新規事業が失敗する理由とは?失敗事例から読み解く、新規事業を成功させる方法。

新規事業が失敗する理由

新規事業を立ち上げようと情報収集を行う際「多産多死」という言葉をよく目にします。

多産多死とは、多くのビジネスアイデアをつくり、それを実装し、その中で失敗したものを殺し、成功したものだけを選び抜くといった考え方です。

しかし、新規事業が失敗に終わってしまう多くの企業は、一つのビジネスアイデアに固執し、「多産多死」の「切り捨てる」「リスクヘッジ」という部分を疎かにして失敗しているケースがほとんどです。

まずは新規事業の失敗を未然に防ぐために「失敗してしまう理由」を明確にし理解することが重要です。

はじめに3つの代表的な失敗する理由を紹介します。

失敗する理由①|事前準備が足りていない

新規事業が失敗する最大の理由は事前準備がしっかりできていないことが挙げられます。

そもそも事業のスタートアップはリスクが高い反面、短期的に黒字化させる必要があります。

そのため、いかに戦略的な計画と事前準備が整っているかが鍵を握っています。

◉事前準備が足りていない代表例

・ブランディングやコンセプトが定まっていない状態で事業がスタートしている。

・人材のリソースが足りていない。

・市場のニーズや競合分析などに時間をかけていない。

・マネタイズの経路が整っていない。

・経営的な視点、思考が不足している。

上記のような事前準備を整えず、勢いだけで事業をスタートさせてしまうと、失敗する可能性が高くなります。

失敗する理由②|組織の人材配置に問題がある。

新規事業はスモールスタートが鉄則です。

まずは営業マンを10人、そしてマーケターやデザイナー、システムエンジニアを7人ずつなどと新規事業を立ち上げるからといってチームメンバーを増やしすぎるのは良くありません。

そして、あまりに人数を増やしすぎると、組織の意思決定が鈍くなります。

新規事業の立ち上げは、たとえ競合の少ない市場であったとしても、立ち上げに時間がかかってしまうと市場の変化や他社競合の参入などにより事業化のタイミングを逃す危険性があります。

一方であまりに少ない人数で行ってしまうと、属人的な組織になってしまい、間違った方向に進んでしまうケースもあります。

ですので、新しい人材を積極的に採用したり、その分野の経験者からの知見も積極的に吸収できる仕組みを初期段階から設け、組織のメンバーが新規事業に対して意欲的になれる環境を構築するのが理想的です。

失敗する理由③|新規事業に対して思い入れが強すぎる。

新たなビジネスアイデアを形にして事業化していくとなると、それなりに新規事業に対して思い入れが強くなることもあります。

勿論、モチベーションを保ち続けるためには、愛着や誠意をもってプロジェクトに携わる方が成長速度も速いです。

しかし、事業に対して思い入れが強すぎると客観的な判断ができなくなるケースがあります。

こうなってしまうと、仮にプロジェクトが失敗しそうな時に「戦略的撤退」を躊躇してしまったり、優先順位が分からなくなってしまいます。

冒頭の「多産多死」の考えを基に、取捨選択をスムーズに行って冷静な判断を下せるよう意識する必要があります。

新規事業の失敗事例3選

それでは、新規事業に失敗してしまった企業の事例を3つご紹介させて頂きます。

失敗事例①|Google社の「グーグルグラス」

グーグルグラスはAR業界への参入を試みたGoogleの新商品でメガネの形をしたウェアラブル端末です。

※ウェアラブル端末とはスマートウォッチのような手首や頭などに装着できるデバイスのことです。

このAR機能を搭載し視界に様々な情報を表示できる新たなデバイスの登場に当時は盛り上がりましたが、「車や自転車の運転時に事故のリスクが高まる」「実用的じゃない、スマホと変わらない」などの理由から一般販売を中止。AR業界への参入を試みた新規プロジェクトは失敗に終わりました。

失敗事例②|コカ・コーラ社の「コカ・コーラ・ブラック」

2000年初頭、FC事業を拡大させているスターバックス・コーヒーに触発されたコカ・コーラ社はコーヒー業界に参入するために「コカ・コーラ・ブラック」という商品を開発しました。

しかし、コーラとコーヒーを掛け合わせた味は賛否両論あり販売開始から2年で生産を中止。コーヒー業界への参入を試みたコカ・コーラの新規事業は撤退しました。

失敗事例③|Apple社の「Pippin」

本記事をお読みの皆様はApple社の「Pippin」というゲーム機器をご存知でしょうか。

こちらのゲーム機器は1995年にApple社とバンダイナムコが共同開発した新商品です。

「Pippin」にはゲーム機器としては珍しい「ウェブ閲覧機能」が搭載されていましたが、当時はそこまでインターネットが発展していなかったのと、ゲーム機器にネット機能の需要がなかったことから、Apple社のゲーム業界への参入は失敗に終わりました。

以上、3つの失敗事例をご紹介させて頂きました。

Google社やApple社など、世界的な企業でも失敗に終わる事業はあります。

しかし、失敗しても戦略的撤退をスピーディに行うことにより、既存の事業への負担を軽減させることができています。

新規事業を失敗させない方法

新規事業を立ち上げるにあたって、失敗のリスクを完全に無くすことはできませんが、成功の確率を高めることはできます。

例えば、フレームワークを活用してみるのも効果的です。

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それでは、ここからは新規事業を失敗させない方法を紹介していきます。

新規事業を失敗させない方法①|PDCAと仮説検証を徹底的に繰り返す。

新規事業がスタートしたらそれぞれの施策についてPDCAと仮説検証を徹底的に繰り返します。

例えばコンテンツマーケティングの場合のPDCAは以下の通りです。

【Plan-計画-】

KPI•ペルソナ設定、配信内容の企画

【Do-配信-】

メルマガ配信、アンケートの実施、キャンペーン告知、ホワイトペーパーの提供、記事タイトル•キーワード選定

【Check-検証-】

開封率•CV率の検証、アンケート解析、反響数集計

【Action-改善-】

メルマガや記事本文の修正、タイトルやCTA修正、SNSの投稿内容の見直し

PDCAのポイントは1回で終わりにするのでなく、何周も何パターンも行い、仮説と検証を地道に地道に繰り返すことです。

ビジネスは仮説検証と軌道修正を繰り返すことで成功確率を高めることができるため、組織内で定期的に打ち合わせを行って戦略をブラッシュアップしながら進めていくことがポイントです。

新規事業を失敗させない方法②|イレギュラーな事態に陥っても柔軟に対応する。

新規事業は必ずしも自分達が思っているプロセス通りに進むわけではありません。

ときにはイレギュラーな事態が発生する場合もあるため、その都度スピーディに軌道修正を行う必要があります。

また、経営層やマネージャーだけが事業のプランニングに携わっており、チームスタッフに軌道修正を行える権限がない場合もあります。

例えば「上司の承認がないと修正できない」「役員全員の承認が必要」という組織では軌道修正に時間がかかり失敗する確率が高まります。

現場で実際に手を動かしているチームスタッフでも細かな軌道修正を行える組織体制を構築しておくことが理想的です。

新規事業を失敗させない方法③|積極的に情報を取りに行く。

新規事業を成功させるために最も重要なことは、「情報量」です。

結論的にいうと、新規事業は「やってみないとわからない」という部分が大きいです。

正直なところ、成功が約束されている事業があるのであればどの企業も真っ先にそれをやっているはずです。

しかし実際は大企業でも新規事業は失敗に終わることがほとんどです。

ですので、できる限りの情報を集めましょう。

成功事例はもちろんのこと、失敗事例やその要因、対策法、戦略策定のノウハウやマーケティング手法など、実際に役に立つ情報かどうか分からない情報でも積極的に取りにいきましょう。

知識と情報の引き出しを増やしておくことで、新たな「ひらめき」やリスク回避を柔軟に行える手法を見出すことだってできるかもしれません。

インターネットが普及している現代において情報収集は容易です。ぜひとも好奇心の赴くまま情報収集を行っておきましょう。

新規事業を行なった企業の成功事例

最後に新規事業を行なった企業の成功事例をご紹介させて頂きます。

新規事業の成功事例①|日本郵政 × 「OKIPPA」

日本郵便では受取人が事前手続きを行えば、郵便物の受け取りを玄関前や宅配ボックスで受け取れるサービスを行っています。

しかし、戸建て住宅に暮らす人が「置き配」をしてもらうために宅配ボックスを設置しようにもハードルが高く、戸建て住宅で「置き配」はなかなか浸透しませんでした。

そこで日本郵政はYper株式会社が提供しているOKIPPAでも置き配の対応を可能としました。

日本郵政のページはこちら

https://www.post.japanpost.jp/service/okihai/okippa.html

折り畳み方式のOKIPPAは、価格が安く扱いやすいため戸建て住宅にも多く取り入れられ、OKIPPAでの置き配需要が高まりました。

このように、顧客ニーズに寄り添い、他社製品とコラボレーションを行い新規事業を立ち上げることで顧客ニーズを満たすことができた成功事例といえます。

新規事業の成功事例②|スープストックトーキョーの食べるスープの専門店

1999年、大手総合商社の三菱商事の外食事業部門は「食べるスープの専門店」を新規事業として立ち上げました。

新たな市場へ参入し瞬く間に女性人気を獲得した背景には、ヘルシー思考である女性をターゲットにした戦略が至る所に散りばめられており、競合が少ない「スープ専門店」という新たなポジションを獲得しました。

◉スープストックトーキョーの新規事業を成功させた基本戦略

【1】店舗に足を運びやすい導線設計

→東京都内の主要駅に店舗を直結させリーズナブルな価格で気軽にテイクアウトができる仕組みを構築。

【2】競合がほぼいないシンプルなブランディング

→スープ専門店として競合がほぼいない市場で働く女性をターゲットにしたシンプルなブランディングを設計。

【3】常に顧客のニーズをリサーチする。

→ターゲットである働く女性のニーズや商品の感想を常にリサーチし、今では200種類を超えるスープを提供しています。

「新規事業」を新しく立ち上げようとすると、つい小難しい戦略やフレームワークを活用しがちですが、スプストックトーキョーさんのようなシンプルな戦略でも十分成功することができます。

まとめ|失敗事例を参考に新規事業を成功させよう!

ビジネスは「やる気」や「気合い」「熱意」だけではどうにもならない時があります。

新規事業を失敗させないためには、冒頭で説明した「多産多死」の考え方は非常に重要で、もし失敗する予兆があるのであれば「撤退」も一つの戦略として有効的です。

このコモディティ化が進む社会で新規事業を成功に導くためには、他社競合との差別化、コンセプトやターゲットの明確化、さらに新規事業が失敗する要因や対策を熟知し、撤退するラインを決めておくことが重要です。

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