電子契約とは
電子契約とは、従来紙の書面によって交わしていた契約を、電子データにして保存・管理することです。
近年では、働き方改革や新型コロナウイルスの流行から、従業員のリモートワークが進む中で、押印や直筆署名が不要な電子契約を利用する企業が増えています。
電子契約では、押印や直筆署名の代わりに電子署名やタイムスタンプを記録します。
電子署名は、本人の意思であること、タイムスタンプは書類がいつ作られたものであるかを証明します。
したがって、電子署名やタイムスタンプは契約の内容に改ざんがないことを保証しています。
電子契約と書面契約の違い
電子契約と書面契約には、以下のような違いがあります。
電子契約 | 書面契約 | |
形式 | PDFデータ | 紙 |
署名方法 | 電子署名 | 印鑑 |
本人性の担保 | 電子証明書 | 印鑑証明書 |
完全性の担保 | タイムスタンプ | 契印、割印 |
作成方法 | 電子契約システムにアップロード | 紙に印刷 |
送付方法 | インターネット通信 | 郵送や手渡し |
保管方法 | サーバーに保管 | 書棚に保管 |
必要コスト | 電子契約システムの利用料 | 印刷代、用紙代、郵送代など |
紙の書面契約では、印鑑による押印やペンによる署名などを行っていました。
その場合、実物の契約書を送付する必要があるほか、押印や署名のために出社などをする必要があり、手間と時間がかかっていました。
しかしながら、電子契約であれば、スマートフォンやパソコンがあれば、どこにいても契約を交わすことができるため、時間やコストの削減に繋がります。
電子契約と法律
電子契約に関わる法律には電子署名法、電子帳簿保存法、e文書法などがあります。
詳しく解説していきます。
電子署名法
電子署名法は、電子署名の効力を定めた法律です。
2001年4月1日に施行された法律であり、電子データとして作成された書類であっても本人による電子署名がされていれば紙に署名・押印した契約書と同じ効力が認められるというものです。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の電子データによる保存を認めた法律です。
1998年7月に制定された法律であり、2005年3月、2015年9月30日、2020年10月1日に改正されています。
帳簿の他にも決算関係書類(棚卸表、貸借対照表、損益計算書など)やその他の契約書や領収書及びその写し、見積書、請求書、注文書などの電子データによる保存も認められています。
加えて、それらの電子データの保存方法についても定められています。
e文書法
e文書法は、契約書などの文書を電子データで保存することを認めた法律です。
2005年に制定された法律であり、電子帳簿保存法との違いは、対象となる文章となっています。
電子帳簿保存法は、国税関係の書類が対象であり、e文書法は保存が義務付けられているすべての文書が対象です。
電子契約のメリット
電子契約には、契約の効率化やコスト削減、コンプライアンスの強化などのメリットがあります。
契約業務を効率化できる
紙の書面契約の場合は書面を作成したあと印刷、製本、押印、封入、郵送する必要があります。
郵送してから相手の署名や押印がされ、返送してもらい契約が成立しますが、ここまでで2〜3週間ほどかかることがあります。
加えて、紙の契約書は、ファイリングと書棚への保管も必要となり、途中で契約内容が変われば、再度これらの作業を行うことになります。
一方で、電子契約であれば、電子契約システムに加入してオンラインで文書をやりとりするだけなので、早ければ数分で作業が完結します。
保管もサーバー上で行うので物理的なスペースの削減になり、必要があれば検索も容易です。
契約コストを削減できる
紙の書面契約では、紙代や印刷代、郵送代などがかかります。
印紙代法で、定められた文書の場合は印紙税がかかるため、収入印紙を添付する必要があります。
これらの作業を行うための人件費も、かかります。
電子契約であれば、紙代や印刷代、郵送代はもちろんのこと、印紙税もかかりません。
業務フローが、簡潔になるので人件費も抑えることができます。
ただし、電子契約システムの利用料がかかる点には、注意が必要です。
コンプライアンスを強化できる
紙の書面契約の場合、事故や災害、盗難による契約書の紛失や、契約内容の改ざんの恐れがあります。
電子契約では、契約書をサーバーに保管するため、基本的に紛失することはありませんし、データが破損しても復元することが容易です。
電子署名とタイムスタンプを利用することで、改ざんを防止することができます。
電子契約システムでは、契約の締結状況や相手の確認状況を確認することもできるので、現在契約が、誰によってどこまで進行しているのか可視化することも可能です。
電子契約のデメリット
電子契約にはメリットだけでなく、デメリットや注意点も存在します。
契約相手の理解が必要
契約を交わすには、契約相手との合意がなければいけません。
契約相手が、電子契約を拒否して紙の書面契約を求めてきた場合には、電子契約ではなく紙の書面契約を交わすことになります。
電子契約を交わす際には、契約相手にも電子契約システムを利用してもらう必要があるため、契約相手が元々電子契約システムを利用していなかった場合には、手続きや操作方法をフォローしなくてはならないケースも考えられます。
契約相手が電子契約に合意した場合でも、紙の書面契約と二重に対応しなければならないケースも存在します。
すべての契約に対応できるわけではない
多くの契約は電子契約が認められていますが、法律により一部では紙の書面契約しか認められていないものもあります。
電子契約が認められていない契約は以下のとおりです。
契約 | 理由 |
定期借地契約書 | 権利関係を明確にしておく必要性が高いため |
定期借家契約書 | |
宅建業者の媒介契約書 | |
不動産売買における重要事項証明書 | |
任意後見契約書 | 公正文書の作成が義務付けられているため |
訪問販売電話勧誘販売、連鎖販売取引などで交付する書面 | 消費者保護のため |
なお、2022年9月1日時点の内容であり、今後は変更となる可能性もあります。
業務フローの変更が必要
紙の書面契約から、電子契約に移行する際には、業務フローの変更が必要となります。
電子契約への、信用度や変更の煩わしさから、抵抗を覚える従業員もいるなかで、電子契約に移行するには、マニュアルやサポートを万全にして移行作業に取り組む必要があります。
電子契約は、慣れればスムーズな契約が交すことが可能になるとはいえ、慣れるまでは業務効率が落ちるケースもあることに注意しましょう。
まとめ
電子契約とは、従来紙の書面によって交わしていた契約を、電子データにして保存・管理することです。
電子署名やタイムスタンプによって本人性や完全性を担保し、契約が有効なものであると認められます。
電子契約は、業務の効率化やコスト削減、コンプライアンスの強化などのメリットがありますが、相手の合意が必要なことやすべての契約に利用できるわけではないこと、業務フローの変更が必要なことなど注意すべき点も存在します。
自社に合った電子契約システムを選択し、スムーズな契約ができるようにしましょう。