自社の製品やサービスの「価値」や「オリジナリティ」を構築する際の戦略として「ポジショニングマップ」が挙げられます。
自社のビジネスを拡大していくためには、市場でどのようなポジショニングをするかが非常に重要です。
また、競合のポジションを可視化することで、自社が目指すべき目標も見えてきます。
そこで今回は、自社の製品やサービスの継続的な差別化を図るために知っておきたい「ポジショニングマップ」の基本概念や作成方法、使い方をご紹介させていただきます。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングマップとは、市場で自社ブランドの「立ち位置」を確認するためのフレームワークです。
自社のポジションを明確にし、そこを掘り下げ、強化していくことで持続的な競争優位を確立することができます。
フレームワークの軸は、縦軸と横軸の2軸で【顧客が判断する要素】から選びます。
【顧客が判断する要素】
- 製品、サービスの価格帯
- デザイン性
- 機能性、アフターフォロー、メンテナンス性
- 使いやすさ、分かりやすさ
上記の要素を踏まえ、2軸の観点から自社が1位を取れる新しい立ち位置を作り出すのか、または競合と戦うことで1位を取りに行くのかを考えます。
特に、これから事業を立ち上げる場合は、なるべく競合と戦うことを避ける必要があるため、マップの空白部分を狙いに行くことが定石であると言われています。
顧客は似ている製品・サービスから他にはない価値があるかどうかで判断します。また、ニーズは常に変化しているため、企業は常に、このポジショニングを考えながら戦略を立てていくことが求められています。
ポジショニングマップの作成方法
step.1 マップの軸を選ぶ
ポジショニングマップの2軸はどちらもターゲットの「購買決定の要因」となりうるものでなければなりません。
この購買の決定要因のことをKBS:Key Buying Factorと呼びます。
KBSとは、顧客が商品を購入する際に重視する要素です。
そして、KBSと関係がない要素を「軸」として選んでしまうと、そもそも顧客にとっての差別化になりえません。
例えば、フレームワークに用いる軸は主に以下の4つが挙げられます。
- 商品の機能や性能に基づく軸
- 競合製品との比較に基づく軸
- 製品・サービスの用途や使う人、シチュエーションに基づく軸
- 顧客が得るベネフィットや顧客満足に基づく軸
この中から、購買決定の要因となりそうな要素をピックアップします。
選ぶポイントとしては、自社の強みを活かして、その分野で高いシェア率が見込める「軸」を選びます。
尚、価格や品質に偏り過ぎたマップになってしまうと、自分たちより安い価格や同じ品質のものが出されたときに、すぐに追い越されてしまう可能性があるため、安易に「低価格」「高品質・ハイグレード」に逃げないのが得策です。
要するに自社の独自性や強みを存分に活かせる分野で「軸」を選定することが重要です。
step.2 選定した2つの軸を「縦軸・横軸」に当てはめ、自社と競合の商品を書き出す
KBSをよく見極め、そのうち特に重要な2つの要因を使用して、ポジショニングマップを作成していくことが大切です。
例えば以下の通りです。
- お客様目線で自社と他社がどの位置にいるのか?
- どこが他社と比べて劣っているのか?
- 他社と比べて自社が勝っている部分はどこか?
このような観点から自社と競合の商品をマップに当てはめ、可視化していくことで差別化できる戦略を立てていきます。
ポジショニングマップ作成時のポイント
ポジショニングマップを作成するポイントは、競合と差別化でき、競争優位性のある独自のポジションを探すことにあります。
領域が、競合がとりにくいポジションでありながら、自社でポジショニングが可能であれば、その領域が競争優位性のある独自ポジションとなります。
事業を始めたばかりの小さな会社は、顧客のニーズや提供するベネフィットにもとづく軸をメインに考えることをお勧めします。
商品の仕様や機能そのものは、大手企業が優位性を持っています。
一方で、ニーズやベネフィットは、仕様や機能に比べれば感覚的なものになるので小さな企業の強みになります。
そして、その時に必要になるのがブランディング戦略です。
ターゲットとなる消費者に対して、自社の商品を認知してもらうために戦略を立て、新聞やWEB広告を使った宣伝をしていきます。
ポジショニングマップの使い方
Step1.他社競合と比較する
実際にポジショニングマップを作ってみると、差別化出来ているつもりだったのに、消費者視点では「あまり差別化されていなかった…。」ということがあります。
このようにポジショニングマップは「うちの会社は○○しているつもり」という企業の固定観念を払拭するために非常に役立ちます。
顧客が何を重視しているか、それが本当に達成できているかを顧客目線で把握していきましょう。
Step2.他社競合との立ち位置を決める
ポジショニングマップは、他社競合との比較だけではなく、今後の自社の立ち位置を決めることにも役立てることができます。
例えば、マッピングした上で差別性を強調できるポジションが既に空いているのであれば、そのポジションを狙うことで競合他社との無用な競争を避けて簡単にターゲット顧客にアプローチすることができます。
市場に対して、後から参入するということはそれだけで大きなハンデとなります。
しかし競合他社がいないポジションに参入することにより、ハンデが発生することもなく、比較的楽に参入することが出来ます。
多くの企業が参入している市場において、シェアを100%近く獲得し圧倒的な勝利をすることはまず不可能です。
それよりも、差別化できる分野で、確実に市場で「存在感」を高めることを優先する方が良いです。
ポジショニングマップを例に当てはめて考えてみましょう
架空のスポーツ用品メーカー「スポーツフィールド」社が、フィットネスウェア市場に参入することを検討しています。
競合他社は「エクサパワー」と「アクティブウェア」の2社があります。スポーツフィールド社は、ポジショニングマップを用いて、自社のフィットネスウェアの位置づけを把握し、競合他社との差異を分析するという前提で解説していきます。
ポジショニングマップの横軸は「価格帯」で、左から高価格、右へ安価格となっています。縦軸は「機能性」で、下から高機能、上へ低機能となっています。
「エクサパワー」社は高価格帯で高機能のフィットネスウェアを提供しており、トレーニングやスポーツ競技に特化したアスリート向けの商品を展開しています。
「アクティブウェア」社は中価格帯で中機能のフィットネスウェアを提供しています。リーズナブルな価格と幅広いアクティブなユーザーに向けた商品ラインナップが特長です。
「スポーツフィールド」社は、この競合他社との差異を理解した上で、新たなポジショニングを目指します。
スポーツフィールド社は中価格帯で高機能なフィットネスウェアを提供することを目指しました。
これにより、アクティブなユーザーにリーズナブルな価格で高品質な商品を提供し、広い層の顧客を取り込む戦略を採用します。さらに、エクサパワー社との価格差により、競合力を確保します。
ポジショニングマップによる分析により、スポーツフィールド社は独自の市場領域を特定し、ターゲット顧客を明確化しました。
また、中価格帯での高機能フィットネスウェアの提供は、消費者にメリットを提供するとともに、競合他社との差別化を図る戦略として適切であることを確認しました。
スポーツフィールド社は、ポジショニングマップに基づく戦略を踏まえて、市場参入を計画しています。価格帯と機能性を両立した独自のフィットネスウェアが市場でどのように受け入れられるか、今後の展開が注目されます。
まとめ
今回は、自社の製品やサービスの継続的な差別化を図るために知っておきたい「ポジショニングマップ」の基本概念や作成方法、使い方をご紹介させていただきました。
「差別化」は他社よりも「良いもの」を追求するより、「他とは違う独自価値」を追求することが重要です。
そして、ポジショニングマップは、自社独自のポジションを明確にすることが出来ます。
ここを明確にしないまま、ブランディングやマーケティングを行っても無駄足に終わることが多いです。
是非とも本記事を参考にしていただき、まずは市場でのポジションと、他社に勝てる部分を明確にするところから始めてみてはいかがでしょうか。