近年認知度の高まりつつあるSDGsとは、持続可能な社会を創り上げるために欠かせない目標を指します。
そして、より良い社会へ導く行動指針でもあるため、SDGsを取り入れる企業の割合も増加傾向にあるのです。
しかしながら、行動指針となるSDGs自体に、違和感を覚えている人は少なからず存在し、新たな問題点も浮上しているのが現状です。
ここでは、SDGsに潜む問題点が何か、どのように注意をすべきかについて解説していきます。
SDGsとは
SDGsとは、2015年9月に、国連サミット加盟国の全会一致によって採択された国際目標を指します。
SDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲載されており、持続可能な世界のための開発目標として定められました。
社会のSDGsの問題点
SDGsは、より良い社会を作るために決められた目標ではありますが、いくつかの問題点も浮き彫りになっています。
その問題点とは
・目標を達成するのに時間がかかる
・国民性によって言葉の認識のすれ違いが起きやすい
・1人だけではなく社会全体で取り組む必要がある
・SDGsと向き合う姿勢や優先課題が国によって異なる
・感染症対策とSDGsの達成の両立は困難である
・指標となる数値を達成するだけでは根本的な解決にならない
以上の6点です。
それぞれの問題について説明していきます。
目標を達成するのに時間がかかる
SDGsの17の目標は、とても意欲的に設定されており、実現不可能、もしくは短期間では簡単に実現できません。
例えば、SDGsの1つめ「貧困をなくそう」は「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に、終止符を打つ」ことを目指していますが、一朝一夕に解決できる課題ではありません。
意欲的なのは素晴らしいですが、実現不可能な目標を立てても理想で終わるおそれがあるとも言われています。
国民性によって言葉の認識のすれ違いが起きやすい
地域や文化、国民性によって言葉の認識がすれ違いやすく、適切な解決方法が見つからない、課題への取り組みが遅れるなどの問題があります。
例えば、SDGsの6つめ「安全な水」では、安全の定義は地域によって異なるため、1つの対策が全ての地域には当てはまらず、独自の対策が必要です。
その対策は、他者から見れば「自分とは異なる取り組みであるから間違いだ」といった意識を持つ可能性もないとは言えません。
1人だけではなく社会全体で取り組む必要がある
SDGsは、1人で解決できる目標ではなく、その周りの環境や人々を巻き込み、社会全体で取り組む必要があります。
具体的には、SDGsの5つめ「ジェンダー平等を実現しよう」というものです。
最近では、大企業などを中心に、積極的に女性を役員へ登用するような事例も、増えてきました。
しかしながら、大企業に比べて中小企業などでの取り組みは遅れがちであり、男女平等な社会が実現しているとは言えないでしょう。
社会を構成する様々な起業家や活動家が足並みを揃えられていない現実が、SDGsの取り組みの難しさを表しています。
SDGsと向き合う姿勢や優先課題が国によって異なる
SDGsは、国連が掲げた地球規模で解決に取り組まなければいけない目標です。
しかしながら、SDGsをしっかりと認知し、解決の必要性を感じる人や取り組む余力のある人しか取り組めない現状があります。
特に、貧困や情報格差がある開発途上国の人々は、彼らの置かれている状況の改善が優先のため、十分に取り組めません。
SDGsへの取り組みは、時間も費用もかかり、必ずしも全ての国が同じように優先的に取り組めないことも、SDGsの難しさと言えるでしょう。
感染症対策とSDGsの達成の両立は困難である
2030年までの達成に向けての、取り組みが進められているSDGsですが、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、進捗へ悪影響が生じています。
経済活動の減速で失業、学校の閉鎖で教育の機会を享受できないといった、大きな問題によって、SDGsの各項目の進捗が遅れる、または逆戻りしているのです。
さらには、感染症の拡大防止とSDGsの取り組みは、必ずしも相性が良いとは言えないことも分かりました。
例えば、昨今はプラスチックの削減に取り組む事例が増えていますが、感染症拡大防止のために使い捨て容器の使用を再開したというケースです。
このような相性の悪さを認識しつつも、感染症が流行する世の中で感染症対策とSDGsの達成が両立できるよう、より一層の工夫が求められています。
指標となる数値を達成するだけでは根本的な解決にならない
SDGsの各目標には、具体的な数値指標が定められていますが、この数値が指標として妥当かが疑問視されています。
加えて、ターゲットに定められている数値指標を達成するということが、本当に課題を解決したと言えるのかも疑問です。
定められた数値だけに目を向けて、達成しようとせず、現状やその裏にある背景に着目しなくては、根本的な解決は不可能と言っても過言ではありません。
企業が取り組むSDGsの問題点
企業が、SDGsの達成に取り組むことで、企業は売上・利益の向上、コスト削減といったメリットを、得ることができます。
しかしながら、目先のメリットばかりにとらわれて、ただ闇雲に取り組めば良い訳でもありません。
「無意識のSDGsウォッシュ」「自社の事業とSDGsの相性」「達成目標として共通の理解が得られにくい」「SDGsを取り組むための費用が発生する」といった企業が、SDGsに取り組む際に起こりやすい問題、4点について解説します。
無意識のSDGsウォッシュ
まず、SDGsウォッシュとは、英語で「ごまかし」「粉飾」を表す「ホワイトウォッシュ」と「SDGs」を組み合わせた造語を指します。
つまり、実態以上にSDGsに取り組んでいるように見せかける企業を表した言葉です。
実際、SDGsと結びついている社会貢献の肩書きを手に入れるために、SDGsを取り入れる企業も存在します。
SDGsを取り入れるのは、SDGsに対する正しい理解が出来ているのかどうか分からないと示しているのと同義です。
SDGsに取り組む際は、定期的に自社の活動全体の適切な管理を行い、SDGsウォッシュを防ぐよう心掛けるのが、大切になります。
自社の事業とSDGsの相性
SDGsウォッシュを防いでも、自社の事業とSDGsの相性が合わないのに、無理やり取り入れてしまうケースもあります。
その場合、SDGsばかりに目を向けて本業がおろそかになることや、本業からずれてしまうことが考えられます。
それに、企業でSDGsに取り組むにあたって、自社の経営戦略上の課題解決や利益の追求だけを考えれば良いとは限りません。
長期的な視野での立場に立つ者、取引先へ新しい価値を提供する者、そして新しいビジネスモデルを構築する者、それぞれの役割同士のコミユニケーションを大事にし、自社としてSDGsをどう捉え、どうビジネスに変換していくかが重要になります。
達成目標として共通の理解が得られにくい
先述しましたが、SDGsという言葉自体は世間や組織内にも浸透したものの、認識のズレが生じやすく達成目標が、理解しにくいのは変わりません。
企業が掲げる目標に「より公正な」や「さらにクリーンな」などの抽象的な言葉が、使われている現状です。
SDGsに限った話ではないですが、人によって解釈が異なる表現は、達成目標として共通の理解が、得られにくいでしょう。
加えて、取り組む側としても活動の統率が難しくなり、効果の検証も困難になってしまいます。
よって、共通の理解や効果の検証を得るために、先述したそれぞれの役割同士のコミユニケーションを大事にする必要があります。
SDGsを取り組むための費用が発生する
SDGsの取り組み内容次第ですが、SDGsの取り組みを推進するための費用が発生することもあります。
例えば、新規事業への取り組み、環境に配慮した商品や製品購入、社員向けの待遇改善費、社員向けの教育研修費などです。
もちろん、全く費用をかけずにSDGsを推進するのは可能ですが、より大きく社会や環境に貢献するのであれば、ある程度の費用負担を考慮しておきましょう。
ですが、その費用自体がデメリットと感じられる場合もあるため、無理にSDGsに取り組む必要はありません。
問題点の解決策
企業が、取り組むSDGsおいて、浮き彫りになった問題点を解説してきました。
「SDGsウォッシュ」「自社とSDGsとの相性」「共通の理解」「費用の発生」などを踏まえ、今後気をつけるべきことは何なのかを解説していきます。
まず、自社でSDGsに取り組む前に、SDGsに掲げられた目標が、なぜ起こっているのかを理解する必要があります。
社会貢献の肩書き欲しさに流されるまま取り組むのは、言語道断です。
SDGsの目標となるその根源に、どう働きかければ永久的な議題解決が可能になるのかということを考えましょう。
次に、企業は自社の状況と指標を照らし合わせます。
SDGsの目標は、人類がみな解決に向けて取り組むものが前提ですが、現状は全ての人が同じ状況に置かれているわけではなく、立ち位置が様々です。
そのため、世界の基準に合わせて行動することよりも、まずは自分の状況に合った行動をすることが大切です。
加えて、自社以外の取り組み方法をそっくり真似せず、参考程度にしてください。
自社では何ができるか、本業を成長させるためにどうSDGsを取り入れるかなどを考えて実行していくことが、大切です。
最後に、将来なりたい姿を想像して取り組むことを忘れないでください。
SDGsに掲げられている目標を全て、短期間で解決することは、不可能です。
10年後、20年後の自分が目指す将来像を描くことで、より具体化された取り組みが思いつくはずです。
社会貢献や環境保全活動を、実践している企業は、継続していくことで着実に、顧客からの信頼を得て、企業価値が向上していきます。
まとめ
SDGsの達成に向けて、多くの企業で取り組みが進められてはいるものの、正しい認識が得られておらず、適切な行動に反映されていない部分もあるかもしれません。
今後SDGsの更なる推進のために、個人や企業への理解の浸透と目的意識の強化が重要となります。
また、SDGsは短期間での達成はできず、長期での取り組みが必須です。
取り組むにあたっては、新たな費用も発生することでしょう。それでも、SDGsへの理解を深めると同時にどのような問題があるのかも把握し、自社のビジネスプランに組み込めるかどうかを検討し、未来への投資を一考してみてはいかがでしょうか。