プライベートブランドとは?
プライベートブランドとは、小売業者や流通業者が主体となって商品を立案・開発し、生産のみ他者に外注して、ユーザーに直接販売する商品を指します。
よく知られている例ではセブン&アイグループの「セブンプレミアム」や、LAWSONの「ローソンセレクト」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
これらの商品のように、販売店の名前が製品名に反映されているケースも多く見られます。
ユーザーに商品を販売する小売業者などの手によって商品の企画・開発が行われるので、ユーザーニーズを商品の特性に反映させやすく、また、ライバルとの差別化につなげやすいのも、大きな特徴です。
さらに、店舗限定や地域限定といった希少性をセールスポイントとして設定するのも容易なので、ユーザーの興味を引きやすいというのも、強みの一つと考えられています。
買い物シーンや広告などでもプライベートブランドやPBと記された商品を目にする機会も増えており、最近では小売店などを中心に、アイテムも続々と登場しています。
プライベートブランドと他のブランドとの違い
プライベートブランドに対し、メーカーが直接企画・開発するブランドを「ナショナルブランド(NB)」と呼ぶことがあります。
ナショナルブランドは、高いスキルを持つ専門メーカーが製品の企画・立案、そして製造まで一貫して行うシステムを指します。
従来のブランドというと、ナショナルブランドをイメージされる方も多いかもしれません。
昔ながらのメーカーは自社の強力なブランド力を背景に、流通をコントロールしようとしてきた歴史があります。
代表的な事例としては、コカ・コーラやiPhoneなどが挙げられるでしょう。
さらにアパレル業界独自のシステムとして、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)も浸透しています。
こちらは
1. 企画→2. 開発→3. 調達→4. 生産→5. 流通→6. 販売→7. 広報→8. プロモーション→9. 店舗経営
まで、全行程を担うアパレルのビジネス・モデルを指します。
ブランド名としては、ユニクロやジーユーを経営する「ファーストリテイリング」や、世界的アパレルメーカーである「ZARA」などがよく知られています。
ですが、近年はアパレルに限定せず「該当する企業が行うビジネス・モデル」というように認識が変化しつつあります。
プライベートブランド戦略のメリットとは?
プライベートブランド戦略を取ると、小売・卸業者、製造メーカー、消費者の三方に次のようなメリットがあります。
小売・卸業者
• 種々のコスト削減ができるので、利益率が高い商品を販売できる。
• 自社商品のブランディングができる。
• オリジナル商品が開発できる。
メーカー
• 広告費がかからない
• 返品されない
消費者
• 価格が手軽である
• ニーズに適した商品を見つけやすい
プライベートブランド戦略の成功事例
プライベートブランド戦略の成功事例としてよく知られているのは、次のブランドです。
セブン&アイホールディングス「セブンプレミアム」
セブンイレブンだけでなく、イトー・ヨーカドーなどのセブン&アイグループの店舗で扱われている「セブンプレミアム」は、最も成功した事例と言われています。
2007年にプライベートブランドをスタートし、売上は順調に伸びています。今では商品数は3650品目、売上高は1兆円1500億円にまで達しました。
従来のプライベートブランドと異なるのは、「単なる低価格戦略」からの脱却を図ったことです。プライベートブランドでありながら、共同開発のメーカーも併記し、品質・安全面でも高い水準を追求した商品開発が、最大の成功要因と考えられています。
一例としては、「セブンゴールド 金の食パン」がよく知られているのではないでしょうか。
原材料や製法にこだわり、ナショナルブランドよりも高品質・高単価のプライベートブランド製品として、今までとは異なる路線に舵を切りました。
その方針転換は、消費者間でも話題になり、品質も認められてプライベートブランドの位置付けの転換に成功したと言えるでしょう。
イオンのトップバリュ
日本で初めてプライベートブランドを導入したのは、現在のイオンでした。
1974年にプライベートブランドである「トップバリュ」を創設し、現在でも以下の「トップバリュ」シリーズを展開しています。
• 生活品質の向上に役立つ商品を提供する「トップバリュ」
• 高品質と低価格の両立を目指す「トップバリュベストプライス」
• 健康・自然環境に配慮した「トップバリュグリーンアイ」
• こだわって選別した商品を低価格で提供する「トップバリュセレクト」
どのシリーズも、「シンプルかつ分かりやすい」「安心で安全な商品の提供」という共通軸を持ちながら、それぞれのブランドの特色を打ち出して、展開しています。
消費者が自分の好みにマッチしたブランドを選択するのに、適していると言えるでしょう。
プライベートブランド戦略の失敗事例
コンビニはPBの成功事例として取り上げら得ることが多いのですが、失敗事例も見られます。その代表的な例が、LAWSONのPBである「ローソンセレクト」で扱っている「納豆」と「豆腐」です。
これらの商品は、2020年春のリニューアルの際に、パッケージの諸品名表記が「NATTO」「TOFU」とローマ字仕様に変更されました。
ブランド名も「L basic」「L marche」に細分化し、新デザインも世界的に有名なデザインオフィスに依頼するという、大掛かりなリニューアルプロジェクトでした。
ですが、
• 商品名が背景に埋もれて見える
• 商品の写真が排除されてしまったので、どのような商品なのか分かりづらい
• 美味しそうに見えない
というような批判が多く寄せられました。
これらの意見を受けて、LAWSONはデザインの変更を余儀なくされています。
プライベートブランド戦略を実行するときのポイント
プライベートブランド戦略を成功させるには、次のようなポイントを押さえたいものです。
業態を問わずグループ内での価格を統一する
ナショナルブランドの場合は、商品価格が店舗ごとに異なるのも珍しくありません。
ですが、プライベートブランドでは自社グループの店舗で売り出すので、同じ商品が別店舗で価格が異なると、消費者の混乱を招く原因にもなります。
例えばコンビニやスーパーマーケットという異業種でも、価格を統一することで、「この商品はどこでも同じ価格で手に入る」という認識を消費者に与えられれば、購入してもらいやすくなるでしょう。
ブランド戦略を基軸に企画開発をする
プライベートブランドは自社の顔とも言うべきブランドです。そのため、ブランド戦略を意識して認知度や評価を上げていかなければなりあません。
• 顧客はどのようなものを求めているか
• 売上の確保のためには、どのような生産・販売計画を立てれば良いのか
• 競合店舗に勝つには、どのようなPR方法が適しているのか
という点を意識しながら、ブランドを育てていくべきです。
『消費者のニーズを正しく把握する』プライベートブランドの強みは、メーカーにはない小売独自の視点から顧客の要望を集め、商品に反映させられる点です。
そして、メーカーとも意見交換をしながら顧客ニーズに答えられる、かつ売れるプライベートブランド商品の企画・開発を行っていくと良いでしょう。
そのためには、部署や販売形態の垣根を越えたチーム編成を行うのも、有効です。