社内ベンチャーとは?取組みの目的やメリット、企業の取り組み事例を徹底解説!

社内ベンチャーとは

社内ベンチャーとは、新たな商品やサービスを生み出すために新しい部署を設立して、新規事業を発展させ、新たなアイデアを生み出す組織を言います。具体的に言えば、企業が新たに誕生させる『企業ベンチャー』のようなものです。

社内ベンチャーの多くは、新規事業の開発を目的としてるケースが多く、ベンチャー気質な精神(冒険的・野心的な精神)を持った従業員が企業のリソース(人員、資金)を活用して運用します。

そのため、これまで自社にはなかったアイデアで新たな事業に踏み込むことが可能です。

社内ベンチャーを行う目的とメリット

社内ベンチャーの目的とメリットは具体的に以下の4つが挙げられます。

目的1.新たな事業領域で利益を生み出す

長年の間、既存の事業を継続させるだけで利益を増やし続けるのには限界があります。

特に時代の変化で市場に大きな影響が出た際に対応ができず、経営が危ぶまれることもあります。

そんな中、『社内ベンチャー』を取り入れ、新たな領域でも事業を展開しておくことでリスク回避を行いながら、既存事業に捉われない新たな収益を生み出すことができます。

目的2.資金の有効活用

特に大手企業の場合、多額の収益を生み出しているものの、資金の有効的な活用方法を見出すことができずに、持て余しているケースがあります。

そこで『社内ベンチャー』を立ち上げて新規事業に投資することで、有効的な資金活用が実現します。

さらに、新規事業が成功すれば新たな収益を得ることができ、企業の成長にも繋がります。

このように、自社の資金の投資先として『社内ベンチャー』を取り入れる場合もあります。

目的3.人材育成に役立てるため

企業が市場で勝ち残っていくためには人材育成が必要不可欠です。特に『社内ベンチャー』を取り入れ、新規事業のスタートアップを進めていくといった経験はなかなか得ることができない経験です。

今までの既存事業に携わっているだけでは得ることができない経験を積むことで、優秀な人材が育つ可能性があります。

目的4.自社に新たな風を取り入れる

既存事業に注力し過ぎるあまりにマンネリ化が起こり、業務の単調化によって凝り固まってしまう場合があります。

このような状態が長く続くと、従業員の仕事への意欲も上がらず、成長が止まってしまう恐れがあります。

そこで『社内ベンチャー』を取り入れることで、従来のマンネリ化した社風に活気を取り戻す効果が期待できます。

さらに既存事業との相乗効果で企業全体の活性化にも繋げることが出来ます。

社内ベンチャーの立ち上げ方

社内ベンチャーの立ち上げ方は、『トップダウン型』と『ボトムアップ型』の2種類がありますので、それぞれ具体的に説明していきます。

1.トップダウン型

『トップダウン型』は、経営者や役員の主導で新規事業の立ち上げや商品開発を行う形です。

この場合は、新規事業の目的や目標について経営層が決定し、実務担当者は経営層が提示した目的を実現するために動きます。

しかし、経営層の意図したものが必ずしも市場が求めるニーズでない場合もあります。そのため、市場のニーズをしっかりと新規事業に落とし込めるかが成功の鍵となります。

2.ボトムアップ型

『ボトムアップ型』は、従業員から新規事業のアイデアを募って社内ベンチャーを立ち上げていくスタイルです。

従業員から集まったアイデアの中から、現実的に実行可能で成功しそうな事業を経営層が選定し、実際に『社内ベンチャー』として実行します。

このスタイルであれば、市場のニーズに適した事業を立ち上げることができ、比較的柔軟にプロジェクトを進めることができます。

社内ベンチャーを成功させるためのポイントと注意点

ここまで『社内ベンチャー』の意味や立ち上げ方を説明してきました。

では、具体的にどのような手法で『社内ベンチャー』を社内に根付かせていけば良いのでしょうか?

ここでは、具体的な成功のポイントと注意点を4つご紹介させて頂きます。

1.従業員が自ら参加しやすい環境を構築する

いざ『社内ベンチャー』を取り入れようとしても、従業員が積極的に参加したいと思える意欲がなければ意味がありません。

そのためには、従業員に対しての業務サポートやアフターフォローなど、会社側が従業員に対して協力体制を整えておく必要があります。

また、短期的な結果ばかりを求めるのでなく、ある程度長いスパンで見守る姿勢を持ちましょう。

「社内ベンチャー」を成功させるためには、会社側と従業員との関係性が重要であるため、ある程度ゆとりのある状態で従業員に任せられる環境を作ってあげることが必要です。

2.決済や承認などの意思決定を迅速に行う

『社内ベンチャー』といえど、会社の一組織であるため、会社からの決済や承認が降りないとできないことも出てきます。

しかし、新しい事業を展開していく上で、他社との市場競争は避けられません。

そんな状況下の中で、意思決定に時間をかけてしまうと、あっという間に他社競合から遅れをとってしまう場合もあります。

とくにトップダウン型の『社内ベンチャー』においては、ある程度「意思決定」や「人員配置」などの権限は、実務担当者に任せておくのが良いでしょう。

3.既存事業と切り離して考える

『社内ベンチャー』は、あくまで会社内にある別の組織として考えましょう。

たまに、既存の事業とのつながりを重視する企業もありますが、それだと新規事業でやりたい事や、新たな可能性が狭くなってしまう危険性があります。

可能な限り、既存の事業と『社内ベンチャー』の癒着を避け、あくまで別の組織として両者が成長し合える関係を作り出すのが理想的です。

4.失敗し撤退するタイミングを明確にしておく

『社内ベンチャー』は、既存事業とは別の組織であるとはいえ、活動資金に関しては、企業の資金のため、企業内にある事業の一つとして捉える側面もあります。

そのため、『社内ベンチャー』が実装しているプロジェクトが期待通りの収益を生み出すことができなかった場合も、明確な損失が生まれない限り「失敗しているかどうか」が見えにくいのが実情です。

このような状態で事業を続けていると、企業経営を圧迫してしまう恐れがあるため、「どのようなケースが失敗に当たるのか?」といった明確な基準を設けておく必要があります。

その上で、設定した基準に達した際には、速やかにプロジェクトを撤退させましょう。

また、万が一プロジェクトが失敗したとき、その責任は誰がどのように取るのかを明確に決めておくと良いでしょう。

社内ベンチャーの取り組み事例

最後に『社内ベンチャー』を取り入れている企業の取り組み事例をご紹介させて頂きます。

事例1.リクルートホールディングス

大手の人材会社である「リクルートホールディングス」では、社内ベンチャー制度を導入し、1983年より新規事業コンテスト「Ring」を行っています。

リクルートの経営理念である「新しい価値を創造する」を体現する上で、従業員からの新規事業の提案・実現が可能な場を提供しています。

例えば以下の事業は社内ベンチャー制度から生み出された事業です。

・ゼクシィ

・TOWN WORK

・HOT PEPPER

・R25

・受験サプリ

本記事をお読みの方もご存知の事業が多いと思いますが、リクルートホールディングスは、これらの有名なサービスを社内ベンチャー制度で生み出してきました。

Ringでは、従業員から出たアイデアに対して、厳正な審査を行います。そして晴れて事業化が決定した場合は、発案者は現在のポジションを離れて、新規事業の専任となることができます。

まさに『ボトムアップ型』の成功事例としてお手本と呼ぶべき取組事例です。

事例2.三菱商事

1999年に大手総合商社の三菱商事の外食事業部門が立ち上げた「食べるスープの専門店」もコーポレートベンチャーとして立ち上げた事業です。

「食べるスープの専門店」という新たな市場へ参入し瞬く間に女性人気を獲得した背景には、ヘルシー思考である女性をターゲットにした戦略が至る所に散りばめられており、競合が少ない「スープ専門店」という新たなポジションを獲得しました。

参照:新規事業が失敗する理由とは?失敗事例から読み解く、新規事業を成功させる方法。https://designfirst.co.jp/magazine/2022/02/13/blog40/

綿密なターゲティングと一貫性のあるサービス展開を見事に成功させた三菱商事の『トップダウン型』の成功事例と言えます。

事例3.博報堂DYホールディングス

広告代理店の大手企業である博報堂では、「AD+BENTURE」と呼ばれる社内ベンチャー制度を2010年から取り入れています。

厳選な審査やテストマーケティングなど、1年近い期間をかけて成功した案件のみを事業会社へ移行し、後に事業化を行います。

博報堂の社内ベンチャーの特徴は、各部署(法務・経理・広報)や専門スタッフの支援を受けられる点です。

社内ベンチャーを取り入れる上で、会社のバックアップやフォロー体制がしっかりと整えられている取組事例と言えます。

事例4.サイバーエージェント

インターネット黎明期に、自らが『ベンチャー企業』として成長してきたサイバーエージェントは、「あした会議」と呼ばれる社内ベンチャー制度を行っています。

「あした会議」では、部署や役職、年齢が異なる社員を集めた1泊2日の合宿を行い、新規事業に繋がるアイデア創出や課題解決を目標に、これまで30近い子会社が生まれています。

また、社内ベンチャー制度で生まれた事業の売上累計は700億円、営業利益も100億円に達しています。

社内ベンチャーを取り入れることで、新たな収益の柱を構築した、最もベンチマークしておきたい企業の一つであると言えます。

まとめ

『社内ベンチャー』は、自社の既存事業では生み出すことの出来ない発想やアイデアをもとに、新たな収益確保を可能とする有効な手段です。

一方で『社内ベンチャー』を起ち上げることで、メリット、デメリットはもちろんあります。しかし、デメリットについては、おおよそ回避できるものです。

自社のさらなる成長のためにも、社内ベンチャーの仕組みを整えてみてはいかがでしょうか。

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