新規事業の立ち上げは、大企業、中小企業問わず大きな挑戦といえます。
しかし、
「アイデアはあるものの、アイデアを具現化していくプロセスがわからない」
「新しい組織づくりが上手くいっていない」
など新規事業を立ち上げる際の悩みはつきものです。
そこで今回は、新規事業立ち上げのプロセスと、その過程で役立つ代表的なフレームワークをご紹介させて頂きます。
新規事業を立ち上げる際に準備すること
新規事業を立ち上げる際には、プロジェクトに対する熱意や誠実さ、常に新しいアイデアを考えてくれる共通認識を持つスタッフを中心に少人数のチームを組織し、スモールスタートで始めるのが良いとされています。
さらに、組織の考え方が偏り過ぎて間違った方向に進まないように、新しい人材を積極的に採用するなど、その分野の経験者からの知見も積極的に吸収する仕組みを初期段階から設け、組織のメンバーが意欲的になれる環境を作るのが理想的です。
新規事業を成功のプロセス
新規事業を立ち上げる際には、人件費や設備費、運用資金など多くのコストが発生します。
そのため、資金調達や活用計画を重点的に事業計画を立てることによって新規事業を軌道に乗せ黒字化させていく必要があります。
ここでは新規事業を立ち上げてから事業化するまでのプロセスを紹介します。
新規事業の成功プロセス
【1】 自社の強みを活かせるアイデアを考える
まずはじめに行うのは、改めて自社の経営理念やビジョンを明確にし、既存の事業との親和性が高く、自社の強みを活かせる事業アイデアを考えるところからスタートします。
会社経営で大事にしたい考え方や、今後成し遂げたい目標など、自社独自の「根本的な考え方や目標」をあらかじめ明確にしないと、自社の社風からズレた事業を行ってしまい、方向性を失ってしまうこともあるため、初期のアイデア出しから決定するまでの流れは慎重に行いましょう。
【2】ビジネスモデルの策定
アイデアの方向性が明確になってきたフェーズで行うのが、顧客のニーズ調査とビジネスモデルの策定です。
特に顧客が求めるニーズを把握するのはとても大変です。
そこで活用する代表的なフレームワークに「ペルソナマーケティング」や「ジョブ理論」と呼ばれるものがあります。
これらのフレームワークを使うことにより、顧客のライフスタイルや普段の行動を徹底的に観察することで、顧客の本質的なニーズを見つけ出すことができます。
後ほど、新規事業で役立つフレームワークをご紹介させて頂きます。
また、チームの感覚を頼りにするのではなく、既存顧客に対してのインタビューやアンケート、資料収集などを通じて正確な情報を集めて分析するのも効果的です。
さらに、収益性や実現性などを検証して、いかにして事業を立ち上げるかを検討し、事業計画へ落とし込んでいきます。
【3】行動計画を立てる
アイデアやビジネスモデルが明確になってきたら、続いて組織のメンバーの役割を決めていきます。例えば「いつ・誰が・何をするのか」という風に一人ひとりの役割を明確にし具体的な行動計画を練っていきます。
そして、会社として事業計画にGOサインが出たら、いよいよ新規事業のスタートです。
新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク5選
新規事業を失敗させないためには、フレームワークを活用することが効果的です。
こちらのフレームワークは「事業計画」や「課題解決」を検討する場合に活用できる分析方法なので、新規事業を行う上で役立つ考え方ですので是非とも参考にしていただければと思います。
フレームワーク①|MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をメンバーに共有する。
MVVは、ミッション・ビジョン・バリューの略称です。
経営学者のピーター・F・ドラッカーが著書の「ネクスト・ソサエティ」でMVVの重要性を提唱したことが由来となっています。
使命や理念、行動指針を考える際に効果的なフレームワークとなっており、具体的には以下のように考えます。
【ミッション-Mission-】
なぜその組織が存在するのか。その組織が目指す目標を明確にします。
【ビジョン-Vision-】
「使命を達成できる組織の形」もしくは「達成した組織の状態」を明確にします。
【バリュー-Value-】
組織の価値観・価値基準を明確にします。
上記の3つを新規事業に携わる各メンバーに共有し、理解してもらうことが重要になります。また、MVVは短期的な収益や利益に繋がることは難しいため、中長期的な視点で考える必要があります。
フレームワーク②|ペルソナ分析で顧客の姿を捉える
ペルソナ分析とは、あなたの商品やサービスを利用する「ユーザー像」を設定する手法になります。
また、ペルソナは単なる「ターゲット設定」とは違います。
年齢や性別などの基本情報だけでなく、年収や家族構成、社会的・文化的習慣など、具体的なライフスタイルを想定しておくことにより、顧客が重要視するタッチポイントの想定がしやすくなるなどのメリットが期待できます。
また、さまざまなタイプのペルソナを作成することで実際の顧客の姿が捉えやすくなります。
フレームワーク③|3C分析で市場でのポジショニングを考える。
新規事業が市場で戦っていくためには、自社や他社競合の強み・弱み、「差別化」できる点など、市場でのポジションを把握しておくことが重要です。
そして、自社のポジションを明確にする手法として「3C分析」と呼ばれるフレームワークがあります。
この3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、新規事業の市場における立ち位置を明確にできるフレームワークです。
具体的には以下の通りです。
【Customer(市場・顧客)】
新規事業の市場規模や市場の成長性を把握します。
また、顧客のニーズや消費行動なども併せて把握すると良いです。
【Competitor(競合)】
新規事業の競合企業を把握し、競合の特徴(採用している戦略やリソースなど)を調べます。また、競合企業のシェア率や業界でのポジションも確認し、新規事業が差別化できるポイントを導き出します。
【Company(自社)】
Companyの部分では新規事業の強み・弱み・組織内のリソース、資本、投資能力などを洗いざらい明確にします。
以上の3つの視点で、自社の市場の立ち位置と競合企業の立ち位置を明確することで、より勝算のある事業計画に近づけることができます。
フレームワーク④|VRIO分析+3C分析
先程の3C分析のCompany(自社)を明確にする際に欠かせないのが「VRIO分析」と呼ばれるフレームワークです。
VRIO分析は、オハイオ州立大学のジェイ・B・バーニー教授が提唱したフレームワークで、経営資源の強み・弱みを分析する際に発すべき4つの問い(視点)により企業の「競争優位性」「経済的パフォーマンス」を測定する手法です。
◉VRIO分析の4つの問い(視点)
【1】経済価値(Value)
企業や顧客に対しての経済価値は十分か?
【2】希少性(Rarity)
市場において珍しく希少価値はあるか?
【3】模倣困難性(Imitability)
他社が容易に真似できるかどうか
【4】組織(Organization)
経営資源を有効活用できる仕組みが組織にあるか?
これらの問い(視点)を新規事業にあてはめ、市場での競争優位性を把握するために用います。
フレームワーク⑤|ポジショニングマップの活用
ポジショニングマップとは、市場で自社ブランドの「立ち位置」を確認するためのフレームワークです。
自社のポジションを明確にし、そこを掘り下げ、強化していくことで持続的な競争優位を確立していくために使用します。
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新規事業の「差別化」は他社よりも「良いもの」を追求するより、「他とは違う独自価値」を追求することが重要です。
そして、ポジショニングマップは、新規事業のポジションを明確にすることができます。
ここを明確にしないまま、ブランディングやマーケティングを行っても無駄足に終わることが多いので、まずは市場でのポジションと、他社に勝てる部分を明確にするところから始める必要があります。
フレームワーク活用の注意点
新規事業の立ち上げでフレームワークを有効活用することは新規事業を成功させるために欠かせません。
しかし、使い方や偏った考え方をしてしまうと失敗に終わることもあるため注意が必要です。
具体的な注意点は以下の通りです。
注意点①|フレームワークは計画的に行う。
フレームワークの分析は、「あれもこれも」と細かい部分までやりすぎても、キリがありません。
適度な分析を心がけ計画的に時間を決めて作業を行うことが大切です。
注意点②|自社が無理なく活用できるフレームワークを選ぶ
今回は代表的な5つのフレームをご紹介させて頂きましたが、フレームワークの種類はまだまだあります。
しかし、全てのフレームワークを活用すればいいというわけではありません。
数あるフレームワークの中から、自社のリソースでも無理なく活用できるフレームワークを選ぶことが重要です。
また、先程の3C分析とVRIO分析の組み合わせのように、複数のフレームワークを組み合わせて使うのも効果的です。
注意点③|客観的な視点を意識する
フレームワークを活用し分析する際は、客観的な視点を意識する姿勢が大切です。
一個人の主観的な思い込みやエゴが入ってしまうと、分析結果の信憑性が低いものとなってしまいます。
また、フレームワークの分析は一個人に委ねるのでなく、新規事業に携わるメンバーと情報共有を行いながら進めていくのもお勧めです。
まとめ:フレームワークを活用して新規事業を成功させよう!
新規事業の立ち上げには多くの時間を要する反面、短期的な成果を上げ事業を黒字化させていくためにはスピードは重要な要素です。
たとえ、競合の少ない市場であったとしても、立ち上げに時間をかけすぎてしまうと、市場の変化や他社競合の参入などにより事業化のタイミングを逃す危険性もあります。
そこで、スピーディーな問題解決のために「フレームワーク」の活用がおすすめです。
自社に適したフレームワークをうまく使いこなすことによって、生産性の向上や、組織をとりまく市場の変化や問題解決にも役立ちます。
ぜひとも本記事を参考に、フレームワークを活用し新規事業の一助となれば幸いです。