「デザインマネジメント」をご存知ですか?
年々デザインの役割は増えてきており、経営手法にもデザインの考え方は非常に役立ちます。
また、そういったデザインマネジメントは中小企業こそ取り入れるべきなのです。
この記事では、
- デザインマネジメントの概要
- 中小企業がなぜデザインマネジメントを取り入れるべきなのか
- デザインマネジメントの実行方法
など、詳しく解説していきます。
デザインマネジメントとは?
「デザインマネジメント」とは、デザインを経営の中心に据えて、製造からマーケティング、アナウンス、製品、コマーシャル、販売方法までを統一させる経営手法を指します。
「デザイン」は服や車、カフェの内装、ロゴ、広告、グラフィックなど意匠や形態など視覚的な表現を用いて、表意者の意図を伝える意味で使われることが多い言葉です。
しかし、近年では「デザイン」の意味は視覚的な意味だけにとどまりません。
ユーザーの価値観や好みを継続的に把握し、それらの情報に対して企業の人材やモノ、情報、時間などを最大限に活用して経済効果を発揮する諸活動全般を指します。
一方、「マネジメント」とは、P.H.ドラッガーが1973年に刊行した『マネジメント』で一躍有名になった言葉であり、組織が成果を向上させるために必要な道具・機能・機関全般を意味しています。
責任者であるマネージャーは組織が果たすべき目標を明確化し、達成するための組織を運営実施することです。
さらに組織を発展させるために既存人材の能力を最大限に発揮できるような、相応しい活躍の場を与えて育成しなければならないと定義されています。
デザインの役割は拡大し続けており、BtoBやBtoCの場面だけにとどまりません。
現代は、各企業において戦略的にデザインをマネジメントに取り入れることが重視される時代だと言えるでしょう。
例えば、「デザイン思考」という言葉は、経営者の方なら一度は聞いたことのある言葉かもしれません。
「デザイン思考」では、デザインを考える際に使用するプロセスをビジネスにおいて使用し、課題解決を目指す経営手法の一つです。
「デザイン思考」については「デザイン思考とは?今すぐできる5つのプロセスと合わせて解説!」の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらも参考にしてください。
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デザインマネジメントが注目される背景とは?
近年「デザインマネジメント」が注目されているバックグラウンドとしては、従来の経営手法による経済効果が鈍化していることが原因と考えられます。
戦後の日本は1973年の石油危機までは、概ね上り調子の好景が続いていました。
特に高度経済成長期には、多くの企業で技術を育てることに注力し、良質の製品をリーズナブルに短期間で仕上げて企業利益を上げるサイクルを確立しました。
ですがバブル崩壊以降の1990年代から今日にかけて、不況の影響で物が売れにくい時代が続いていると言われています。
その結果、コストダウンして多くの人に購入してもらう経営手法、つまり、企業経営の主要な戦略は販売戦略に移行しているのです。
企業同士が過当なコスト削減競争に陥り、共倒れになってしまうケースも珍しくなく、消滅していった企業もいくつもありました。
ですが、そのような中で売上を伸ばしている企業も存在します。
代表的なのは、Apple、アウディ、スターバックスなどでしょう。
これらの企業は、「デザイン」を企業経営の要と捉え、デザインマネジメントに注力している点が注目されています。
グローバル化を進める多国籍企業では、東南アジア諸国や中国などとのコスト削減競争が必須課題です。これは多国籍企業にとどまらず、国内における中小企業でも同じことです。
従来の技術や販売方法を中心とした経営手法から、問題解決のためデザインを中心とした「デザインマネジメント」のへのシフトが必要不可欠となってくるでしょう。
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デザインマネジメントの役割とは?
先の流れを踏まえると、日本は産業や国の仕組みの改革を求められている時代だと言えるでしょう。
このような場面では、デザインの考え方や力が大いに役立ちます。
企業プロジェクトには多くの専門家が集結するため、参加メンバーのベクトルの統一性を持たせなければなりません。
そのためには、戦略的に目標を立てて達成するために、立案・課題着手前に見通しをたてなければなりませんよね。
そこで役立つのが、正にデザインマネジメントなのです。
デザインマネジメントでは、物語を紡ぐように一貫性のあるテーマを決めてシナリオを組み立てて、プロジェクトを統括します。
それによって、場当たり的な対応や、逆に予定調和を防ぐのも可能です。
「デザイン」と言っても色や形などの視覚だけにとどまらず、人の潜在意識にある新しい価値を呼び起こし、サービスにつなげるようなアプローチも含まれます。
デザインマネジメントを取り入れると、企業が抱える問題の本質を正確に捉えやすくなります。
問題を分析し解決策を見出すためには、企業の歴史や文化、環境の把握、さらに社会情勢や環境なども考察プロセスに取り入れて整理しなければなりません。
問題の本質を捉えることによって、固定概念から開放され、目標達成のために必要な条件を客観的に把握し、斬新なひらめきを創出する機会を得られます。
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中小企業にデザインマネジメントが必要な理由とは?
先述した通り、中小企業こそデザインマネジメントに取り組むべきなのです。
ここからは、中小企業にデザインマネジメントが必要な理由について解説していきます。
何より、中小企業は大企業よりも働く人数も少なく、デザインマネジメントを取り入れやすい環境にあります。
デザインマネジメントが目指す究極の形は、経営者や管理職の人材が、デザインの重要性やデザイナーの考え方について見識や理解が深い状態です。
その状態を生み出すことで、デザイン・技術・営業など各部署が一丸となり、コンセプトに従ったサービスや製品を市場に提供できるようになります。
大企業では各部門が独立していることも多く、目標数値も部署ごとの縦割り思考で捉えがちかもしれません。
それに対して、中小企業では部署が別れていたとしても、部署間の連絡が密であり、一人で複数のポジションに就いている場合も多いものです。
特に、部長や課長などの管理職の人は、現場に近い立ち位置で従事している人も珍しくないでしょう。
複数のポジションをこなす人や部署間の枠を超えて活動する人にとっては、デザインマネジメントやデザイン思考は自然に受け入れやすい可能性を秘めています。
よって、中小企業こそ「デザインマネジメント」を積極的に導入するべきでしょう。
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デザインマネジメントの成功方法とは?
中小企業のデザインマネジメントでは、各部署が一体となることが重要です。
これが実践できている環境は、既にデザインマネジメントが実行できていると言えるでしょう。
中小企業のデザインマネジメントが成功するには、経営者がデザイン思考を身に着ける、または経営指針として示すのが望ましいです。
そのためには、デザイン思考が実現しやすい環境を整える必要があり、時には従来の方針から大きな転換を迫られるかもしれません。
しかし、日本人はビジネスモデルを柔軟に変更する能力があると言えるので、あまり不安になることはありません。
全世界で100年以上存続している会社は約3,000社あることがEvernoteの調査で分かっていますが、そのうち8割が日本の企業です。
日本人は、デザイン思考の基本である「洞察・観察・共感」のプロセスを繰り返す企業文化が根づいており、消費者目線で商品やサービスについて考えられる人が多いのが特徴です。
このことから、日本人はビジネスモデルを柔軟に変更する能力を備えていると考えられます。
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デザインマネジメントの実行方法とは?
ここからは、デザインマネジメントを始めるステップを解説していきます。
- 組織改革の見直し
- 組織改革を進める
- 浸透プロセスの循環
- デザインマネジメント
STEP1.組織改革の見直し
デザインマネジメントを始めるには、まずは組織改革の見直しから着手します。
組織にデザインが組み込まれているのがデザインマネジメントの前提ですから、
- 「デザイン機関とトップの関係が密接であること」
- 「継続的な教育啓蒙活動」
が社内で支持されている状態を作り出しましょう。
STEP2.組織改革を進める
その上で、デザイナーの具現化能力やデザイン資源のマネジメント能力を計測しながら次のようなプロセスを踏みます。
- 「組織全体でデザインに関与すること」
- 「コミュニケーションの触媒としての物や視覚的要素の整備」
- 「デザインの形態化によって生み出される新しい意味や価値の提示」
をキーとして、組織変革を進めていきましょう。
STEP3.浸透プロセスの循環
さらに、デザインの媒介としての物や触媒としてのデザイナー能力を活用しながら、
- 「新たなデザインへの意志」
- 「形態化のプロセス」
- 「生み出されたデザイン」
- 「形態が生み出す新たな意味」
と浸透プロセスを循環させます。
STEP4.デザインマネジメント
組織変革がある程度進んだら、デザインマネジメントに着手します。
デザインマネジメントは
- 「デザインポリシー」
- 「デザインマネジメント組織とディレクター」
- 「デザインマネジメントシステム」
を活用します。
デザイナーの具現化能力やデザインマネジメントとの能力のバランスを調整しながら、経営効果を検証していきましょう。