従業員満足度とは
従業員満足度=ES(Employee Satisfaction)は、会社で働く社員の満足度を表した指標のことであり、近年の少子高齢化による生産年齢人口の減少や、雇用の不安定化などの問題を背景に、その重要性が増しています。
働く側にとっては、給与や役職といった待遇面だけでなく、福利厚生、職場環境、仕事のやりがいなど、総合的に満足度が高い企業で働きたいという当然の心理があります。
企業側は「なかなか人材が安定しない」「コストをかけて育成しても結局辞められてしまう」「慢性的な人材不足」などの問題に対処するために、いかにESを高めていくかを考える必要があるようです。
そして、日本の労働市場においては、キャリアアップのために転職を選ぶ人も多いため、今後も人材の流動性が高まる傾向にあり、ある意味優秀な人材を獲得するチャンスでもあります。
そのため今回は、今後の企業経営を考えるうえで欠かせない従業員満足度(ES)を構成する要素や、ESを向上させることのメリット、および具体的な手法についてご紹介いたします。
従業員満足度(ES)が向上する3つの要素
1.福利厚生
従業員は給与が業務内容に見合っているか、などの労働条件の他に、残業や休暇の有無や住宅手当や退職金の有無など、福利厚生が充実したところで働きたいという要望もあります。
給与以外の報酬ともいえるプラスαの福利厚生が充実していれば、従業員は働きやすさや生活のしやすさなど、幸福感を実感しやすく、ポジティブな感情で業務に取り組むことができます。
また、育児、介護などのライフステージに応じてフレキシブルな労働時間が設定できたり、病気治療や休養のために長期休暇が取得できることや、研修などのキャリアアップ制度が整っていることなども福利厚生の充実に当てはまります。
2.評価制度
労働に対する対価や処遇は、従業員満足度に直接関係があり、仕事の成果が正当に評価され、与えられる報酬やポジションに納得感があれば、ESにポジティブな影響を与えます。
従業員が仕事にやりがいを感じるか否かは、労働に対する評価が適正であるかどうかにかかっており、さらに自分の仕事が人や社会に貢献していることが実感できれば、従業員満足度はさらに高まります。
ただし、仕事にやりがいを感じていても、業務量が多すぎたり、過剰ノルマであったりすると、従業員満足度は低下しやすいため、あくまでも労働の対価が世間相場を考慮して適正であるかどうかが非常に重要です。
そのため、いつ、誰が、どのように自分を評価し、給与や待遇が決定するのかが従業員満足度において非常に重要な要素であり、さらに評価制度が公正で明確かつ透明性の高いものであることが理想です。
3.職場環境
清潔でクリーンな職場で働きたいという要望もあると思いますが、何より職場の人間関係やハラスメントなどに悩まされない健全な職場環境であるということは、近年特に重要なポイントとなっています。
就労する若者の離職理由の上位は「職場での人間関係」が定番であり、一日のほとんどを会社で過ごしている従業員にとっては人間関係がこじれてしまう状況は、どうしても避けたいものです。
上司のマネジメント能力や職場環境に起因する退職は比較的多く、社内で管理職向けの研修を行うなどして、社員間に健全なコミュニケーションを意図的に取れるよう施策を施すのが効果的です。
従業員満足度を高めるメリット3つ
1.生産性の向上
従業員満足度が高ければ社員のモチベーションが高く、主体的に働くようになるため、連携による質の高いアウトプットや、製品やサービスに関する良いアイデアが生まれる可能性が高まります。
主体的に働く従業員が多い組織は、コミュニケーションも自然に活性化するため、ミス・トラブルが起こりにくいというメリットもあるため、管理的な業務にかかるコストも削減できます。
厳密に従業員を管理して生産性を上げようとする試みは、もはや逆効果を生み出してしまう可能性もあるため、ESを高める施策を施すことで、管理にかかる無駄な経費を削減し、社員の待遇改善を図ることが賢明です。
2.離職率の低下
従業員満足度が向上すれば、不満からくる離職率を低下させるため、熟練のスキルを持つ社員が多く育ちやすい環境が整い、育成コストも非常に少なくできます。
優秀な人材に長く勤めてもらうことは多くの企業の課題となっており、従業員が「ここで長く働き続けたい」と感じる企業は離職率が低く、ESに敏感です。
対して、ネガティブな理由の離職が多い企業は、経営ビジョン・文化・やりがい・報酬・職場環境などにおいて配慮が少なく、人材の入れ替わりが激しい傾向にあるのが実情です。
3.顧客満足度(CS)の向上
商品やサービスには、それらを生み出している従業員一人ひとりの日々の仕事への姿勢が反映されるため、従業員満足度は、お客様の満足度をあらわす顧客満足度=CS(Customer Satisfaction)にも作用します。
従業員満足度が高い従業員は、自分の仕事が人や社会に与える影響を感じやすいため「お客様により価値の高い商品・サービスを提供したい」と考えるようになるからです。
よって、CSとESを同時に上げることが必要ですが、どちらかに偏り過ぎると、一方が下がってしまう関係でもあるため、双方のバランスに配慮した運営が求められます。
従業員満足度を高める事例3選
1.シエスタ制度
「シエスタ制度」は、「お昼の休憩時間を長く取り、昼寝もOK」とする福利厚生制度であり、ランチ後の睡魔で業務が進まないという状況を軽減するため、導入する企業が増えています。
この制度は労働環境の改善の効果ももたらしますが、短時間の睡眠でリフレッシュすることで、その後の業務の生産性向上をアップさせる効果もあります。
近年は、ワーク・ライフ・バランスを重視する職場が増えてきているため、従業員が心身ともに健康な状態で業務できるように、休憩や休暇のタイミングを工夫すると良いでしょう。
2.社内SNSの活用
社員だけがアクセス権限を持っているFacebookやTwitterなど、社内SNSをコミュニケーション手段として活用するところもあります。
運用ルールは、企業によってさまざまですが、社内報など発行部署からの一方通行の情報であるのに対し、社内SNSは誰でも情報発信可能であるというメリットがあります。
社内SNSであればプライベートな用途で使われることがないため、気軽にフォローしあえるという利点もありますが、トラブルが起きないよう事前にルールやマナーを厳密に設定しておく必要があります。
3.企業ビジョンを示す
企業が社会に対してどのような価値を提供し、どのような役割を果たそうとしているのか、明確なヴィジョンを社員に示すことが、従業員満足度にも大きな影響を与えます。
また、企業ビジョンに共感している従業員は、会社に対する期待感や誇りを持っているため、会社への信頼度は高く、能動的に自社の貢献に向けた行動を取ろうとします。
よって、企業が業績を上げることによって、いかに社会に貢献することができるのか、また従業員の役割がどのようなものなのかを、明確に認識できるような企業ビジョンの提示が望ましいと言えます。
まとめ
従業員満足度(ES)を高めるということは、生産性が高くなるというだけでなく、顧客満足度(CS)を高めることにもつながり、結果として業績も向上します。
企業は多様な価値観を持つ顧客のニーズを把握するだけでなく、多様な従業員のニーズにも敏感であるべきですし、それぞれの満足度を向上させるための工夫が常に必要な時代です。