急速なグローバル化の拡大により、企業の持続的な存続にはMOTに沿った経営が求められています。
しかしながら、そもそもMOTとはどういったものでしょうか。
今回の記事では、企業経営においてMOTが注目される背景や必要性およびメリットなどをご紹介します。
MOTとは
経済産業省は「MOT(Managemanto of Technology)とは、技術を事業の核とする企業・組織が次世代の事業を継続的に創出し、持続的発展を行うための創造的、かつ戦略的なイノベーションのマネジメント」と定義しています。
少し噛み砕くと、企業が自社が持つ技術力を持続的な発展のために事業化に結び付け、イノベーションおよび新たな経済的価値を創出するためのマネジメント手法です。
世界と比べても日本は製造業の割合が高く、技術を事業の核とする企業が多い傾向であるため、MOTの手法が注目されています。
MOT注目の背景
具体的に MOT が注目されている背景を解説します。
企業としてはどれだけ高い技術力を持っていたとしても製品化や事業化につながらなければ、経済的価値やイノベーションを生み出せません。
そこで自社が持つ技術力を戦略的に活用し、イノベーションを目指すMOTの考え方が企業の持続的な成長のために必要とされています。
日本では以下の2つの観点から、MOT が注目されるようになりました。
・キャッチアップ型ビジネスモデルの崩壊
戦後の日本が経済発展できたのは、キャッチアップ型ビジネスモデルの活用が上手くいったことが要因の一つと言われています。
技術やアイデアなどを欧米諸国から取り入れ、それを徹底的な生産合理化によって製品開発していくことで、低価格や高品質の製品を生み出すことができました。
しかし現代の急速なグローバル化とIT 化によって、製品やサービスのコモディティ化も加速しました。
日本が新興国からキャッチアップされる側になってしまい価格や品質面での競争力を失ってしまいました。
・フロントランナー型ビジネスモデルへの移行に遅れ
日本がキャッチアップ型のビジネスモデルで世界を席巻していった中で、欧米諸国ではフロントランナー型のビジネスモデルへ移行していきました。
自ら技術革新を起こすことで業界のフロントランナーを目指していくビジネスモデルですが、MOTの導入もフロントランナー型ビジネスを構築していくうえで進んでいきました。
しかしながら日本は従来のキャッチアップ型ビジネスからの脱却が遅れたため、世界の成長についていくことができず国際競争力の低下につながってしまいました。
そういった状況を受けて、企業や政府がMOTに注目することとなったのです。
MOT導入を先駆けた欧米諸国
欧米諸国では既存の社会の発展には新しい技術や手法によるイノベーションを起こすことが重要という考え方が進み、1980年から90年代にかけて技術革新に取り組んでいきました。
製品開発において品質面やコストダウンだけに焦点を当てるのではなく、社会の発展のためにどのようなものを開発し、どのような付加価値を付けるかという視点で MOT の導入を進めていきました。
欧米諸国が技術革新に注力した結果、Google、Amazon、Facebook、AppleといったGAFAと呼ばれる巨大IT企業を生み出すことに成功しました。
MOTの必要性
製品やサービスの技術開発から市場投入までのプロセスとして、研究、開発、事業化、産業化といった4つのステージがあります。
新しい技術が研究で生まれても、事業化できなければ利益を生み出すことができません。
また技術開発から事業化や産業化まで膨大な時間やコストが必要となります。
そのため素晴らしい技術が研究で生まれたとしても、事業化に至らないまま断念してしまう技術が多くあると言われています。
MOD を活用し生まれた技術を事業化することで、新たなイノベーションや経済的価値を生み出すことが期待できます。
新たなビジネスを生み出すことができれば、フロントランナー型のビジネスモデルに近づくことができます。
MOTで企業が得られるメリット
MOTを活用することで企業が得られるメリットは以下のとおりです。
・技術プラットフォームを確立できる
技術開発を取り入れた経営戦略により、自社が持つ重要な技術を活かした戦略目標を立てます。
MOTによる戦略目標によって自社の中核技術が確立され、イノベーションにつながる技術を生み出す体制を構築できます。
会社としての技術戦略目標が確立されることで、研究開発の時間の短縮化やコストダウンを実現でき、企業の競争力を高めることができます。
自社の持つ技術を集約しプラットフォーム化することで、事業間の技術を組み合わせる横断的な技術開発も可能となります。
・イノベーション創出
MOTによって市場にニーズのある製品やサービスを開発することにより、イノベーションを創出することにつながります。
またニーズを掘り起こすようなイノベーションを起こすことができれば、新たなビジネスのフロントランナーとなれるかもしれません。
MOTによる新たな経済的価値の創出は従業員など全てのステークホルダーに良い影響を及ぼします。
・新たな技術の獲得
MOTでは自社にとって重要な技術を選別し、技術への効果的な投資を目指していきます。
技術開発へのストーリーが確立されることで、新たな技術の獲得に近づけます。
自社での研究や開発が難しければ、他社や研究機関との提携によって技術獲得を目指すこともできます。
MOTに導入には人材育成が重要
欧米諸国の技術革新に取り残された日本でも、経済産業省を中心に MOT 導入への取り組みを進めてきましたが、MOT導入には人材育成が重要となります。
まだまだ日本企業では MOTの成功事例が少ないことから、MOT 人材の育成に苦しむ企業も多いでしょう。
MOT人材を確保するためには以下の2つの方法が考えられます。
・従業員を教育する
企業が自社の従業員を MOT人材として育成する方法があります。
具体的には専門職大学院や大学院に通わせる、民間企業主催の研修プログラムに参加させるといった方法です。
・MOT 人材を獲得する
MOTに精通した人材を採用することも考えられます。
MOTでは MBA のように大学院などで学位を取得できるため、既に大学院にてMOTを取得した人材を採用すれば、即戦力となるかもしれません。
MOT人材に求められる能力
MOTには人材確保が重要となりますが、どのような能力が MOT人材に求められるのでしょうか。以下の通り解説します。
・イノベーションを推進する力
MOTではイノベーションを推進していく力が求められます。
必要とされる力はさまざまですが、特に市場が求める新たな価値を見つけていく力、自社の技術でどのようにイノベーションを起こしていくかを構築する力、そして実際にイノベーションを実行に移す力が重要となってきます。
・ 横断的な事業推進能力
MOTによるイノベーションを推進していくうえで、組織をまたいで会社として成長していくことを目指さなければなりません。
そのためには従来の組織のやり方にとらわれずに、異なる事業部をまとめていくことがMOT人材として求められます。
柔軟な対応能力やコミュニケーション能力がイノベーションを推進する能力として求められます。
・技術と経営の総合力
MOT人材には技術と経営に関わる能力が総合的に求められます。
自社の技術の有効性を見極めるための学術的能力とその技術を事業化する経営能力の両方を兼ね備える必要があります。
まとめ
今回はMOTの定義から始まり、MOTの背景や必要性、求められる人材などを解説しました。
MOT導入には人材確保が重要となり、日本でも官民連携で取り組んでいます。
企業規模の大小にかかわらず、MOTはこれからの企業経営において重要な考え方となるため、自社の経営活動においても参考にしてみてはいかがでしょうか。