採用ブランディングとは
「ブランディング」とは、 顧客に製品やサービスに対する特定の共感や付加価値を持ってもらう「マーケティング戦略」の1つであり、「採用ブランディング」は、ブランディングを人材採用に当てはめたものです。
日本の生産労働人口の減少傾向はさらに加速しており、数に限りがある優秀人材を採用するためには、他社との差別化を図り、自社の魅力を伝える「採用ブランディング」の必要性が高まっています。
「採用ブランディング」による戦略的アプローチは、「ぜひこの企業で働いてみたい」という心情を求職者側に抱いてもらえるだけでなく、自社の強みを再構築したり、既存社員の従業員満足度の向上にも効果があります。
そこで今回は、採用ブランディングをこれから始めようとしている採用担当者の方へ、採用ブランディングのメリットや注目される理由、どういう手順で実践すれば良いかを紹介します。
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採用ブランディングのメリット
1.求める人材が獲得しやすくなる
採用ブランディングでは、自社の企業文化や特色を明確にし、求める人物像に対してキャッチコピーなどで、わかりやすく発信することが定番です。
採用ブランディングで自社の魅力をアピールする手法を確立すれば、事前に自社の業務内容や理念に共感できる人材が応募してしてくるため、効率的に採用業務がすすめられます。
さらに、採用市場に対して知名度の向上やポジティブなイメージの定着ができれば、業界市場での優位性を発揮することでき、条件が同じでも、求職者に選ばれやすいメリットがあります。
2.入社後のミスマッチを防ぐ
企業の価値観や魅力を理解した上で入社を希望する人材を絞り混む手法である採用ブランディングは、入社後のミスマッチが起こりづらく、従業員満足度や定着率の向上にもつながります。
採用ブランディングを進めていくと、必然的に社会からの注目度を意識するようになるため、コンプライアンス意識が高まり、職場環境や評価制度の整備がすすみ、企業の健全性が増していきます。
採用ブランディングは入社前と入社後のギャップが生じないように事前に職場環境を整えようという意識が、既存社員にも浸透するため、入社後のフォローがしやすい状況を生み出します。
3.競合との差別化
採用市場では雇用条件や会社の認知度で比較検討されることも多いですが、無名だからこそ会社の独自性や強みに焦点を当てる良い機会でもあり、製品やサービスで差別化がすすみます。
採用ブランディングができていない場合、そのまま勝負をすると他社に劣ってしまうケースがあるため、採用コンセプトを明確に打ち出す必要があります。
そして、採用ブランディングが成功すれば、他社競合と市場での住み分けが進み、採用面でも無駄な争いを避けながら、独自の製品やサービスを開発していくことにもつながります。
採用ブランディングが注目される理由
1.自社の強みを再認識できる
採用ブランディングにおいて重要なことは、会社全体で一貫した意識を共有することであり、ブランディングで発信する情報に一貫性を持たせることは自社の強みをより意識することにつながります。
情報に一貫性がないとターゲットとなる求職者たちの心に迷いを生じさせることになり、採用につながらないのはもちろんのこと、顧客のニーズを満たすための商品開発にもギャップが生じることになります。
新入社員に向けて会社の強みをアピールすることは、顧客や既存社員に向けても再度会社の価値を共感してもらう作業でもあるため、広くアイデアや意見を取り入れる必要もあります。
2.採用コストの削減
従来の求人活動は、採用広告を広く展開して応募者が集まってくるのを待つ手法でしたが、採用ブランディングはターゲット人材に合わせて積極的に採用活動に取り組むことになります。
そして、自社のブランド化がすすめば、クチコミで認知度や評判が高まる可能性もあるため、求人・採用コストを大きく削減することができ、内定辞退や早期離職のリスクも避けられます。
3.WEBサイトやSNSの発達
また、採用ブランディングが注目され始めた理由として、WEBサイトやSNSの発達により、既存の求人媒体以外にも情報発信する手段が増えたこともあります。
WEBサイトやSNSの専門知識がない担当者でも、比較的精度の高い採用ブログや自社サイトを作成できるようになってきているので、積極的に自社情報を発信する事例が増えてきています。
採用ブランディングの具体的な手法
1.ターゲットを設定する
自社にとって理想となる人材像があるはずですが、採用ブランディングを通じてターゲットとなる仮の人材像を浮かび上がらせる「ペルソナ設定」が、必要になります。
自社の理念、事業内容、将来像を整理したうえで、「どのような人材を必要としているのか」を明確にし、専門知識やスキル、趣味嗜好、仕事と生活に対する価値観など、さまざまな角度から「欲しい人材の人物像」を設定します。
さらに、現在の生活状況や、金銭感覚、家族構成や交友関係など、リアリティのある人材像の設定を創り上げることで、自社の魅力や価値の中でも、何をどのように訴求すれば伝わるのかが見えてくるはずです。
2.ターゲットに自社の強みアピールする
会社の魅力は必ず1つや2つあるはずですが、どうしても見つからない場合は、これから作ればよいですし、その作業も採用ブランディングに含まれます。
ただし、ポイントは事業や職場環境において、客観的な事実に基づいた明確な魅力を挙げることが重要であり、「仕事にやりがいがある」「ワクワクしながら仕事ができる」などの抽象的なものは避けるべきです。
競合優位となるポイントや経営資源を明確にするには、SWOT分析と呼ばれる、強み (Strengths)・弱み (Weaknesses)・機会 (Opportunities)・脅威 (Threats) という4つの要素を現状分析するフレームワークがおすすめです。
3.継続的に情報を発信する
情報を発信するためのメディアは、ハローワークや求人雑誌、会社説明会など、従来のものもありますが、自社サイトの採用ページやSNSなどの、コストがかからない方法で継続的に情報発信することがおすすめです。
特に自社で運営する採用ページやSNSは、口コミや反響、アクセス数などを分析しながら採用ブランディングをブラッシュアップしていくことにも役立ちます。
情報発信する手法は、キャッチコピーや画像のほか、最近では動画を活用するケースも増えてきており、業界や自社の最新状況、これまでの取り組みの成果など、比較的長期的な取り組みがしやすくなっています。
まとめ
優秀な人材を獲得するための「採用ブランディング」への関心度が高まるなか、比較的簡単に精度が高い自社WEBサイトが作れるようになったことや、SNSの普及が、採用市場に変化をもたらしています。
企業がターゲットとする人材にダイレクトに情報発信やアプローチをしやすくなったと同時に、求職者が受け取る情報量も急激に増加しており、情報をポジティブに受信してもらうためにも、採用ブランディングは必要不可欠です。
採用ブランディングが成功すれば、採用活動の場に自然と優秀で自社が求める人材が集まる体制を構築することができ、今後の買い手市場に置ける「選ばれる企業」と「選ばれない企業」の二極化を乗り越えることができるはずです。