労務管理とは、社員に対して行う管理のことです。
具体的には、賃金、社員の健康、労働時間などといった幅広い管理をしています。
また、精神面をカバーする(ハラスメント対策)なども行っており、会社の環境を作り上げるにあたってかなり重要な役割を与えられているのが労務管理です。
今回は、そんな労務管理について詳しく解説していきます。
■なぜ労務管理が存在するのか?
近年では「長時間労働」「ブラック企業」などがインターネット、テレビなどのメディアに取り上げられていますよね。
そんな環境から社員を守るために、労務管理が存在しているのです。
■具体的に行う事
●就業規則の管理
10人以上の従業員が所属している場合、就業規則を行政官庁に届け出る必要があります。
そのため、労務管理では就業規則を作成したり、就業規則の見直しなどの業務を行っています。
●異動、退職、保険などの手続き
労務管理では以下の手続きを担当します。
・異動手続き
・退職手続き
・社会保険などといった保険加入のための手続き
・休職手続き
会社の中で必要な手続きについては、全般的に労務管理の仕事となっています。
●勤怠の管理
社員の出社日数、欠席数、勤務時間などといったデータを管理します。
勤怠の管理を行う事によって、過労になっていないかなどを確認することができるのです。
●給与の管理
社員の有給、出社日数、勤務時間などをもとに、給与の計算をします。
基本給+残業代、そして支給額から控除額を差し引いたりなどと、基本的な給与計算です。
また、税金や賞与の計算なども行います。
●健康の管理
労務管理では社員の健康状態なども管理することになります。
健康診断の結果を記録していたり、勤務時間が長すぎる場合には社員に
勧告を行ったりなどします。
また、最近では従業員の健康を守るため、従業員が50人以上いる会社の場合、ストレスチェックが義務化されました。
●ハラスメントの管理
セクハラ、パワハラなどといったハラスメントの対応なども行います。
具体的には、ハラスメント用の相談窓口を作ったりすることによって、ハラスメント対策を行っています。
会社の中でハラスメントが起こってしまっていると、環境が悪くなってしまいますしね。
このように労務管理には幅広い仕事がありますが、こちらで紹介した業務以外にも様々な業務が存在します。
■労務管理と衛生管理、勤怠管理などの違い
何か違いがあるということではなく、労務管理の中に衛生管理や勤怠管理などといった細かい業務があるイメージです。
労務管理を行うにあたって、社員の勤怠情報や健康状態の管理はとても重要になってきます。
もちろん作業の内容に違いはありますが、どの管理も相関して労務管理に関わる事なので、本質的にはあまり変わらないでしょう。
全ての管理を一括で行っている部署がある会社も存在します。
■労務管理におけるコンプライアンスの重要性
労務管理はコンプライアンスと密接な関係にあるため、コンプライアンスが重要になってくるのです。
※コンプライアンスとは、「法令遵守」を意味する言葉で、近年では法律だけなどにとどまらず、社会的なルールや倫理感などといった、様々なルールを守るという意味になっています。
コンプライアンスがしっかりしていないとどうなってしまうのでしょうか?下記の例を見てみましょう。
不正な会計
ハラスメントの無視
社員の健康状態の無視
勤怠の捏造
過度な残業の無視
これらは、全てコンプライアンスを無視してしまった結果起こる事です。
もしコンプライアンスがしっかりとしていない場合、不適切な労務管理になってしまい、結果的に会社の環境が悪くなってしまいます。
コンプライアンスがしっかりしていないと、労務管理の意味がなくなってしまうため、労務管理を行う際にはコンプライアンスがとても重要になってきます。
■労務管理の重要性
働くにあたって、職場の環境は社員の生産性をとても左右するため、環境作りのために行う労務管理はとても重要な仕事になります。
労務管理が全く行き届いていない場合、ハラスメントが横行したり、社員の健康状態が損なわれてしまったり、適切な給与が支払われないなどといったことが起きてしまいます。
その結果、社員のモチベーションや、会社の環境が悪くなってしまい、生産性も失ってしまうし会社の空気自体も悪くなってしまうんですよね。
そのため、労務管理という業務はとても重要な役割を担うことになります。
■労務管理と信頼問題
労務管理では、企業への信頼を高める事が一つの目的となっています。
もし労務管理が全くされていない場合、従業員の会社への信頼が下がることはもちろん、世間的にも信頼されない企業になってしまいます。
●信頼を失うと起こる事
・株価の下落
・会社の雰囲気が悪くなる
・従業員からの信頼の低下
・従業員の離職
・ブランド力が下がる
・取引が中止になってしまったりする
・顧客、消費者からサービス、商品を購入されなくなる
このように会社の信頼を失ってしまうと、会社にとって大きな損失につながりかねません。
そのため、近年では信頼を高める事ができるような労務管理をすることが重要となっています。
■労務管理に必要となる法定三帳簿
「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」という帳簿が存在するのですが、労務管理ではこれらの帳簿が必要になってきます。
●労働者名簿
その名の通り、従業員の情報が書いてある帳簿です。
氏名や性別、住所などといった基本的な情報はもちろん、退職した日付や業務の内容などといったことまで書かれています。
●出勤簿
タイムカードなどで記録した勤怠情報をまとめたものが出勤簿です。
勤務日数、勤務時間、残業時間などといった情報を知る事ができます。
●賃金台帳
従業員の賃金の支払いについて書かれているものです。
具体的に歯基本給や手当、残業手当、控除項目、勤務日数などが書かれています。
■労務管理で必要なスキル、検定
●労働法規則、社内規則、コンプライアンスに対する理解
まず、労務管理をするのであれば労働法規則、社内規則、コンプライアンスなどといったルールを理解する事が大前提になります。
これらの知識が乏しいと労務管理をする意味が無くなってしまいます。
管理する立場において、ルールのことをしっかりと理解していなければ、間違った管理をしてしまったりすることになりますからね。
●コミュニケーション能力
労務管理では、コミュニケーション能力が重要になってきます。
というのも、労務管理とは主に「ヒト」を管理する業務だからです。
人と接する際には会話をすることが多いため、従業員と話をする機会が多くなります。
そのため、コミュニケーション能力が必要になってくるわけですね。
●情報を守る能力
労務管理では機密情報などを管理するため、情報を他人に公開しない事が重要です。
もし機密情報などが第三者に渡ってしまった場合、従業員からの信頼も失ってしまいますし、コンプライアンス的に見てもとても良くない事になってしまいます。
そのため、情報を守る力が必要になるでしょう。
●社会保険労災務土
労務管理に関する国家資格なのですが、合格率が約6%ほどとかなり低く、とても高度な資格となっています。
労務管理の唯一の国家資格でもあります。
■まとめ
このように、労務管理は会社の中でもかなり重要な仕事です。
会社の環境を良くするために存在する仕事であり、幅広い業務内容が存在しています。
どれほど有能な人材がいたとしても、どれほど資金力があったとしても、それらを上手く管理することができなければ全て台無しになってしまいます。
そんなことにならないように、労務管理についてはしっかりとした方がいいでしょう。