女性活躍推進法が、2016年から施行されています。
女性活躍推進法は、女性がより働きやすい社会を目指して制定された法律です。
そこには、一般事業主が必ず行わなければならないことも明記されていて、会社を運営している人は、無視できません。
女性活躍推進法は、どのような理由から制定された法律なのか、また、一般事業主は何をすれば良いのかなどを以下で説明していきます。
女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法は、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。
2016年(平成28年)4月から全面施行され、2025年度(令和7年度)末までの時限立法です。
時限立法とは、有効期間が限定されている法律のことです。
女性活躍推進法ができた背景
現在の日本社会では、少しずつ改善されているとはいえ、まだまだ男女で雇用状態に差があります。
女性の中には就職を希望していても、就職できない人が約171万人います。
加えて、うまく就職先を決められたとしても、出産、育児により約5割の女性が退職してしまう女性が多くいます。
育児が落ち着き、再就職をすることになっても、女性の多くはパートなどの非正規雇用になることが多く、実際働いている女性の約5割は、非正規雇用者です。
管理職についている女性の割合もだんだん上がっているとはいえ、1割程度しかなく、他国と比べても少ない状況です。
一方で、日本は人口減少社会に突入し、労働力不足が懸念されています。
昨今のグローバリゼーションの風潮のなか、社会の多様性をより豊かにすることが求められますが、それらの問題の解決にも、女性の活躍が欠かせません。
このような社会的背景から女性がより働きやすい社会を実現するために、女性活躍推進法が制定されました。
女性活躍推進法の基本原則
女性活躍推進法には3つの基本原則が定められています。
・女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定
的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
・職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と
家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
・女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
これらの基本原則をもとに、女性が活躍しやすい社会を目指していくことが重要です。
女性活躍推進法で一般事業主がやるべきことは?
女性活躍推進法では、一般事業主に事業主行動計画の策定と届出、そして女性の活躍に関わる会社の情報の公表を求めています。
一般事業主行動計画の策定・届出
行動計画の策定にはまず、現状把握が必要です。
女性労働者の割合、労働時間、平均勤務年数、男女の賃金差など女性の活躍に関わる現在の会社の状況を計算して求めます。
その後、実際に行動計画を策定するのですが、計画には「計画期間」「数値目標」「取組内容」「取組の実施時期」を入れなければなりません。
加えて、策定方法は事業主の規模で分けられています。
労働者数301人以上の一般事業主
労働者数301人以上の一般事業主は、原則として計画に入れる項目を
①女性労働者 に対する職業生活に関する機会の提供
②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」
という項目から1項目以上、合計2項目以上から選択する必要があります。
①女性労働者に対する職業生活に 関する機会の提供には、女性労働者の割合や職種などの項目があります。
加えて、② 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備には、残業時間や有給休暇取得率などの項目が含まれます。
それぞれの項目の数値をそれぞれの会社で計算し、行動計画に取り入れましょう。
労働者101人以上300人以下の一般事業主
労働者101人以上300人以下の一般事業主は原則として数値目標を1つ以上定める必要があります。
女性活躍推進法が最初に施行されたときは、労働者101人以上300人以下の一般事業主の行動計画の策定は、努力義務でしたが、法律が改正され、2022年4月から義務付けられました。
労働者100人以下の一般事業主
労働者100人以下の一般事業主は、行動計画の策定は努力義務です。
策定を行う場合は、数値目標を1つ以上定める必要があります。
そして、行動計画を策定したあとは、社員にも公表し、実際に計画通りに進んでいるかを定期的に確認することが法律で定められています。
女性の活躍に関わる情報の公表
一般事業主は、行動計画の策定前に、自分の会社の女性の活躍に関わる情報を把握しなければなりませんが、その情報は公表しなければなりません。
どのような情報を公表するかは事業主の規模で異なり、規模が大きいほど要求されるレベルが高くなります。
労働者数301人以上の一般事業主
労働者数301人以上の一般事業主は、以下の情報を公表しなければなりません。
①「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」から「男女の賃金の差異」を含んだ2項目以上
②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」から1項目以上
の合計3項目以上の情報を公表する必要があります。
特に「男女の賃金の差異」の項目の公表は、2022年7月8日から義務付けられました。
労働者101人以上300人以下の一般事業主
労働者101人以上300人以下の一般事業主は
①「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」
②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」
の全項目から1項目以上の情報を公表しなければなりません。
労働者100人以下の一般事業主
労働者100人以下の一般事業主は、’公表は努力義務となっています。
加えて、全項目から1つ以上の情報で構わないとされています。
女性活躍推進法のえるぼし認定基準とは?
女性活躍推進法では、行動計画を策定、届出をした一般事業主の中で特に優良な状況であるものは、えるぼし認定が得られます。
そして、えるぼし認定の中でもさらに優良であれば、プラチナえるぼし認定が得られます。
えるぼし認定のメリット
えるぼし認定を得られると、その認定を商品や広告などを使ってPRできます。
えるぼし認定されているということは、女性が働きやすい環境が整っている良い会社であるという印象を世間に広められます。
また、えるぼし認定は公共調達でも加点され、より調達が容易になります。
加えて、日本政策金融公庫による融資制度を通常よりも低金利で利用できます。
女性活躍推進法の改正
これまで、女性活躍推進法は、何度か改正されてきました。
以下では最近の改正とそのポイントを説明します。
2022年4月の改正ポイント
2022年3月までは、行動計画の策定と届出は労働者が301人以上の一般事業主のみが義務化されていて、労働者300人以下の一般事業主は努力義務でした。
しかしながら、2022年4月以降は、労働者101人以上300人以下の一般事業主も行動計画の策定と届出が、義務化されました。
2022年7月の改正ポイント
2022年7月8日以降、労働者301人以上の一般事業主は男女の賃金の差異の把握が義務化され、必ず公表しないといけなくなりました。
今後も女性活躍推進法は改正され続けるでしょうが、適宜、改正された法律に乗っ取って行動計画を策定しましょう。
まとめ
女性活躍推進法の概要、そして一般事業主が行わなければならないことを紹介しました。
女性の働きやすい環境を作ることは、社会全体だけでなく、それぞれの会社でも重要課題です。
女性活躍推進法にもとづいて策定した行動計画に乗っ取って、女性が活躍できる会社を目指しましょう。