ブランドパーソナリティとは?
「ブランドパーソナリティ」は、ブランドが持つ独自の個性を人間の人格になぞらえて表現・形容したものです。
ブランドの「個性」を際立たせていく上で必要不可欠な要素であり、適切に設定して運営していくと、そのブランドに対する生活者の感情移入の度合いが劇的に高まると言われています。
しかし、現実ではブランドパーソナリティの重要性が認識されていなかったり、目配りが行き届いていないブランドも多くあります。
その結果、ブランドの価値が正しく理解されず、ロングセラーブランドに結びついていない事例も少なくありません。
顧客の企業に対する感情や捉え方は、生活者自身のイメージにも深く結びつきます。
自社のブランドパーソナリティを確立できれば、生活者との絆を深め、自社ブランド製品の購入にも結び付けられる可能性を秘めています。
ブランドアイデンティティとの違い
ブランドアイデンティティとは、ブランドが自ら表現したいことや顧客に抱いてほしいイメージをデザインなどに反映させたものです。
具体的には、企業のロゴやブランドのテーマカラー、ブログなどを含むメディアでの語り口などが挙げられます。
ユーザーが直接自分の目で確かめられる情報が、ブランドアイデンティティだとも言えるでしょう。
これに対して、ブランドパーソナリティはブランドを人に見立てて、人格的な特徴を捉えた言葉です。
情熱的であったり、静かであったりするなど、人格を表す言葉でブランドを表現します。
ブランドパーソナリティは商品やサービスの舞台裏とも言える考え方です。
ブランドパーソナリティの構成要素
ブランドパーソナリティは、
- 信憑性
- 記憶性
- 価値
- 信頼性
- 説得力
の5つの要素から構成されます。
信憑性
信憑性は、ビジネスのゴールや企業文化を反映したものに設定しましょう。
特に若い世代の消費者は、企業の誠実さが分かりやすい商品や、トレンドを取り入れているものに敏感な傾向があります。
記憶性
記憶性については、新しいブランドであれば、まずはブランドの名前を浸透させるために、記憶に残りやすい工夫が求められます。
見た目のユニークさや遊び心のあるキャッチコピーを取り入れるなどの工夫を凝らすと、スタートアップの段階で誰もが知っているような起業が出来るでしょう。
価値
ここで言う価値は、ビジネスの「内容」を指します。
類似のブランドでは得られない、どのような価値をユーザーに提供できるか、です。
製品の種類や質、価格を比較検討するのはもちろんのこと、自分たちとライバル企業を比較した際に、どのように印象付けられるかも検討しましょう。
信頼性
例えば、ライバルがひしめくニューヨークのピザ屋では、どの店も「自分の店が一番美味しい」と言います。
ですが、その言葉が真実であるのは、たった一店舗という理論が成り立ちます。「一番」は1店舗しかあり得ないからです。
もしその言葉が嘘であるならば、人々はあなたの言葉に耳を貸さなくなるでしょう。
だからこそ、「信頼性」も重要な要素になります。
説得力
顧客はそのブランドの専門分野において、「プロフェッショナル」であるのを期待して購入します。
それを心得ているブランドは、自社ブランドを自信をもって体現し、より多くのビジネスチャンスを惹きつけるのです。
ブランドパーソナリティの効果
ブランドパーソナリティが顧客に与える効果は、「ブランドの記憶性」「ブランドからの連想力」「ユーザーからの感情移入」が期待できます。
ブランドの記憶性
まず、ブランドの記憶性についてです。
単純にブランド名だけを並べたり、商品ごとに個別に売り出すよりも、ブランド全体に共通するイメージを認知してもらったほうが、覚えてもらいやすくなります。
ブランドからの連想力
「ブランドからの連想力」は、定型的な「機能や性能についての説明」だけでは、生まれません。
ブランドの提供者である人材の性格や個性なども付加することによって、ユーザーは想像力が広げやすくなるのです。
さらに、ブランドパーソナリティを打ち出すことにより、ライバルとの個性の違いもわかりやすくなります。
例えば、スマートフォンならばAndroidは各社の機能も似通ったものであり、各社の違いがわかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
それに対してiPhoneは、OS開発の段階からブランドパーソナリティを巧みに管理し、日本でのユーザー獲得に成功したと捉えられています。
ユーザーからの感情移入
「ユーザーからの感情移入」は、心理学の「類似性の法則」を応用したものです。自分と共通点が多い人に対しては、無意識のうちに「親近感」を感じることが多いのではないでしょうか。
これは生身の人同士だけでなく、ブランドと人の関係にも当てはまるものです。
ブランドパーソナリティの作り方
ブランドパーソナリティを確立するには、「ディメンションフレームワーク」「アーキタイプフレームワーク」を実施して、顧客の嗜好を客観的に分析していきます。
形容詞のリスト作成
ブランディング初心者は、どこから自社ブランディングに手を付けたら良いのか、わからない方も多いかもしれません。
自社ブランドの特徴を掴みかねている場合には、ブランドを表すのに適した形容詞のリストを作成すると良いでしょう。
例えば「若々しい」「最先端」「現代の」というフレーズが思い浮かべたならば、顧客は「刺激を求めている」と考えられます。
また、「頼りになる」「信頼」「成功した」という形容詞であれば、製品・サービスに「能力」を期待しているでしょう。
これらの単語は、ターゲットとする顧客層の好みや期待に直結する価値観です。
したがって、ブランドパーソナリティとして確立させるには、自分たちの好みではなく、ターゲット層を念頭に置いてキーワードを選ぶのが大切です。
ディメンションフレームワーク
ディメンションフレームワークはJennifer Aakerによって提唱された考え方であり、ブランドパーソナリティの属性を5つの要素に分類したものです。
具体的には、「誠実」「刺激」「能力」「洗練」「頑丈な」というジャンルに分類されます。
親切・素直という単語からは「誠実」さ、上品・知的という単語からは、「洗練」のジャンルに当てはめるなど、自社ブランドのコンセプトなどを元に分析しましょう。
アーキタイプフレームワーク
こちらは、Carl Gustav Jungの理論に基づいたフレームワークです。
こちらはブランド視点に基づいて、ブランドが理想とする顧客像からブランドパーソナリティを決められるのが特徴です。
同心円の外側に顧客の価値観を置き、その一つ内側にが求めている価値観を配置します。
さらに同心円の中心部には、そのような価値観を持つ人が最終的にもとめているベネフィットを置いて考える手法が、アーキタイプフレームワークです。
例えば、メルセデスベンツの場合は「経営者」が客層に多いことが知られています。
これをパーソナリティと捉えるならば、そこから「支配」という価値観を求め、最終的には「安定」を目指していると推測できるでしょう。
ブランドパーソナリティの作り方ポイントとは?
ブランドパーソナリティを設定する場合、顧客のニーズから深掘りして設定していくと、より具体的なパーソナリティが設定しやすくなります。
経営者の好みにしたがって設計するのではなく、顧客のニーズを把握してブランドに必要な個性を考えましょう。
また、自社ブランドの理想像を個性に取り入れると、ブランド運営におけるガイドラインも定めやすくなります。
ただし、理想追求のあまり、顧客のニーズと乖離しないように注意しなければなりません。
さらに、自社ブランドが「実在する人間だったならば、どのような人なのだろう」と考えてみるのも良いでしょう。
「人間」になぞらえることで、自社ブランドの特徴を具体的につかみやすくなります。
擬人化が難しい場合には、「このブランドを利用している人はどの様な人なのか」と、ペルソナを設定してユーザーの考察を深めると、ブランドの特徴を見つけるきっかけをつかめるでしょう。
ブランドパーソナリティの成功事例
ここで、具体的なブランドパーソナリティの成功事例を見てみましょう。
スターバックス
スターバックスというと、どのようなパーソナリティを思い浮かべるでしょうか。浮
かび上がってくるのは、「おしゃれ」「カジュアル」「フレンドリー」「落ち着き」などのキーワードという人も、多いかもしれません。
これらを想定したブランドパーソナリティが提供しているものは、コーヒーの味や品質はもちろんのこと、店の設計や接客、Webサイトを含めて同じ「ブランドパーソナリティ」に基づいたスターバックスらしさです。
ブランドパーソナリティがしっかり設計されている同社のサービスでは、ユーザーはあらゆる利用場面において、一貫した「スターバックス」らしいサービスを体験できるのです。
ハーレーダビッドソン
「ハーレーダビットソン」というと、「野性味」「男性的」「独立心」「自由」などのブランドパーソナリティを思い浮かべる人は、多いのではないでしょうか。
そして、ハーレーダビットソンの愛好者のパーソナリティも、同じようなイメージで捉える人が多いかもしれません。
もっとも、ハーレーダビットソンを「物体」として捉えた場合は、排気音が大きく燃費が悪い、保管スペースも困るなどの大型バイクであり、ネガティブなイメージも持ち合わせています。
「機能」や「性能」だけに着目すれば欠点も目に付きますが、「ブランドパーソナリティ」をうまく演出することで、多くの愛好者を惹きつけています。
さらに、ハーレーダビットソンとオーナーの間には、深い絆を感じる人も多いと言われてるものです。
ハーレーのオーナーを見ると、ハーレーダビットソンのロゴのタトゥーを入れていたり、ヘルメットにステッカーを貼り付けたりしている人もよく見かけるのではないでしょうか。
オーナーのこれらの行動の理由としては、「類似性の法則」、すなわち「自分と似たブランドを好きになる」という心理メカニズムが作用していると考えられ、ハーレーダビットソンに対し強く感情移入するように設計されているのです。
ブランドパーソナリティを意図的に定義・マネージすると、ブランドと生活者の間の絆を深められます。
一度ブランドと生活者の絆意識を確立できれば、以後はそのブランドはライバルと比べられることがなく、ブランド名を指定して購入・利用してもらえるでしょう。