皆さん、「ナレッジマネジメント」という言葉をご存知でしょうか。
言葉は耳にしたことがあるけれど、一体どういう意味を表すのか分らない、という方も多いのではないでしょうか。
ナレッジマネジメントとは、経営手法の一つです。
ナレッジとはデータ・知識・技能・ノウハウなどを指し、さらに言語化されていない暗黙知が含まれます。
この記事では、ナレッジマネジメントについての意味やメリットについてを解説します。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、企業が保持している情報・知識と、個人が持っているノウハウや経験などの知的資産を共有して、創造的な仕事につなげることを目指す経営管理手法です。
簡単に説明すると、社員たちが業務を行う中で得た知識=ナレッジを、会社の全体で共有し生かすという経営手法の一つです。
ナレッジマネジメントはなぜ注目されているのか
1995年に日本人研究者2人が英語で出版した『知識創造企業:日本企業はどのようにイノベーション・ダイナミクスを創造したか』が世界でベストセラーとなって高い評価を受け、日本に逆輸入されたことによって注目されています。
注目される背景
従来から企業の経営資源は、ヒト・モノ・カネ・情報の4つが基本でしたが、企業経営に占める無形資産の比率が高まり、「知識経済」化が進みました。
知識の新しさ・独自さこそが、競争優位性の源泉となる時代がすでに到来している、というわけです。
さらに、ITの発達によって、改めて企業内にあるさまざまなナレッジのIT化とそのセキュリティ確保は現実的な課題となりました。
例えば、データ化・共有化(クラウド化)と有効活用(システム化)、秘匿するべき経営情報・個人情報の漏洩防止です。
また、前述のとおりナレッジマネジメントが知られる契機となった『知識創造企業』におけるナレッジには、暗黙知が含まれています。
野中氏らは、ナレッジマネジメントへの世間からの理解は、浅くその理由として、この暗黙知の理解が不足していることが挙げられます。
ナレッジマネジメントをするメリット
ナレッジマネジメントを行うメリットは、会社全体で経験や知識を共有することにより、以下のことが属人化しない形で実行することが可能になる点です。
- 新規事業の開発・改善
- 教育プログラムの効率化
- 生産性の向上
これらのことを属人化しない形で実行可能になると、会社をより良くする施策の効果が高まりやすくなるというのがメリットの一つです。
ナレッジマネジメントの基礎理論
ナレッジマネジメントの理解を深めるには、ナレッジマネジメントの基礎理論について知ることが必要です。
基礎理論を把握する上で必要なのは2つです。
- 2種類の知識タイプ
- 組織的知識創造理論の4つの要素
こちらについて解説します。
2種類の知識タイプ
ナレッジマネジメントの理論の要点として、以下の点が挙げられます。
- 明確な言語・数字・図表で表現された「形式知」
- はっきりと明示化されないメンタル・モデルや体化された技能としての「暗黙知」
2つは互いに作用し合い、成り変わる可能性があります。詳しく説明しましょう。
①形式知
まず形式知です。
形式知とは、マニュアルのように誰が見ても理解できるように記されたもの、具体的には明確な言語や数字、図表で表現されるものです。
組織的に共有できる方法や事例などは、形式知に含まれます。
形式知は、言語化できるもしくは言語化された客観的な知識のため、比較的明確に理解できる有益なものです。
加えて、形式知には、社内で誰もが活用できるというメリットがあります。
私の前職はシステム会社で、コロナ禍は特に退職率が多くなりました。
一人一人の業務量が多く、業務はかなり属人化していたり、業務を引き継ぎをする場合、引き継ぐ側も引き継がれる側も、ものすごく大変な作業になります。
そのようなこともあり、誰がみても理解のできるように記された「形式知」のようなマニュアルがあれば引き継がれる側はもっと簡単に引き継ぎ作業が可能になります。
仮に、担当者が休んだとしても、担当者以外が読んで理解できるマニュアルがあれば気兼ねなく休むことも出来るようになります。
近年、転職は当たり前と言われる時代ですので「形式知」はより重要視されるのではないでしょうか。
②暗黙知
次に暗黙知です。
暗黙知とは、言語化や図式化といったかたちではっきりと明示化されてはいない、属人的な技能や暗黙のうちにつくられた手法や事例などのことを指します。
例えば、社内の優秀な営業マンが持っているスキルなどは、その人しか持っていないもので、マニュアル化されていないことがほとんどでしょう。
暗黙知をそのままにしても組織全体のスキルがアップすることはありません。
その人だけの成果となってしまいます。
組織的知識創造理論の4つの要素とは
暗黙知と形式知は互いを変換させ、作用させ合うことで知識経営を可能にします。
以下のような組織の知のスパイラルで、知識変換が可能です。
- SECIモデル
- 場(ba)
- 知識資産
- ナレッジリーダーシップ
それぞれ簡単に説明していきます。
○SECIモデル
- 共同化(Socialization)
個々人の暗黙知を、共通体験を通じて互いに共感し合う - 表出化(Externalization)
共通の暗黙知から、明示的な言葉や図で表現された形式知としてのコンセプトを創造 - 連結化(Combination)
既存の形式知と新しい形式知を組み合わせて体系的な形式知を創造 - 内面化(Internalization)
体系的な形式知を実際に体験することによって、身に付け暗黙知として体系化
これらをもとにした知識づくりのプロセス・モデルのことをそれぞれのイニシャルから「SECIモデル」と呼びます。
この4つのモデルが、ナレッジマネジメントの基礎的な理論として知られています。
○場(ba)
知識が創造・共有・活用される空間や状況、文脈として「場」というコンセプトがあります。
病院という組織では、診察室や手術室が当てはまるでしょう。
ネット上のデータベースや電子会議室、理念なども「場」に相当します。
マニュアルを読んで知識を付けても、「場」に行った際、知識だけでは実践できないことも多いものです。
実践できるようになるには、暗黙知ではなく納得できる形式知が必要になります。
○知識資産
組織が社会で勝ち上がるには知識が必要で、それを知識資産と呼んでいます。
知識資産には、以下のようなものがあります。
- 経験的知識資産
経験によって得られるスキルやノウハウなど - 概念的知識資産
組織の中の理念や経営コンセプトなど - 体系的知識資産
マニュアル化され体系化されたもの - 恒常的知識資産
組織内に日常的に存在
これらの知識資産をどのように創り、蓄積し、活用するか、が組織経営戦略において重要になります。
○ナレッジリーダーシップ
ナレッジマネジメントで成果を出すには、リーダーとしての役割を認識して実践しなければなりません。
そうしたナレッジリーダーには、
- 知識ビジョンを創る
- 知識資産を絶えず再定義
- それらが知識ビジョンに合っているかチェック
- 場を創って活性化し、他の場とつなぐ
- 知識創造(SECI)プロセスをリード及び促進し、正当化
といった任務があります。
知識を創り、活性化させ、率いることがナレッジリーダーとして重要です。
まとめ
今回はナレッジマネジメントについてまとめました。
いかがだったでしょうか?
個々の知識やアイディアをいかに周りに共有できるのか、また共有したものをヒントに、新たな商品・サービスを作るのはもちろん、近年離職率が高い企業が多い中で、属人化しないための工夫はより重要視されていきます。
知識経済が発展する昨今、より一層ナレッジの重要性を深く理解し、自社の収益につなげる仕組みづくりに努めましょう。