サーキュラーエコノミーとは
サーキュラーエコノミーは、近年注目されている、SDGsやカーボンニュートラルに関連する言葉です。
サーキュラーエコノミーは、資源を循環させつつ利用することによって、廃棄物された製品などを富(資源)に変えていく循環型の経済モデルのことです。
現在では、世界的な人口増加と経済成長によって、大量生産と大量消費が繰り返されるうちに、処理しきれなくなった多くの廃棄物が、自然環境を汚染することで、生態系にも多くの被害が及んでいます。
資源や自然エネルギーにも限りがある中で、地球環境を守りつつ経済を持続するためには、「サーキュラーエコノミー(循環型経済システム)」に移行していく必要があります。
加えて、サーキュラーエコノミーに類似している言葉に、リサイクルがありますが、この二つの違いには、「環境保護と利益創造を同時に実現しようとしているかどうか」という点が挙げられます。
サーキュラーエコノミーの三原則
国際的サーキュラーエコノミー推進団体『エレンマッカーサー財団』は、
①廃棄物と汚染を生み出すことがない、設計、デザインを行なう
②製品と原料を使用し続ける
③自然システムを再生する
という「サーキュラーエコノミーの三原則」を掲げています。
加えて、サーキュラーエコノミーは、リサイクル可能な製品を、製造するというような原則②(製品と原料を使用し続ける)だけを考えているわけではありません。
サーキュラーエコノミーには、製造前の設計、デザイン段階から、廃棄物や汚染物質を生み出さないようにしたり、使い続けることで自然資本を、保存、増加させることも、必要になります。
サーキュラーエコノミーが注目される理由
なぜ、サーキュラーエコノミーが注目されているのか、その理由を二つ紹介します。
1、脱炭素実現に大きく貢献
サーキュラーエコノミーは、世界が目指す、脱炭素社会の実現に大きく貢献するといわれています。
オランダのサーキュラーエコノミー団体『Circle Economy』は、自身の団体が公表した、
『Circularity Gap Report 2021』の中で、サーキュラーエコノミーが、2019年の温室効果ガス排出量の39%にあたる、228億トン(Co2換算)を削減、気候変動対策に大きく貢献するとしています。
欧州を始めとする様々な国が、サーキュラーエコノミーへ転換することを推進する政策や指針を提出しています。
市場規模が大きい
アクセンチュア試算によると、2030年までに全世界での、サーキュラーエコノミーの市場規模は、4.5兆ドル(日本円で約500兆円)といわれています。
加えて、サーキュラーエコノミー行動計画において、EUはサーキュラーエコノミーへの転向によって、2030年までにEUのGDP(国内総生産)を0.5%追加で押し上げ、約70万人の雇用創出を目指しています。
サーキュラーエコノミーの事例
サーキュラー型のサプライチェーン
再生可能な原材料を活用することによって「コスト削減と環境負荷の軽減の両立を図る」ことを目的としたビジネスモデルを指します。
2019年から、カネカと資生堂が共同で開発を行なっている「生物解性の化粧品容器」が例として挙げられます。
カネカと資生堂の共同開発で目指しているのは、カネカが所有する海水中で、高い生物解性を持つ、100%植物由来の独自素材「カネカ生物解性ポリマーGreen Planet」を、化粧品容器に活用することです。
資生堂は、この「カネカ生物解性ポリマーGreen Planet」を使用することで、再生可能かつ環境にやさしい化粧品容器の実現を目標にし、2019年11月には、生物解性ポリマーを容器に活用した、リップカラーパレット「アクアジェルリップパレット」を発売しています。
シェアリングプラットフォーム
シェアリングプラットフォームは、遊休資産を共同で利用することを促進し、稼働率を最大化させることを目的としたビジネスモデルです。
具体例として、Airbnb(エアビーアンドビー)が挙げられます。
Airbnbは、宿泊先を探す旅行者(ゲスト)と、空き家や空き部屋を貸し出したい人(ホスト)をつなぐネットサービスを展開、提供しています。
2021年6月末の段階で、220以上の国や地域でホストが存在する、世界最大級の民泊サービスです。
Airbnbによって、ホストは遊休資産である、空き家や空き部屋を活用し、収入を得ることが可能になります。
サービスとしての製品
サービスとしての製品とは、製品の購入を従来の買い切り型ではなく、利用に応じた料金を支払うというビジネスモデルのことをいいます。
継続したサービスを提供することによって、顧客と長期的な関係を築くことができ、従来以上の利益になる可能性もあります。
サブスクリプションモデル(継続課金型)やレンタルサービスが代表的なサービスとしての製品です。
例えば、トヨタ自動車が2019年から開始している、自動車のサブスクリプションサービス「KINTO」があります。
KINTOは、顧客が車両代金や任意保険料、メンテナンス料金などを、毎月支払うことにより、契約期間中はトヨタの新車に乗ることができるサービスです。
『所有すること』が当たり前と考えられていた自動車をサービスと捉え、『利用してもらう』対象にしたサービスです。
製品寿命の延長
『『製品寿命の延長』』は、修理やアップグレードを通して、製品をより長く使用してもらうことで、継続的な価値を創造するビジネスモデルのことをいいます。
製品寿命を伸ばすことによって、企業はブランド力の向上や製品についての多くのフィードバックを得られることが、大きな利点です。
パタゴニアは「Worn Wear」という、パタゴニア製品を長く使ってもらうための、プログラムに取り組んでいます。
具体的には、使用済みパタゴニア製品を、オンライン上で取引可能なプラットフォームの提供や、ミシンを積んだトラックで各地を周り、服の修繕を行なったりしています。
回収とリサイクル
回収とリサイクルは、製品寿命を迎えた製品や設備を、リサイクルすることによって、生産や廃棄のコスト削減を目指すビジネスモデルを指します。
2020年2月から、セブン&アイホールディングスが行なっている、店頭回収したペットボトルから再生糸を作り、その再生糸を一部利用した肌着「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」の販売が、回収とリサイクルの代表例です。
セブン&ホールディングスは、ペットボトルの回収の多さと回収したペットボトルの状態が良いため、ペットボトルから質の良い肌着を製造することができます。
実際に、セブン&ホールディングスは2020年度に、年間約3億3000万本ものペットボトルを回収しています。
回収したペットボトルが多い理由として、ペットボトルの回収に協力してくれた顧客に対して、nanacoポイントを付与していることが、一つ挙げられます。
LOOPプロジェクト
Loopプロジェクトは、世界20カ国以上の国で、リサイクル事業を手掛けている、アメリカのテラサイクル社が2019年からスタートさせたプロジェクトの事です。
パッケージ(容器)を、企業の財産と考えて、メーカーが商品の使用後にパッケージを回収、洗浄して再利用していきます。
配送時に必要な緩衝材、梱包資材までリユースできるので、プラスチックゴミを大幅に削減することができます。
日本国内では、アース製薬・江崎グリコ・味の素・エステー・イオンなどの大手企業が参画し、2021年3月から「日本版Loop」が始動しています。
エシカルなモジュール式スマートフォン
エシカルなモジュール式スマートフォンは、オランダのフェアフォン社(Fairphone)が、2013年に販売をスタートした製品です。
エシカルとは、論理的という意味で、法的な縛りがなくても論理的に正しいと思えることを実践しながら、社会的課題を考慮しつつ消費活動を行なうことを「エシカル消費」といいます。
フェアフォンのスマートフォンは、モジュール式(システム機能をグループ分けし、機能単体で独立したユニットを編成する方式)のため、壊れたとしてもその部分のパーツを買い替えるだけで、簡単に誰でも修理することができます。
なので、一つのスマートフォンを長く使用することが、可能になります。
NikeとAdidas
世界的なアパレルスポーツメーカーである、Nikeとadidasもサーキュラーエコノミーに、
積極的な姿勢をとっています。
Nikeは、1992年から使用済みシューズや不用品を回収し寄付や修理、リサイクルする
「Reuse-A-shop」に取り組んでいます。
炭素と廃棄物の排出量0を目指し、「Move to Zero」という目標を掲げ、プラスチックボトルを再利用した、再生ポリエステルや再生レーザーも活用しています。
Adidasは、海岸で回収されたプラスチックゴミを、アップサイクル(創造的再利用)した素材「PARLEY OCEAN PLASTIC」が有名です。
また、単一素材で製造し、使用後に回収、溶解することによって、100%再生可能なランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」を販売しています。
サーキュラーエコノミーの関連事業
カネカ(4118)
カネカは、一般用塩化ビニール樹脂や苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、発泡スチレン樹脂などを取り扱う化学品・素材メーカーです。
カネカでは、サーキュラーエコノミーにおいて、非常に注目を集めている生分解性ポリマー「カネカ生分解生ポリマー Green Planet」の製造、販売を行なっています。
BuySell Technologies(7685)
BuySell Technologiesは、タイムレスとバイセルというブランドを通じて、リユース事業を展開しています。
『人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。』をミッションとして、
出張訪問買取を中心に、自宅に眠っている「かくれ資産」を潜在的リユース市場として開拓しています。
ブックオフグループホールディングス(9278)
ブックオフグループホールディングスは、書籍・CD・ゲーム・アパレルなどの様々なジャンルで、日本最大級のリユース事業をグループで行なっています。
長年の間、様々なジャンルの製品において、製品寿命の延長に、リユース事業で貢献してきた企業といえます。
ファーストリテイリング(9983)
ファーストリテイリングは、ユニクロやジーユーといったブランドによって、国内外において、衣料品の企画や製造及び販売を行なっている企業です。
ユニクロでは、全商品をリユース、リサイクルする取り組み「RE.UNIQLO」を展開しています。
「RE.UNIQLO」では、難民への衣料支援や使われていないダウンなどを回収して、最新アイテムへ作りかえることを、主に行なっています。
サーキュラーエコノミーとリニアエコノミー・シェアリングエコノミーとの関係性
サーキュラーエコノミーとリニアエコノミー
リニアエコノミーはサーキュラーエコノミーと対照的な経済モデルです。
リニアエコノミーは、大量生産・大量消費・大量廃棄、を基本とし、調達・生産・消費・廃棄といった直線的な経済モデルです。
近年、気候変動や資源不足は、深刻化しており、改善するためには、リニアエコノミーから転換していく必要があると考えられています。
リニアエコノミーに代わるものとして誕生したのが、サーキュラーエコノミーです
サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミー
シェアリングエコノミー(共有経済)は、インターネットを通じて、個人や企業が所有するモノや場所、スキル、時間などを貸し借りする経済モデル、またはそのサービスのことをいいます。
今ある資源、資産を活かし廃棄物が出ることを防ぎつつ、同時に経済効果も生む、という点でサーキュラーエコノミーの一例といえます。
シェアリングエコノミーは、消費者同士(C to C)の取引が多いので、生活の中で実践しやすい、サーキュラーエコノミーの取り組みです。
加えて、シェアリングエコノミーには、5つの領域というものがあり、
・空間(Space):民泊、ホームシェア
・スキル(Skill):家事代行、クラウドソーシング
・移動(Mobility):カーシェアリング、シェアリングサイクル
・お金(Money):クラウドファウンディング
・モノ(Goods):フリマアプリ、レンタルサービス
といったことが、それぞれ挙げられます。
まとめ
地球温暖化が深刻な問題となっている現在、経済と環境保護の両立が可能なサーキュラーエコノミーを効果的に取り入れることが重要視されています。
経済的な価値のみを追求するのではなく、経済的価値と社会全体の価値の両立を追及する企業は非常に重要になります。
サーキュラーエコノミーを考慮した、企画や製品を開発してみてはいかがでしょうか。