の原則と呼ばれています。
つまり、「会う頻度が多い人ほど好感度が上がりやすい」という法則です。
例えば、SNSの広告やテレビCM等で普段は気に留めていなかった商品でも、何度も広告で目にしているうちに、いつの間にか興味を持ち始める経験はないでしょうか?
このように、何度も目にしたり会ったりするうちに好感を持つという心理的傾向を「ザイオンス効果」といい、実際にさまざまな場面で活用されています。
また、一方でザイオンス効果は誤って使うと、逆にクレームや苦情に繋がってしまうケースもありますので、取り扱いにはしっかりと注意し活用していきたい心理効果です。
ザイオンス効果の目的、メリット
ザイオンス効果を活用することで得られる大きなメリットは、営業活動を有利に運ぶことができるようになるという点です。
例えば、営業を行う際、初対面で「苦手なタイプだなぁ」と感じるお客様も存在すると思います。
しかし、ビジネスである以上、苦手なタイプの人に対してもセールス活動を仕掛けなくてはなりません。
そんなときの克服法にこそ、接触回数を増やすことをオススメします。
何度も会ううちに、「苦手なタイプ」だったという印象から、「意外といい人なのかも」といった印象に変わっていく、そんな自分自身への「ザイオンス効果」が大いに見込めるからです。
また、何度も営業先を訪問して好感を持ってもらうことができれば、商品が売りやすくなりますし、信頼関係を構築することができます。
このようにザイオンス効果には、営業や販促において無視できないメリットが存在しています。
ザイオンス効果を使う際の注意点
接触回数を増やすことで好印象を獲得できるとは言え、「ザイオンス効果」が逆効果に働いてしまうケースもありますので、以下の点は注意する必要があります。
【1】無闇矢鱈に無意味な接触をしない
接触回数を増やすことに意識しすぎて無闇矢鱈に頻度を増やし過ぎないようにしましょう。
たとえば、営業を行う際、相手が求めていない情報を繰り返し提供しても単純接触効果を引き出すことができません。
相手に信頼感を与えるためにも、無意味な接触を繰り返すのは避けるようにした方が良いです。
なお、「接触回数」については諸説ありますが、一般的に10回がピークと言われています。
もし、あなたが10回以上商談しているにもかかわらず、良好な信頼関係を構築できていないのであれば、別の策を講じてみてはいかがでしょうか。
【2】期間を開けないようにする
単純接触効果では、接触する期間についても注意が必要です。
相手との信頼関係を構築し、購買意欲を高めたりするためには、繰り返し接触をしなければいけません。
たとえば、インターネット広告やSNS投稿などWebの施策では、1週間に1回程度の配信では、十分な効果を得るのが難しくなります。
相手に不快感を与えないように、ユーザーの反応やデータを取りながら、配信頻度を調整することが大切です。
【3】初対面での対応に気を配る
単純接触効果を活用したマーケティングや営業活動をおこなう際は、相手に悪い印象を与えないように注意しましょう。
特に初対面での印象は大切です。
初対面でもあるにも関わらず、相手が要求していないのに、しつこく営業をしたり、過度に追客メールを配信したりすると、施策は逆効果につながる危険性があります。
特に人間の心理というものは、良い点よりも悪い点に意識が向いてしまいます。
そんな中、初対面でのやりとりが粗末になってしまうと、次回以降の営業活動にも支障が生じ、相手はあなたの悪い点にばかり目がいくようになってしまいます。
そのため、特に営業などの場合は、第一印象で全てが決まるといっても過言ではありません。
ザイオンス効果は、売上を伸ばすために最適な施策ではありますが、一方で企業や営業マンに対して嫌悪感を抱かせてしまう場合もありますので、活用方法を気をつけましょう。
ビジネスシーンでの活用例
ザイオンス効果で求められる接触行為は「会う」という行為だけに留まりません。
お客様に対して、電話やメール、DM等のコミュニケーション手段を使ったり、展示会やセミナー等のイベントに誘導したりすることで接触機会を重ねることも可能です。
それでは具体的な接触方法についてご紹介させていただきます。
【1】メールマガジン
普段何気なく、企業やネットショップから配信されるメールマガジンも、ザイオンス効果を狙ったマーケティング施策です。
たとえば、ネットショップからはよくクーポンの有効期限が近づいているメールなどが配信されます。
最初は煩わしいと感じていても、有効期限が近づくにつれてメールの頻度が多くなると、購買欲が高まることがあります。
また、人は全く知らないブランドから買うよりも、親しみのあるブランドから購入してしまうという心理的傾向があります。
そのため、メールマガジンで有効期限を繰り返しアナウンスしていくことも戦略の一つとして考えてみるのも良いでしょう。
【2】Web広告
Web広告の中に、リターゲティング広告と呼ばれるものがあります。
リターゲティング広告とは、お客様がアクセスしたWebサイトにその関連した商品やサービスなどの広告を繰り返し配信する広告スタイルです。
リターゲティング広告の戦略は、動画サイトやWebサイトの広告枠に繰り返し配信を続け、お客様に親近感を持ってもらうことを目的としています。
こうすることで、インターネット上での接触回数が増加し、次第に購買欲求を高めることができます。
【3】SNSの活用
昨今、一般の消費者との接触頻度を増やすために最適なツールであるSNSを活用した企業が増えてきています。
特に商品やブランドを広く知ってもらうためには、広告を繰り返し出す必要があります。
しかし、テレビCMや新聞広告、Web広告は予算がかかり過ぎるため、施策が中途半端になってしまったり、継続的な広告配信が出来ない企業も多いのではないでしょうか。
そこで無料で始められるSNSであれば継続的な配信を手軽に行うことができます。
また、シェアなどの拡散機能もあるため、認知拡大を目的とするのであれば非常に優れたツールであり、ザイオンス効果との親和性が非常に高いといえます。
まとめ
今回は「ザイオンス効果」をテーマにその概要や具体的な活用事例をご紹介させて頂きました。
ザイオンス効果は、顧客の購買欲を高めるために、マーケティングや営業活動など様々なビジネスシーンで取り入れられています。
一方で、扱い方を間違えると顧客との信頼関係が破綻してしまう場合もあります。
そのため、ザイオンス効果をビジネスシーンに取り入れる際は、単純に相手との接触回数を増やすのではなく、顧客視点に立って距離感を考えながら実装することがポイントとなります。
◉ザイオンス効果を使いこなすポイント
【1】接触回数は10回を限度にする。
【2】「実際に会う」以外のタッチポイントを見出す。
【3】苦手なタイプのクライアントでも苦手意識を持たない。接触回数を重ねことで信頼は勝ち取れる。
【4】常に顧客視点。今の接触頻度が「自分の立場だったらどう感じるか?」を常に意識する。
【5】SNSやメールマガジンなど無料のコンテンツを積極的に活用し広告費をかけない営業活動を実装してみる。
是非とも本記事を参考に、行動心理学である「ザイオンス効果」を一つの武器としてビジネスシーンで活用してみてはいかがでしょうか。