近年、マーケティング施策の一環で、ブランドロイヤリティを重要視する企業が増えてきています。
例えば、この商品は「便利だから」「安いから」という理由で選ばれているブランドは、コモディティ化に陥りやすく、次々に「値下げ」や「新たな付加価値」を期待され、他社に顧客を取られる不安がつきまといます。
そんなコモディティ化を避けるためにも、ブランドロイヤリティを構築し、育てていかなければいけません。
そこで今回は、ブランドロイヤリティの重要性やメリット、成功企業の事例をご紹介させて頂きます。
ブランドロイヤルティとは
はじめに、「ロイヤリティ Loyalty」という言葉は直訳すると「忠誠」「絆」「愛情」を意味します。
そして「ブランド」と「ロイヤリティ」を組み合わせた「ブランドロイヤリティ」は、お客様がブランドに対して感じている「信頼」や「愛着」のことを意味しています。
例えば、A社の販売している化粧水が好きで、他メーカの類似の化粧水があっても使い切るたびに、同じA社の化粧水を購入しているお客様は、ブランドロイヤリティの高いお客様と言えます。
このように類似品や類似サービスがあっても、特定のブランドのみを選んでくれるお客様が多いブランドは、ブランドロイヤリティが高い「ブランド」といえます。
ブランドロイヤルティの重要性
ブランドロイヤリティを高めることは、競合優位性を高めることに繋がります。
冒頭の通り、商品やサービスのコモディティ化が進んでいる昨今、「品質」や「価格」で優位性を保てる期間はほんのわずかです。
そこで重要になるのが、ブランドロイヤルティの向上です。
商品・サービスの「品質」や「価格」だけではなく、ブランド価値を向上させることにより、新規のお客様がブランドに愛着を持ってリピートしてくれるようになります。
つまり、ブランドロイヤリティの向上は、お客様が他のブランドを選ぶがあるにも関わらず、あなたのブランドを選び続けてくれるといった、大きなメリットがあるといえます。
ブランドロイヤルティのメリット
メリット1|「顧客単価」が向上する
ブランドロイヤリティが高まることで、お客様はそのブランドが提供する他のサービスや商品にも興味を持ち始めます。
そのため、他のサービスや商品のアップセルやクロスセルに繋げることができ、「顧客単価」を上昇させることがきます。
★アップセル・クロスセルとは?————
アップセルとは、顧客が購入したもの・購入しようとしているものよりも、さらにランクが上の商品やサービスを提案し購買してもらうことを意味しています。
クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに関連する別のサービスを提案し、一緒に購入してもらうことを意味します。
メリット2|広告・宣伝コストを抑えられる
昨今、インターネットやSNSの普及で、ブランドのリピーターやファンが口コミやレビューをインターネット上に書いてくれたり、SNSで投稿やシェアを行ってくれるため、認知度を飛躍的に伸ばすことができます。
その結果として、サービス提供者が大々的に予算を使い広告活動を行わなくても、大規模な宣伝効果を生み出すことができます。
メリット3|リピーターを増やすことができる。
ブランドロイヤリティを高めることにより、お客様はブランドの有益性を強く感じる状態になり、他のブランドを試してみる必要性を感じなくなります。
その結果、お客様は自分のブランドの商品を何度も選ぶリピーターとなってくれます。
ブランドロイヤルティを向上させるには?
それでは、ブランドロイヤリティを高めるためには具体的に何をすれば良いのでしょうか?
お客様自身が多くの知識や情報をインターネットやSNSで手にすることができる昨今、企業がこれらの資源をお客様よりも使いこなせていなせれば、企業は上手くブランドロイヤリティを向上させることはできません。
このようなデジタル時代に、ブランドロイヤリティを向上させるには、優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)の提供が不可欠です。
ブランドロイヤリティの欠如によっておこる、お客様の離反の理由として、製品の価格設定や品質の問題の他に、カスタマーエクスペリエンスに関するものは多く存在します。
ここでは、カスタマーエクスペリエンスに注目して、デジタル時代のブランドロイヤリティを向上させるためのアイデアを3つ紹介します。
★カスタマーエクスペリエンスとは?—————–
カスタマーエクスペリエンスとは日本語で「顧客体験」もしくは「顧客体験価値」を意味します。
詳しくはこちら
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1.SNSの活用
お客様の情報発信が容易になったことは前述で紹介しましたが、その主なプラットホームはSNSです。
そこで企業もSNSを上手く活用することにより、お客様の生の声に耳を傾け、常に新しいニーズが何であるのか把握し続けることで、商品やサービスの質の向上や、ブランドロイヤリティの充実につなげることができます。
2.オムニチャネル戦略
「オムニチャネル戦略」とは、企業とユーザーとの接点となるチャネルを複数設けてユーザーにアプローチする戦略のことをいいます。
近年、SNSやスマートフォンの普及によりユーザーは1つのサイトだけをみて商品やサービスを購入するということが減ってきています。
そこで企業側がユーザーのニーズに併せ、SNSやECサイトなど複数のプラットホームで自社のサービスを提供することで、ユーザーが欲しい商品を好きな時に、好きな場所(プラットホーム)で購入できるようにする戦略がオムニチャネルと言われています。
また、オムニチャネル戦略を採用し注意すべき点としては、カスタマーエクスペリエンスをお客様にとって一貫性のあるものにしていくことが重要です。
お客様が企業やブランドに対して一貫したイメージを持つようになり、快適なエクスペリエンスを受けることでお客様満足度が向上し、結果的にブランドロイヤリティの向上にもつながります。
3. パーソナライゼーション
ビジネスシーンにおいて、一口に「顧客」と言っても、世の中には様々なバックグラウンドを持った人たちが、異なる関心を持ち、それに合わせてニーズも少しずつ違っています。
それにも関わらず、「顧客」というまとまりに対して同じように働きかけを行っているようでは、お客様の心に響くサービスを提供することはできません。
お客様をよく観察し、様々なニーズを把握した上で、顧客リストをセグメント化して、セグメントによって異なるアプローチをとっていくことで、異なったニーズにも効果的に働きかけることができます。
このように、パーソナライゼーションを進めることによって、お客様は企業やブランドに特別感を感じ、ブランドロイヤリティを高めることに繋がっていきます。
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ブランドロイヤルティを測る指標
自社のブランドロイヤルティを高めるためには、現在、自社のブランドロイヤルティがどの程度のものなのかを知る必要があります。
そして、ブランドロイヤルティを測る方法として、特に有効的と言われている手法が「推奨率」を調べることです。
◉推奨率の測定方法
推奨率とは、自社の商品・サービスを家族や友人、同僚に薦める可能性があるかどうかを計測するものです。
海外ではNPS「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」と呼ばれています・
具体的には、お客様に「自社、もしくは自社の商品・サービスを家族や友人、同僚へ薦める可能性はどのくらいありますか? 」という質問を行い、「0~10」の11段階で評価してもらいます。
ここで0~6は批判者、7,8は中立者、9,10は推奨者です。
そして推奨者の割合(%)から批判者の割合(%)を引いたものがNPSの数字となり、この数字が高ければ高いほど、その企業はブランドロイヤルティが高い企業ということになります。
ヒアリングや分析を行って、お客様から現状どれくらいのロイヤルティを獲得できているのかを把握、改善ポイントを見つけることができれば、よりお客様に寄り添った商品やサービス、サポートの提供が可能になります。
ブランドロイヤルティの事例
スターバックス
スターバックスコーヒーは、2017年から独自のポイントプログラムとして「スターバックス リワード」を開始し、多くのお客様に満足していただけるようなロイヤリティプログラムを組んでいます。
「スターバックス リワード」はポイントを「Star」と表現し、お客様の購入額54円(税込)につきStarが1つ集まる仕組みでプログラムを運営しています。
集めたStarはReward eTicketと交換ができ、eTicketは上限700円(税抜)でお好きなドリンクやフード、コーヒー豆1品などと引き換え可能です。
提供開始時は150万人程度だった会員数も、2021年5月には750万人まで伸び、会員の利用率もかなり高い数値を出しています。
「お客様とのつながり」を大切にしているスターバックスコーヒーは、多くのコーヒー愛好家にとってなくてはならないブランドとなりました。
ウォルマート
ウォルマートはアメリカ発祥の、世界最大のスーパーマーケットチェーンです。
食料雑貨宅配サービス「Delivery Unlimited」を開始して予想を上回る実績を上げたウォルマートは、お客様にとって信頼できるオンラインストアになりました。
そんなウォルマートの特に注目したいロイヤリティプログラムは「Walmart+(ウォルマート+)」と呼ばれる会員特典です。
その特徴は、まず年会費を支払うことにより「Walmart+(ウォルマート+)」の会員になることができ、送料無料、食料品の無料配達、ガスの割引、スマートフォンでスキャンするだけで料金を支払える機能など、さまざまな特典を受けることができます。
米国内最大手の小売事業者がこのプログラムを開始したことで、ロイヤルティプログラムが今後も重要なマーケティング戦略であることが証明されました。
lulelemon
lulelemon(ルルレモン)は、主にフィットネス用の衣類を販売するブランドです。
その始まりは、レディス向けのヨガパンツの販売からスタートしました。
★お客様との繋がりを大切にした成功事例
lulelemon(ルルレモン)は、当初から「単にスポーツウェアを売る店舗」でなく、地域のコミュニティ形成に重きを置き、「健康的な生活やマインドフルネスについて語り、可能性に満ちた人生を生きるハブ」として店舗を位置付けることで、お客様とのつながりを大切にしてきました。
また、25-35歳のフィットネスに関心を抱いている女性に向けてのSNSにも力を入れています。
YouTubeではヨガレッスン、インスタグラムではヘルシーな料理を紹介するなど、運動する時間だけでなく生活全体で活用できるコツやテクニックを提供することでミレ二アル世代からの支持を集めています。
このように、lulelemon(ルルレモン)のロイヤルティプログラムは、「販売」と「体験」両方のメリットをうまく組み合わせて提供しています。
お客様のニーズを熟知しているlulelemon(ルルレモン)は、他のブランドには真似できない、ファッションとフィットネスを融合させたニッチな経験を提供している最も参考にするべき「ブランドロイヤリティ」を向上させるための成功事例と言っても過言ではないかもしれません。
星野リゾート
「リゾート経営の達人」を企業のコンセプトに掲げる星野リゾートの強みは、徹底したブランド設計にあります。
★星野リゾートが展開する3つのブランド
【1】圧倒的な非日常感を演出する、ラグジュアリーな大人向けリゾートの「星のや」
【2】地域の魅力を再発見する、“和”にこだわった上質な温泉旅館「界」
【リンク】https://www.hoshinoresorts.com/brand/kai/
【3】洗練されたデザインと豊富なアクティビティを提供する高級ファミリーリゾート「リゾナーレ」
【リンク】https://www.hoshinoresorts.com/brand/risonare/
それぞれ3つのブランドに明確なコンセプトを持たせ、客層を奪い合わないような設計になっています。
各施設ともコンセプト通りの質の高いおもてなしを実践することで、顧客満足度が上がり、企業全体のブランディングに成功しています。
まとめ
今回は、「ブランドロイヤリティ」の重要性やメリット、ロイヤリティを向上させるための方法についてご紹介させて頂きました。
ブランドロイヤリティの向上は、お客様が他のブランドを選ぶ機会があるにも関わらず、あなたのブランドを選び続けてくれるといった、大きなメリットがあるといえます。
コモディティ化が進む現代において、他社競合との「差別化」は必要不可欠です。
まずはその第一歩として、本記事で紹介した内容を基に、「お客様に愛されるブランドづくりに必要なものとは何か?」を考えてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。