働き方改革とは?企業から見たメリット・デメリットを徹底解剖!本当にいいことだらけ?

2018年成立の「働き方改革関連法」が順次施行され、労働環境を改善し、ワーク・ライフ・バランスを重視した社会の実現を目指す「働き方改革」の取り組みがさらに広がっています。

「働き方改革関連法」では「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現」や、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」などが要点となっています。

そして、働き方改革が提唱された目的は、①過酷な労働環境におかれている人たちの救済(労働者側)と、②人口減少に伴う労働力不足の解消(企業側)の両面があります。

大前提として「働きたい」と思える環境を整備したり、年齢、性別、国籍、雇用形態にとらわれず公正な待遇を実現することで、日本企業全体の労働生産性を向上させる取り組みです。

長時間労働や休日出勤などを起きにくい労働環境は、社員が「人間らしく生きる」ことができ、それによって個人と会社双方にメリットがあるしくみづくりが期待されています。

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働き方改革導入のメリット

1. 長時間労働の是正と経費削減

日本は過労死が問題となるほど先進国の中でも労働時間の長い国として有名ですが、同時に年次有給休暇の取得率の低さは世界でもトップレベルです。

労働基準法で1日の労働時間は「8時間(40時間)」が基本ですが、上限の厳守が難しい業種もあるため、法定労働時間の超過や休日労働が認められる「36(サブロク)協定」が存在します。(※労使の合意必要)

しかし以前の36協定は企業側に有利なところもあり、罰則による強制力がなく、臨時的で特別な事情があれば上限なく「時間外労働=残業」をさせることが可能でした。

そこで2019年の36協定の法改正により、時間外労働は原則月45時間(年360時間)までの上限と、違反した場合の罰則が定められ、実質上限なく残業をする(させられる)労働環境ではなくなったはずです。

長時間労働から解放される社員にとってのメリットは、自分のライフスタイルを重視した生活を送ることができるという点であり、仕事への向き合い方や人生の価値観が大きく変わるきっかけになります。

労働環境が良くなれば、残業代が減ったり給与が据え置きでも、不満やストレスを感じにくい効果が離職につながりにくく、仮に業績が同じでも人件費や光熱費を削減できる企業側のメリットもあります。

2. 業務効率化と生産性向上

日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)38ヶ国のなかでも23位と低く、今後日本の高齢化を考慮すると一刻も早い労働生産性の改善が必要です。

 働き方改革の最終的な目的は、労働生産性を向上させ、日本経済の成長を促すことであり、業務効率化と既存人材の労働力の有効活用は欠かせません。

よって、「付き合い残業」や「サービス残業」が常習化しているところは、仕事のムダムラムリを排除し、より効率的な業務のやり方を模索する必要があります。

今までのように時間をかけてダラダラと「朝礼」「会議」「講習」が行われてきましたが、今後はITツールなどを活用し、本質的な業務以外のことを短時間で効率的に処理する方法が浸透してくるでしょう。

3. 採用力向上と優秀人材の確保

働き方改革が目指す「同一労働同一賃金」は、現状約2,000万人とされる非正規雇用労働者と正規雇用労働者との待遇や賃金格差をなくすという考え方のことです。

不本意ながら非正規で働いている人のことを考えると、労働意欲の改善や能力の有効活用が見込まれますし、慢性的な人材不足に対応していくためには、これまで以上に多様な人材に活躍してもらう必要があります。

働き方改革に積極的な企業は求職者に対して良いイメージを与えられるので社会的な評価を得ることのメリットもあります。人材確保がしやすくなります。

人材不足が深刻化している中小企業においては、「テレワーク」や「フレックスタイム制」などを整備が必要ですし、「有給休暇の取りやすさ」、「残業がほとんどない」「待遇の公平性」などが優秀人材採用のアピール材料となりそうです。

働き方改革導入の注意点

1.社員の収入減

働き方改革によって長時間労働が是正されると、公正な残業代が支払われている会社に務めている人は、当然収入が減ることで不満が高まることが懸念されます。

企業側は本人がどれくらいの収入を希望しているのか、またどれくらいの残業なら許容できるのかを、十分に面談などで把握し、杓子定規な経費削減を断行しないよう慎重に社員の理解を求める必要もあります。

会社にとっては人件費が抑えられてメリットがある気もしますが、社員のモチベーションが維持できないほどの収入の減少は、さらなる人材不足を招く結果になりかねません。

「嫌なら辞めろ。代わりはいくらでもいる。」という企業風土で長年やってきたところは、企業存続自体が難しくなっているので、「経営層の時代に適応した意識改革」こそが働き方改革とも言えそうです。

2.隠れ残業

そもそも人材不足のため、残業ありきで業務をすすめてきた企業は、残業ができなくなったことで、納期が遅れたり、、本来の業務に支障をきたすことも考えられます。

そうなってくると、会社が罰則を受けることを避けるために自主的、強制的に関わらず、勤務時間にカウントしない無給残業や、家に持ち帰って行うような「隠れ残業」が発生してしまう可能性も否めません。

企業側は業務に必要な人員や費用がどれくらいが適正なのかをもう一度見直し、適正人員数を確保し「残業ありき」の企業体質を抜け出す必要があります。

3.人員管理の複雑化

多種多様な人材を有効活用するためには、同時に多様な雇用スタイルを実現する必要があり、その分、人事や労務などの手続きや管理業務が膨大になってしまうデメリットも考えられます。

ある程度まとまった時間をとって社内規約を変更する必要がありますし、一度に多くの社員が入社する場合は、業務が集中することからミスが起こりやすくなります。

人員が少ない企業にとってはこれらの作業を通常業務と並行して行うことはかなりの労力や時間を費やす必要があるため、クラウドなどのテクノロジーを活用した人員管理制度の導入を検討したほうが良さそうです。

働き方改革の事例具体例

1.中外製薬株式会社

中外製薬株式会社は育児・介護を行う労働者などをメインにテレワークを推進している企業であり、長時間勤務削減に向けて社員からのフィードバックを積極的に情報共有しています。

有給休暇の積極的な取得を促すことで、所定外労働時間の減少や有給休暇取得率の増加に繋がりり、社員一人ひとりのワークライフバランスの改善を図っているのも特徴です。

2.株式会社ワコール

女性用下着メーカーである株式会社ワコールは女性従業員の比率が高いために出産・育児や介護による離職率が高く、従業員をどう定着させるかが課題でした。

そこで短時間勤務制度や休業制度を導入し、育児や介護に携わる従業員への支援を行い、育児休業取得者の復帰率が100%を達成するなど、大きな成果をあげています。

3.株式会社東急コミュニティー

株式会社東急コミュニティーの企業ビジョンはお客様はもちろん、社員それぞれに対する責任を宣言しており、社員に対してはワーク・ライフ・バランスの実現を掲げています。

正社員の他にも多くのフルタイムや短時間勤務の契約社員がいて、職種についても技術系、営業系、事務系など多様ですが、従業員の勤務体制や職場に合わせて制度や環境を整えることに注力しています。

まとめ

日本の社会全体のほとんど占める中小企業は人手不足の影響が大きく、特に働き方改革の実施・取り組みが求められています。

ただし、業務内容における適正人員と適正給与を考慮せず働き方改革を断行すると、かえって業務が煩雑になったり、生産性が低下してしまう恐れがあります。

働き方改革によって豊かで魅力的な日本という国をつくりあげていくには、日本企業全体が業務効率化と生産性向上を意識する必要があり、そのためには企業と従業員双方の意識改革が望まれます。

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