現代のビジネスにおいては、その多くが企業が活動しています。
もちろん、企業には規模の大小がありますし、個人事業主として活動している事業主体がいることも間違いありません。
大規模な営業活動や事業を展開するには、やはり企業のリソースやパワーが必要となるシーンが多くなる可能性がありますが、会社という組織において多くの人が働くうえでは、命令系統や担当部署などといったポイントが重要になります。
このような担当や指揮・命令系統を具体的に整理したものが「組織」と呼ばれます。
組織というものは、会社という組織体制に限らず、人類の歴史の中でも長く用いられてきたものですが、その在り方については時代や場面において大きく変わってきます。
この記事では、組織における新しい概念である「ホラクラシー組織」という考え方、そして、ホラクラシー組織のメリットやデメリットなどについて解説します。
「ホラクラシー組織」の概要と特徴
「ホラクラシー組織」とは、一言で言えば「ヒエラルキー」つまり上下関係による階層によってではなく「役割(ロール)」によって構成される「自主管理型組織」のことを指します。
役割によって自主管理されるというのは、意思決定を行うのが上位ヒエラルキーに所属する人々、つまり「上長」ではなく、あくまで自分たちで決めていくということを示しています。
ヒエラルキー組織においては、あくまで現場の社員が意思決定するのではなく、その社員を管理する立場である課長などの管理職がいて、その管理職が意思決定をします。
加えて、管理職が意思決定をするためには経営層や経営者・社長などさらに上位ヒエラルキーに所属する人々の意思決定が反映されるといった具合の意思決定が行われます。
つまり、ヒエラルキー型組織では、社員個々人が自主的に意思決定を行うことは、仕組み上できないということになります。
ホラクラシー組織においては、社員個々人の意思決定がそのまま「サークル」と呼ばれる「チーム」の意思決定にダイレクトに作用することが可能です。
ホラクラシー組織のメリット
現場で働いている社員個々人が意思決定をするというホラクラシー組織を採用することによるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
まず、ホラクラシー組織を採用することによって、社員個々人が主体的に業務に邁進し、自主的に役割に集中することができるというメリットがあります。
意思決定に個々人が関わることによって、モチベーションの向上を含んだ、エンゲージメントの向上という効果も期待できると同時に「意思決定の早さ」と「柔軟性」も、ホラクラシー組織の特徴のひとつです。
従来型のヒエラルキー型組織やピラミッド型組織においては、新たな意思決定を行うためには、管理職や部門長が、一つずつ上の階層に従う必要があります。
いかに優れた提案や提言であったとしても、上長や部門長がその提案や提言を受け入れなければ、それは無意味なものとなってしまうのに加え、意思決定までに非常に長い時間がかかります。
しかしながら、ホラクラシー組織においては、上長に顧ることなく意思決定が行えるため、非常にスムーズに行なうことができます。
加えて、一度行った意思決定を現場レベルで変更できるため、意思決定にも柔軟性が生まれやすいのです。
状況が変化するビジネスの場面においては、ホラクラシー理論がもつ、この「意思決定の早さ」と「柔軟性」はとりわけ重要性が高いのです。
ホラクラシー組織のデメリット
ホラクラシー組織には、意思決定の早さや柔軟性、そして社員個々人のエンゲージメントの向上といったメリットがある一方で、メリットがあるものには必ずデメリットもあります。
では、ホラクラシー組織のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、ホラクラシー組織は社員個々人が主体的に動くことを前提とした組織です。
そのため、社員個々人が「自分に意思決定権がある」という前提がない場合、かえって意思決定に時間がかかってしまいます。
加えて、意思決定者が複数になることによって、責任の所在があいまいになることも考えられます。
ホラクラシー組織において、従来型の管理職や部門長を残してしまうような、中途半端な形に落ち着いた場合、部門長や管理職は、「意思決定はしないのに責任だけを負う」という状態に追い込まれてしまいます。
このような状態になると、部門長や管理職の反発を生む可能性も高くなります。
ホラクラシー組織を自社の組織体系に取り入れるためには、責任の所在を明らかにしたり、意思決定を行う訓練などを施しておく必要があるでしょう。
ホラクラシー組織を自社に導入するには
ホラクラシー組織を取り入れたいと考えた場合に、いきなり全社的に導入することは、やはり難しいと言わざるを得ません。
デメリットを考えれば、いきなりホラクラシー組織の体制を全社に導入すると大きな混乱や反発を生んでしまう結果にもなりかねないでしょう。
そのため、自社の1つの部署や、1つのプロジェクトチームなど、小さな単位の組織で導入してみて、その反応を見ながら、全社的に導入してみるといった方法が現実的です。
加えて、試験的に導入したプロジェクトチームの事例を全社に共有したり、改善点を探ってフィードバックを与えることによって、より円滑にホラクラシー組織を導入していく下地ができていきます。
まとめ
多数の人が集まって営業行為を行う会社組織において、意思決定を誰が行うのかというのは大きな問題です。
中には、いわゆる「ワンマン社長」と呼ばれるように、社長一人がすべての決定を担っているという組織もある一方で、優秀な人材がそろっている会社やチームにおいては、社員個々人が意思決定を行うほうが、結果的に有益でスピーディな決断が下せるケースもあります。
ですが、組織体制の変更は大きな反発や混乱を招く可能性もあるため、自社に対してホラクラシー組織を取り入れる際には、綿密な議論と訓練を重ね、小規模なチームや部門から段階的に導入を検討するのが現実的でしょう。